2013年1月26日土曜日

辞めたいのなら辞めていいのだよ

辞めたいのなら辞めていいのだよ
カウンターでトロピカルドリンクを出すこの会社は
たまにあたたかさがなくなる
カウンターは会社の奥にあって昔そこはカフェだった
竹口商店といったのだ

今君と面接をしているこの場所は交番だったんだよ

引き止められると思っていた君が
不意をつかれている間に
社長はもう出て行ってしまった

会社では勝手気ままなプロジェクトがたくさん動いている
誰が何をやっているのか把握している者はいないんじゃないかな

社長が路上で伊豆に行くという社員たちを見送っている時
小さな車に乗った
谷川俊太郎が手で顔を隠しながらやってきて
その様子を見ている
誰かに用があるのだろう

社長が7つある潰れた段ボールの中から
詩人に渡すべきものはないかと
探しているが見つかる気配はない

夜空を流れる雲の下で
人々は玉の上に乗っていることを忘れて
器用な技を競ううとしている

既に落ちてあきらめかけた人たちは
どこかに寄り集まって愚痴を交わしている

いつ死んでも誰かが棺桶を用意してくれるだろう





*この詩は作者がみずから、生前、音声認識アプリによって語り下ろし、記録したものです。

1 件のコメント:

  1. 中村ゆき子2013年1月27日 1:36

    最初は勢いがあるからたまの上だってバランスがとりやすいよね。
    回転が鈍くなりかけたときにうまく飛び降りた人は
    怪我をしなくて済んだんだ。
    最後まで我慢した人はバランスとれなくて背中から落ちて大怪我をしてしまったんだ。
    先に飛び降りた人は奥でトロピカルドリンクをやれやれと飲んでいた。
    大怪我をしてしまったけどトロピカルドリンクなんかにだまされない。
    棺桶も必要ない
    流れる雲に乗っかってちっぽけな玉を見下ろすだけ。

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