2012年2月24日金曜日

去っていく者

君の家に行ったのは
夏の終わりごろ
そのころの僕は毎日
自分の夢の中の道を必死に
歩いていた
君は
お母さんの作ったカレーとデザートを
テーブルに並べながら
君の夢と未来と今の生活とを
混ぜこぜにして語ってくれた
僕は
カレーを食べながら
君の夢と僕の夢が
一緒の世界にある幸せを感じていた

あれから
もう随分と時間が経ち
あの頃の世界は
過去に流れ去り
夢さえも見えないところに行ってしまった

君はいま遠くの街で
何を考えているのか
僕は
一度この街をはなれて
また
戻ってきたんだ

季節は春になろうとしている
君の街はいまどんな天気なのだろう
僕は
また
君のうちに行くことが
できるかい?

カレーを食べながら
また夢を重ね
語らうことができるだろうか

冬が
春に追いたてられて
去ろうとしている
さよならを言うべきか

いや
春に挨拶するのに精一杯で
不器用な僕は
去っていく者のことを
気遣うことができない

1 件のコメント: