2011年8月27日土曜日

湿った時間の中で

湿った時間が流れている
薄暗い空間に
発酵した花の香り
あなたの服の襟から漏れてくる鼓動

灼けた肌が
境界線を作っているので
私はそこから中に入ることができない

ただ入ることができるのは
許可証を持った者

あなたは笑って
チケットを発行するけれど
それはすでに有効期限がきれている

それは
誰もが知っている
神話のようなメルヘン

あなたの姿を探そうと
発酵した花の香りを追ってきたけれど
そこにいたのは言葉を知らない
異国の少女だった

2011年8月26日金曜日

あなた13景

あなたのしっとりと上気した胸になにを書こう

あなたのよくつかわれた掌になにを持たせよう

あなたの死と暴力を見つめた眼に何を見せよう

あなたの頼りない後ろ姿に何を投げかけよう

あなたの体が向く先の街に何を香らせよう

あなたの眠っている間に何を企てよう

あなたの雨に打たれた思い出に何を加えよう

あなたのあなたである理由にどう降参しよう

あなたの見つめる眼差しの中にどう立とう

あなたのものであるあなたをどう分けあおう

あなたのあなたが気づかない魅力をどう守ろう

あなたの傷むキズをどうやわらげよう

あなたの悲しい時間をどうともに過ごそう

2011年8月25日木曜日

そばにいないひとに

そばにいない
ひとの名前を
呼んでみたくなる

そばにいない
ひとの眼差しを
何度も思い出す

そばにいない
理由について
考えてみる

そばにいない
時間のほうが
ずっと多い

そばにいない
ひとがそばにいた
時間はとても短い

そばにいない
ひとに頼みたい
ことがでてくる

そばにいない
ひとはなぜ
そばにいないのか

そばにきて
おしえて欲しい



・・・・・・・・・・・


そばを食べる彼女に

そばをたべる彼女(ひと)に
眼が釘付けになった

長い髪をゴムひもで束ね
一目散に
そばを吸い上げる

休むまもなく
食べ続ける

ブラウスのボタン二つ外し
体じゅうで
脇目もふらず食べ続ける

口の中はそばで溢れ
頬にはそばつゆが飛び散る

話しかけても
何を言っているのか
分からないだろう

ほおばったそばに
阻まれて
しゃべることはできない

そうしていつも
彼女はそばを食べるのか

そう思うと
背筋が凍るような勢いだ

彼女はなぜ
そばを食べるのか

短距離ランナーのように
必死で逃亡するように

そばにいって
きいてみたい

2011年8月24日水曜日

ピスタチオの殻

ピスタチオの殻を
爪で弾き割って
皺々の実を
口に放り込み
歯の間で
砕く

噛むたびに
一つ
また一つと
忘れていたシーンを思い出す

もしかしたら
空想のシーンも
混ざっている

ピスタチオが好きになってから
10年の月日が流れた
ピスタチオが好きな間に
出会って愛した人
嫌いになった人
忘れてしまった人もいる

ピスタチオの実は
外国の農園の空を背負っている
その皮の下から覗く明るく鮮やかな緑は
草原に憧れている証拠
(いつか通りかかったのだろうか)

それは誰の思いなのか?

決まっているでしょ
こうして
ピスタチオを
口に放り込んでいる
私の思い

?

私と似た
あなたの思い

2011年8月23日火曜日

偶然ばかりがかさなって

偶然ばかりがかさなって
約束したこと破られて
あなたの面影かさなって
連敗記録破られて

あなたと私かさなって
夜の静寂破られて
行きたい場所がかさなって
古い写真は破られて

第二章が待ってます

2011年8月22日月曜日

クリスマスとこれします

クリスマスとこれしますはどこが違うの?

陸続きと理屈好きはおんなじ?
栗とリスとスリとストリートとリュートは
仲良しなの?

スリットと小鳥とトリックとリュックは?
びっくりとどんぐりとどんくさいとうどんくださいは?
さいの目とメリーさんとさんまととんまとママは?

暁(あかつき)と啄木鳥(きつつき)とキス好きと好き好きは?
空(す)き空きと好き好きは?

こたえ:みんな同じ

2011年8月21日日曜日

微かな光に

古い木の家の
破れた壁を塞ぎ
朽ちかけた柱を補強して
箒で床を掃いた

屋根に溜まった木の葉を下ろして
木ぎれと一緒に焚き火をした

ほかに
なにが必要だったのか
思い出せない

乾き始めた風の向こうに
いつのものともつかない
笑顔が見える

その人と別れてしまったのか
まだ出逢っていないのか
はっきりしない

わたしは
欲しいものを手にするために
生きてきたが
欲しいものは
わたしが持っていなくてもいいものばかりだった

だからわたしは
なにかに欲されたいと願った
この世界が
わたしを爪弾きにせず
受けとってくれることを願った

誰かが
受け渡してくれるのなら
すべてを委ねたい

2011年8月20日土曜日

あなたの感じは

笑いながら話すのが
あなたの特技
普通に話していても
その声は笑い声を含んでいる

私は
あなたと話していると
つられて笑いそうになる
辛く悲しい話をしていても
そこに絶望は存在しなくなる

荒海から浜に打ち上がった昆布を海鳥が運んできて
味噌汁の鍋に入れた
例えて言うなら
そんな感じた

あなたの感じは

かっこいい

かっこをつけて生きてきた「きみ」が
かっこつけていることに疲れて
裸で生きていきたいという

僕は
「世間では
裸は目立ちすぎるので
外出するときは
服を着たら」

かっこをつけて言う

だが
内実は
そうではなく
長年
服を着ないでいい気になって
外を歩いた僕は
人々に注意されて
いよいよそれができなくなってしまったのだ

だから
「きみ」が裸で外を歩くのに乗じて
「僕」も一緒に歩きたいのだ

かっこつけないで
かっこよく


2011年8月19日金曜日

私は何もした覚えがないのに

私は何もした覚えがないのに
あの人と私の間に濃い霧が出て
風が立ち
霙が降り
雷が鳴った

あの人は悪いことをしようとしているのに
行く手に虹が出て
満月が出て
日輪が眩しく光り
小鳥がやさしくさえずった