2011年9月5日月曜日

恋の歌

材料はこうだ

厚めに切った食パン
真四角で小麦の感じがしっかりしていて、ややしっとりしているもの
蜂蜜
ココナッツパウダー
シナモン
ザラメの砂糖
隠し味に味噌
鶏の卵
無塩バター

出来上がると
それは
とてもおいしい
ものになる

どうしておいしいのかは
教えてくれない

ただ
あなたは
笑顔と神妙な顔を繰り返しながらそれを作り上げ
食べる時はまた別人になる

器用なあなたは
周りにいろんな問題を抱えているが
平気な顔をしている

それが
一番器用なところだと
一番私が知っている

2011年9月4日日曜日

あなたと航海 はじめちゃう

あなたが騒いだので
花火大会は
ぶち壊しになった

みんなが怒って車に乗り
列をなして田舎道を走り出す
臨時に設けられたガードレールは
工事用ヘルメットを並べたものだが
異様な縁石にしか見えず
その不始末を隠そうとして担当者は
外側に体操着を広げて並べた
だがかえってますます意味が分からなくなり
目立ってしまっている

花火大会はまたやればいいし
ガードレールも必要ない
騒いだあなたは
必要な人だから
助手席で
眠っていたほうがいい

あしたはここで
マラソン大会があるのだ
ホイールが外れた車が
続出して
渋滞が激しくなってきたのを
上で天の川が見下ろしている

愛する人が眠っている間に
つまらない考えは
捨ててしまおうと試みていだが間に合わなかった
もう
荒波に巻き込まれて
ヘラヘラ笑いながら
だんだん本当に楽しくなっていってしまった

言わず終い

電話してもいいですか

電話してみた

出なかった

ますます
電話したくなった

いつになったら電話に出られますか

電話しようとしたら
だれかから
電話がかかってきた

電話してもいいですか

その寂しがり屋に尋ねられ

それは私が別の人に
言おうとした台詞だ

答えた

その人は
私が話したかった相手から
電話がかかってきて
電話してもいいですか

だれかから
電話がかかってきた

言われた

言う

私は
電話してもいいですかと
自分が
言わず終いであることに
深く
絶望した

2011年9月3日土曜日

だれのもの?

揺れて霞んでいるのは
あなたの姿
香りがどこかに
残っていて
たまに気づくと
問いかけてくる

あなたが
わたしを愛しているのは
なにか
理由があるのよ
言葉にはできない
理由が


あなたにも
なにかが
問いけてくるのだろうか
不意に
どこかからか

それは
だれのものなのだろう
私には
分からない

2011年9月2日金曜日

弱虫の宣言

降りしきる蝉時雨の
都会の木立を抜けて
あなたから
離れていった

地下鉄にもぐり
当てもなく駅で降りて
また乗った

気づくと
知らない国にいた
飛行機を降りたのは半日前

あなたから離れたのは
一日前

知らない人に囲まれて
泣いていたのは
ずっと前
そしていまもだ

何かがこんがらかっているが
解く気持ちにならないのは
それが我が身を守っているから

そのことだけは
宣言しておこう

2011年9月1日木曜日

きちゃってよ、いますぐに。

いっちゃってよ いっちゃって それで きちゃって いっちゃってよ やっちゃってよ やっちゃって たまには やらずに よっちゃってよ くんじゃってよ くんじゃって そしたら ぬいて だしちゃってよ だしちゃったら いれちゃって じゅんじょは いいから ぬいちゃってよ すっちゃってよ すっちゃって どさくさ まぎれに もんじゃってよ いっちゃってよ いっちゃって くんず ほぐれつ きちゃってよ

2011年8月31日水曜日

私の狙い

雨が降る前の
黒い雲に空をおおわれて
気持ちが昂ぶってくる

そのことを知っているかのように
空は
雨粒を落としてこない
生暖かい空気をかき混ぜて
晩夏の膚に
じっとりと
汗をにじませるだけだ

空は
意地悪だ

あまのじゃくの私以上に
心を弄ぶのがスキだ

そこが
いいところでもある
私の愛する人と同じ

突き落とされる前の
後のない私を
楽しんでいるのだ

私は
あなたを巻き添えにして
どこまでも
落ちていくんだ

狙っている

2011年8月30日火曜日

漂泊者

旅人が増えてきた
住む場所が少なくなったのか
心が漂泊を求めたのか
あるいはその両方か

星の数が増えてきた
誰かが命を燃やしたのか
強い願いが集まったのか
あるいはその両方か

旅人は故郷を探し
星は道しるべとなる
故郷は星に照らされて生まれ
道しるべは旅人が打ち立てる

2011年8月29日月曜日

サイコーの二人

メンチカツが
乗っていた

ご飯の上
私の
ご飯の上にも
メンチカツが
乗っていた

おそろいの
ポークカレー
メンチカツのトッピング

並んで食べる

サラダには
三種類のドレッシングをかけて
違う味を楽しむ
私からあなたを見れば
あなたが
スプーンを握って
私と話しながら
カレーを口に運ぶ

あなたから
私を見れば
あなたを見ている私が
スプーンを握って
あなたと話しながら
カレーを口に運ぶ

釣り合った二人は
バランスがいいので
何をしていても
最上だ

だから西城秀樹は
秀樹、感激! というのだろうが
この辺のギャグは
通じるかどうかリスキーだが
雰囲気は伝わるので
大丈夫だ
サイコーの二人には
怖いものなどないのだ

2011年8月28日日曜日

バス停からの道

バス停から
遠回りに
5分ほど歩いて
何も貼っていない
掲示板の横を通り過ぎ
風さえ立ち止まる
小さな交差点を過ぎると
あなたの家がある

冬の日にはやさしく揺れ
春の日には
笑い声が漏れ
夏の夜には
静かに月の光が
高い窓をノックする

その家に
訪れるごとに
あなたは成長し
僕は少年の日を思い出し
ふたりで悲しみを握りしめて
結晶にして遊んだ

その結晶を砕いて
岩塩の代わりに目玉焼きにふりかけ
フォークとナイフで気取って食べる
サラダと一緒に
お日様の味と
ひよこの味と
海の味と
血の味が混じっている

向き合って
座ってたべる
僕たちに
聴こえるはずもない
バスの音が聞こえる