おなかがすきました
「おなかがすきました」というシールを
胸に貼っておきたいくらい
いつもおなかがすいています
これは人類にとって
たいへん厄介な問題です
おなかがすくということは
食べなければならないから
食べなければならないということは
食べられてしまう側の命を奪うということだから
命を奪うということは
自分にその価値があると信じるいうことだから
ぼくはおなかをすかせて
頭を抱え込む
頭をかかえこんで
おなかを鳴らす
自分にそんな価値は見当たらない
人はぼくに価値があると
思ってくれているのだろうか
親や友だちは思っていてくれているだろう
仕事のパートナーもそう思っていてくれているだろうか
世間はどうだろうか
ぼくはおなかをすかせて
頭を抱え込むことしかできない
そうしているあいだにも
おなかがすきました
「おなかがすきました」という刺青を
背中に彫っておきたいくらい
いつもおなかがすいています
おなかがすくことから
逃れることはできないのでしょうか
食べ過ぎておなかを壊せば
もうたべたくなくなるでしょうか
いいえだめです
またすぐに食欲というものは復活を果たすでしょう
リバウンドして
ますますおなかがすいてしまうでしょう
もやは八方ふさがりです
八方焼きです
八宝菜です
たべたいです
おいしいものを
自分を生き延びさせる価値があると信じて
あなたは食べますか
食べ続けますか
あなたは食べていいとおもいます
ぼくはあなたに生き延びて欲しいです
あなたは生き延びる価値があると思います
食べられてしまう側の命より
だから生き延びて
ぼくに手本を示してください
そしてできれば
ぼくの価値を教えて欲しいのです
生きていっていいかどうかのその価値を
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