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ナイトガウン羽織って暖炉の脇にいる
シャンデリアの照明
湖のほとり
宝石箱や金庫や引出しの棚に納まりきらない宝飾品
財産はそこここに放置され
見張っている者はない
オーディオルームの4Kのディスプレイで
特注でリマスターしたという古い映画を流す
観客は一人だが
もう飽きて
浴室のジャグジーで足の爪の模様を眺めている
そして眼を瞑って
パパのことを思い出すことにした
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誰かいい人と巡り会いたい と
月並みな言葉のあとに出てきたのは
車が欲しい というフレーズ
いつも願うのは功名が欲しい という内容だったが
きょうは違った
車が欲しい理由は
いつでもどこにでも出かけることが必要だと思い立ったからだが
すでに思いは
そこにはなかった
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うつ病の友だちを思いやって
鬱々としていた
うつ病の友だちは
詩と写真の才能を持っていた
ついでに育ちもよく人気者でお金持ちだった
うつ病の友だちは
何でもよくできた
うつ病さえ克服してしるかもしれなかった
思いやる必要はなかった
思いやる必要はなかった
友達を思いやることで
返信削除自分を満たそうとする
あなたの物差し、チョッと間違ってる
相手を思いやることに必要も不要もないよ
相手の反応で自分の価値を決めているあなた
世の中も欲望もパラパラ漫画のようにすすんでいく
うつ病の友達は
そのスピードがハヤカッタリ遅かったり
みんな違うそれぞれのスピード
あなたはあなたのスピードで
ゆっくりパラパラすると
周りも友達もよく見えてくるようになる
でも大事なのはゆっくり自分を見ることだからね