錆びたポストに
真新しい手紙が届いた日に
私は家を出ていった
出ていって
帰ってくることはなかった
錆びたポストを
道路に突き出して
家族は家で生活していた
そして
妹も家を出ていった
父母が残り
錆びたポストを掲げて
この家を守っていた
家は
私が生き延びるために
融資の担保にされ
父が死に
やがて母は追い立てられて
この家を出た
私は母を新しい部屋に連れて行った
母の部屋は私の新しい帰省地になった
部屋からは富士山が見えるという
エレベーターで出会う人々と
挨拶を交わすという
母には守るべき家がなくなった
掲げるべきポストもない
ただ
気楽さを入れる空白ができた
空白はさびしいが
その空白は
新しいポストになった
新しいポストは
錆びたポストの
親戚なのか
そこに
私は新しい手紙は届くが
もう出ていく人はいない
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