2013年2月3日日曜日

彼女の印象(スケッチ)

名前を呼んでも彼女は振り向かないだろう
彼女は名前を換えたから
名前を換えて記憶も消したから

彼女は水辺に佇んで背中を向けている
背を向けて自分の気持ちにも背を向けている
水面に彼女が男に犯されたシーンが繰り返し映し出されているが
彼女にはそれが見えない
もう当り前の風景の一部になっていたから

彼女はいま感傷に浸っているのではない
もちろんなにか夢見ているのわけでもない
彼女はこの風景に溶け込んでいるだけだった

たまに微風で感情が波打ちそうになるのだが
気圧と仲良くなってそれを抑えようとしていた

時は一瞬だった
たとえば写真の一枚のように
たとえば一度の瞬きのように
もう二度と訪れようとしなかった

私は振り返る
彼女の眼を
前から覗き込んだときのことを
彼女は裸だった
なにもその躯にまとっていなかった

弾力とぬくもりが渦巻いて
私を巻き取った

わたしは今
近寄らずに彼女を見ている
彼女は自らの宇宙に
アクセスを試し続けている



1 件のコメント:

  1. 中村ゆき子2013年2月4日 0:37


    自分を偽らずに生きるという当たり前のことが
    彼女には難しくでできない。

    新しい扉を開くたびにその鍵を確認してきたはずなのに

    あなたは全てを見透かすように彼女を覗きこんだ
    そのときの瞳の輝きを彼女は忘れられないでいる
    彼女は自らの宇宙にアクセスしているんじゃない
    アクセスする場所を無くし、
    言葉の枯れ葉を燃やしていた
    だけとあなたのくれた言葉だけ
    燻って燃え残ったの。

    あなたが名前を呼んだら、一瞬でアクセスできるはず。

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