2013年10月6日日曜日

3人の女性



3人の女性が
橋の上に立っている
こんもりとした常緑樹の緑が向こうから見守っている
そこに水が流れているのか
私の立つ場所からは見ることができない

3人の女性は
橋の上から橋の向こうを見ている
見ながら何かをひそひそと話している
楽しい話ではないだろう
誰かがどうにかなってしまった話だろうか
川の流れを見ながら
この世に生きる辛さを嘆いているのだろうか

3人の女性は
若い娘と友人とその母だろうか
それとも娘と母と老婆だろうか
後ろ姿しか見えないので判別することができない
いつからそこに立っているのだろう
背の低い古びた街並はどんよりと暮れはじめ
橋の上を行き交う人も
やがて夕闇に呑まれるだろう

3人の女性は
その橋の上でかつて見知らぬ男が発狂して
おおきな荷物を川に投げ入れたことを
憶えているだろう
それはこんな季節のこんな時間帯だった

3人の女性は
疑いをもちはじめている
ひょっとしたら存在するのは自分だけで
あとの2人は誰かの幻想なのではないかと
私たちは外からはただ1人にしか
見えないのではないのかと
そして
やがて見ている私のことに気づく
私はこの場を立ち去らなければならない
私は立ち入ってはいけないのだ
3人のいる世界に入ってはいけないのだ

だが3人の女性は
私に近づいてくる
その躯だけを置き去りにして
あの橋の上の欄干から手を離して
私の中に
入ってきた





Girls on the bridge,1901 Edvard Munch

2 件のコメント:

  1. いま見ると、絵には水が描かれているが、この鏡のような水面が私には見えなかった。こんもりした木の左側には、黄色い低い月も描かれている。絵のディテールを見失って一気に衝動に駆られて書いたのだ。こころがまだキューっとしている。

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  2. 中村ゆき子2013年10月7日 17:48

    この金髪の女性はムンクの絵に度々登場しますね。
    池に映った人生の喜び、悲しみ、苦しみ、狂気を見つめてるんだと思います。
    ムンクの生涯を紐解いていくと絵の印象がガラッと変わると思いますよ。

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