古い建物の窓から乗り出して
あなたは電話しているけれど
その建物が完成したときのことを
あなたは知らない
あなたのママは
まだあなたを産んでいなかったし
あなたのパパは
まだ知らない外国の人と付き合っていた
あなたが生まれた時
その建物は
もう生まれて20年が過ぎていた
建物は
完成したときのことをよく覚えている
オーナーのオジさんが初めて建てた建物だったから
友人知人関係者たちが集まって
お酒を飲んで
それはそれは大騒ぎしたものだと
オーナーのオジさんは
希望に胸を膨らませ
翌日
なんと結婚を申し込んだのだ
多くの人たちが
ピカピカの建物をたたえた
オジさんは
新しいお嫁さんを思いながら
くる日もくる日も
建物を大事にメンテナンスした
だから
建物は大活躍して
入居者を喜ばせ
オジさんに富をもたらした
そのオジさんも
いまは
もうここに
来ることはなくなってしまった
あなたは
窓から
雲が敷き詰めれた空や街の景色を
見るともなく見て
色んな表情を作りながら
電話している
くすんだ外壁から
あなたの鮮やかな色と優しい曲線が輝き
私は目を奪われている
建物は
オジさんのことを思っているが
窓から乗り出しているあなたのことも
きっと好きだ
私は
この建物に新しい風景を見出している
どこかに芽生える私の希望を
この建物に
重ねられるから
何もかも失った私には
希望の姿が眩しいほどに
よく見えるのだ
訪れる人に希望を与える建物、
返信削除私も見てみたくなりました。
様々な人生を見守ってきたのでしょうね。
どこかに芽生えるあなたの希望が、
近い未来に叶いますように。
人はよく、自分のことで目一杯になりますね。私は特にその傾向がつよいようです。長い間に浮き沈みがありましたが、やはり、余裕のなさは、治りません。特に新しい環境の中では、あたふたしすぎます。
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