2013年1月3日木曜日

ノリマキトカゲやってきて

ノリマキトカゲやってきて
のりにまかれてねむってる
ねているあいだにくわれたら
かなわないからすぐおきた

エリマキトカゲもやってきて
ノリマキトカゲに恋をした
ふたりはいっしょにのりのなか
恋がやぶれるそのひまで

2013年1月2日水曜日

大地のうえで

底の抜けない大地に
私たちは受け止められている

いくら飛び跳ねようが
寝返りをうとうが
はたまはた乗り物に乗って
走り回ろうが
大地の底は抜けることがない

大地に別れを告げて
エアプレーンに乗って飛び立っても
大地は怒ることなく
またその懐に
私を受け入れてくれる

大地は怒ることがない
人間とは違うから
大地は
くぼんだり盛り上がったりするが
決して立ち去ることはない

木々を揺らし吹く風も
粒子を振りまいて反射する光も
大地には世話になっている
大地は動かずに
そこにいてくれるから

大地から見渡すと
周りには裏切り者ばかりだ
終始動き回りけたたましく騒ぎ立て
熱くなったり冷たくなったり
信用できるものはいない

だからせめて私は
大地にひれ伏して
祈りをささげよう
大地の平安を願い
命のある限りここにいますと

2013年1月1日火曜日

道具の時代

この世には
使い切れないほど多くの種類の道具が
あふれている

それだけでも悩みの種であるのは間違いないのだが
道具同士を組み合わせるとまた別の種類の道具が
できてしまうことがある
道具類は無限への道を歩んでいるといえる

世界は道具で溢れかえり
いきおい私たちは道具に使われ生きていくことになる
すでに一人の生きる道具となって生きているのだ
そのことは道具界をさらに混乱におとしめる
人と道具とのの区別ははどこにあるのか
傍観者たちは答えのない話題で盛り上がる

そして人は人生の暮れ方に
たとえば俳句などを詠んで悦に入ったりするが
17音の組み合わせを自由に操ったと信じることで
自らを慰めているのだろうか
しかしそれが何の解決になるというのか

道具は効率の悪さを解決してくれるというのに
人は非効率の生産に追いつかない
いきおいあまって自分たち自身を効率化してしまったりもする

道具の暴走をもはや誰も止められない
取り締まる側にいた信号機でさえ
いまや効率化の手助けをしている

道具たちは平気で何でも買収する
あの手この手奥の手を使い

かつて地上に君臨した人類の神も
時計のデジタル表示に十万分の一の単位で刻まれてしまい
結果 人はアナログに推し量ることができなくなり
存在の本質が風前の灯となっている

せめてふる里の床の間で
ひび割れ始めた鏡餅を不器用に開くとき
予想不能な大事件を起こしてくださいお母さん

あけましておめでとうございます

 
家の近くの神社にいってみた
行列ができていた
また出直すことにした
 
翌日 また 行って見た
また行列ができていた
用事を済ませてから
また来てみることにした
 
用事を済まして
またやってきた
今度は誰も並んでいなかった
さびしくなって
家へ帰ることにした
 
 

2012年12月31日月曜日

地面がつながっているということは

私の下で地面がつながっている
だから寝返りをうっても安心
地面がつながっているから
下に落ちてしまう心配がない
だから幸せ

地面がつながっているということは
空にとっても安心
覆いつくす雲も胸をなでおろす
雲が裂けても
たとえ さらに空が裂けても
地面が支えてくれるから

地面がつながっいるということは
歩行する動物にとって
安息の地であるということ
歩行にあわせて
息をリズミカルに弾ませることもできる

地面がつながっているということは
空と地面の間にテントを張って
私たちは眠ることができる
地面に縫い目のように覆いかぶさり
眼という膚の裂け目を閉じて
見えるものから解放されて

2012年12月30日日曜日

君を見守る

いま写した君の写真の横に
生まれたばかりの頃に撮られた
君の写真を並べてみる

二枚の写真の間には
君がいままでに生きた時間が
挟まれている

その隙間に
どんなことがあり
どんな人びとがいるのか
君が一番知っているはずだ

君は私が差し出した二枚の写真を
なんともいえぬ表情で見ている
私に気遣ってくれているのが分かる
君はそうして周りの人を気遣ってきた
自分の不器用さも認められるようになった
きょうは君の誕生日だ

君はその命をふる里の地で引き受けてから
その力強さと得体の知れなさに悩まされながら
必死に生きてきた
その姿が人を感動させたこともたくさんあった

いま君はどんな気持ちでいるのかな
目の前にいるのに分からない
二枚の写真の隙間が
私たちを見守っている

窓の外の寒い街並の上空では
無数の星が私たちを見守っている

2012年12月28日金曜日

フェダーの部分だけをはずして

マイクロホンミキサーのフェダーの部分だけをはずして仕舞おうとしていたので
私は文句を言った
そこまで分解すると次回使うときにあちこちを探し回って組み立てなければならない
石庭を通って機材を運び入れている連中は
若い割には皆達者な仕事師ではあるが
たまに意味不明の行動をとる

和風の平屋建築の奥に機材室があり
出張の仕事を終えるとそこに格納することになる

私はその会社の社長をしているが仕舞うことにかけては
右に出るものがいないと自負するほど
手際よく美しく仕舞う

番頭に当たる男はスタッフの中では唯一私より年上の技術者だ
不器用で粗相が絶えないのであまり信望がないが
創業時からの大事な人間なので
悪い見本としながらも重用している

彼には6才の息子がいる

私は高校時代
足を怪我して運動会に出られなかった苦い思い出がある
またほとんど出席しなかった幾つかの授業の教科書を紛失し
単位取得に必要な時間数も計算できないでいた
中には必修科目もあり
卒業も危ぶまれた

石庭は先祖から受け継いだものだが
先祖の影はない
私は小さいころから当主として
この庭と家を守ってきた
父は南米にばかり行き通しで
母は大人しい心配性の女性だったので
ほぼ母屋のリビングとキッチンと寝室で暮らし
仕事にはタッチしなかった

その日
私は期限が来て会社を辞めることになっていた
だが
いつもの同じように
撤収してきた機材が長閑な庭を通って
機材室に運ばれていた
やがて機材室に大きな錠前が掛けられた

縁側に穏やかな日差しが当たっている
猫が鈴を鳴らした
青空の向こうに熱線を放つ爆弾が落ちたのはその時だった

2012年12月27日木曜日

もっていても

もっている人

もっていない人

 

もてる人

もてない人

 

もてなくもない人

もてなくもなくない人

 

もてていなくもない人

もてていなくもなくない人

 

もってくる人

もっていく人

もってこなくもない人

もってこなくもなくもない人

 

もたれている人

もたれていない人

 

もたれていっていない人

もたれていかないでいる人

 

もっているのかいないのか

もっていないのかいるのか

もっているとどうか

もっていないとどうか

もたれてもっていない

もれなくもたれていて

もっていない人

 

もっていない人より

もっている人がいいですか

 

どちらでもいいです

2012年12月26日水曜日

父の署名

死んだあとも
くっきりと在り続ける父の署名は
わだかまりを支えたまま
時の流れを渡って行く

はっきりしないことだらけの世の中を
いつ知ったのか
同じ通学路を何度も歩くうちに
大事なことは結論ではなく過程だと
いつから訳知り顔でいられたのか

冷たい風の後に何がやってくるのかを
予定表に書き込んで
未来の予定も書き込んで
オルゴールのように人生を奏でる

署名は歌わず
世の矛盾の訳を理解せず
佇んでいる

私は誰かに詫びたい気分になり
ペンを手に取るが
名前さえ書く勇気がなく
検索窓に名前を打ち込んで
結果と対峙しない理由を探し始める