未来創作
みちるのブログ
2013年12月21日土曜日
記憶
あなたの顔は
なつかしい村
私はそこで
暮らしてた
泉の水で喉を潤し
水鏡でいい顔を作った
防風林をかき分け
砂浜に転がり遊んだ
小高い山に登り
しっとりした驟雨を浴びた
洞窟を覗き込み
コウモリのねぐらを見つけた
あなたの声は
到来(アリバダ)の知らせ
波打ち際に
一万の亀たちが上陸した
月は姿を隠し
影は命を満たした
私はあなたを縛り
あなたは一切の夜の記憶をほどいた
2013年12月20日金曜日
少年
*
みんなのまえでうたった暗い歌
聴かせたくない人がいた
*
強いものの陰に隠れ
弱い者をみていた弱い自分
*
寂しさのうえに横たわり
夢の中で遠くまで出かけた
*
自分の中の宇宙が自分を介して
外の宇宙と相談している
*
木の机に刻まれていた知らない人の名前
人差し指が覚えているそのなつかしい人
2013年12月19日木曜日
少し背伸びを
白い椅子に
空気が座っている
ほおづえをついて
私の話を聴いている
もうだいぶ長い時間が過ぎた
私は
さっきとまた同じ話をしている
空気が
あくびした
私は席を立って
改札口へ向かった
カードをかざすと
そこから数字が抜かれて
小さくなった
肩をすぼめていた私は
すこし
背伸びをしてみた
2013年12月18日水曜日
きいろいくまさん
きいろいくまさん
わらっているよ
ひとりぼっちで
ソファーにすわって
きいろいくまさん
なかないでね
わたしもひとり
ゆうごはんはパン
きいろいくまさん
どこかにいこう
だれもこれない
かなたのさとへ
きいろいくまさん
つかれてねむる
わたしもねむる
ほしぞらがいっしょ
2013年12月17日火曜日
ほしいもの
いま食べるための
ひときれのパン
いま喉を潤すための水
いま伝えなければならないことを知らせるコトバ
それをささえる勇気
私はほしい
パンでなくてもいい
水でなくても
コトバでなくても
勇気さえなくてもいい
いま
私がここに生きていくために
必要なもの
それがあれば
宇宙からの問いを
問いのまま受け入れることの大事さを
忘れることはない
流れる水さえ
止めることができる
一枚の写真に収まってしまったように
宗教画の一部となってしまったように
私は風景の一部に
積極的に加担する
黄金比のポーズさえキメて
2013年12月16日月曜日
きょうのぼく
いきているかちがない
しんだほうがましなぼく
しぬかちもない
いきているほうが
なみかぜがたたないぼく
いのちをつながない
かくんやいえもつがない
たちきるぼく
わるいせけんには
だまされてばかり
いいひとをまもれない
むりょくなぼく
ごみのかちもない
にさんかたんそをはいしゅつするぼく
はやくつちとまじって
しょくぶつになりたい
あわれでみにくいぼく
しょくぱんをたべるとき
おいしいとかんじる
そのことをだれかに
プレゼントしたい
きょうのぼく
2013年12月15日日曜日
しにゆくひとは
きょうは、谷川俊太郎さんの誕生日。毎年それを祝い詩を書くのですが、
この詩は違います。
しにゆくひとは
しにゆくひとは
すんでいる
にごりすぎて
すみわたる
みなもになにかをなげいれても
なみはたたず
なにもかもをしまいこむだけ
おともきこえてこない
この世でノイズを聴きすぎたので
もう音はたたない
ただかすかな色彩が
ゆうぐれて
漂ってくる
しにゆくひとは
方向音痴になっていく
三半規管も不要であるから
回路を切ったのだろう
走馬灯のようなおもいでが
走馬灯のように回る
意味が重なってしつこくなっても
意味は無意味に行きついたので
自由だ
しにゆく人が
死にゆきつくまで
あとどのくらい時間があるのか
答える神様はいない
死にゆく人は
死にゆく人になりきり
世間をつんざいて
血潮で線を描く
道に喩えることができる
無粋な比喩は
苦いくすりのように
何かに効き目がある
とは
言えないだろう
2013年12月14日土曜日
奇跡というもの
奇跡は何食わぬ顔をして
あんパンを食べている
ところで
そのあんはうぐいす色であった
奇跡はハッとして
帽子に手をやった
鳥のフンかとおもいきや
なんと金貨だった
奇跡は青空に
軌跡を描いて
行くべき道を
教えてくれたこともある
奇跡なんか起きたことがない
と言っている人がいるが
なんと滑稽なのだろう
気づかないなんて
☆蛇足
(奇跡はあまりに
ありがたがられるので
ありふれた格好で
ドアががたっと開くの待っている
ドアが開いたら
やさしい日差しが
あるいは
微かな風邪が
頬に触れるだろう
そのとき・・・・)
2013年12月13日金曜日
ほしいものができたら
ほしいものができた
買うことはできない
ほしいもののことを
ずっと考えている
ほしいものは変わらずに
そこにある
私は少しずす変わっていっていて
ほしいものは
気配を変えない
落ち着いている
瞑想しているのだろうか
あるいは眠っているのか
私の瞼は重たくなってくる
私はその場所から姿を消す
夢のなかでは
知り合いの女が
腹から血を流してもがいている
近くにその元恋人が立って
真っ二つに割れたiPadで
病院を検索していたがその過程で
ほしいものをみつけ
そちらに夢中になってしまっているようだ
私は女に
大丈夫だからと言って
女のことを気遣いつつ
助けたいと願った
私はこの女をほしいと思うと同時に
ほしいものリストに追加した
2013年12月12日木曜日
あなたがこのよにうまれて
あなたがこのよにうまれて
よろこんだひとはいたが
かなしんだひとはいなかった
あなたがかなしみのなかにいるとき
くうきはバリアをつくって
あなたをまもろうとした
あなたがこのよにうまれて
やがてあなたはめをひらき
うつくしいものをみた
いいかおりをかいだ
それはあなただけのものだ
いま
まちにながれはじめたおんがくも
よくきいてみるといい
それは
あなたのためだけに
かなでられている
おんがくだ
と
わたしはおもっている
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