2013年10月13日日曜日


無数ってありますか
無数ってどのくらい?
無数の…っていうとき
そこに無数はありますか
たくさんの より多いのでしょうね
いっぱいの よりもっといっぱいなのでしょうね

無数の
たくさんの
いっぱいの

全部合わせても足りないほどの…

…そのあとに入る単語は
無?
無限や永遠が
眺めている 無?

無と一はどちらが多いですか
一ってどのくらい?
全部と同じくらいですか
全部より少ないですか

2013年10月12日土曜日

人である人

橋から橋をわたり
島から島をわたる

人は道をゆき
鳥は空をゆき
魚は海をゆく

人は服をまとい
月はつきまとい
星は欲しがっている

欲は干上がっている
陽はまたのぼり
またはまた閉じられる

ランプの灯はすぐに消え
シマシマの服を囚人がまとい
月々のものをパパが運ぶ

山また山を越え
谷また谷を下り
島から島を巡る

人であれば
あられもない
ヒトガタ
である人

2013年10月11日金曜日

残り火がどこかで

自分では悪口いうくせに
ひとに言われるとすぐおこる
なにもないふるさとのまちに
きんいろの秋の日差しが降り注いでいます

いつかはなかえようとした約束も
私をかばってくれた優しい友だちも
もうどこかにいってしまいました
金木犀の香りが今年も
時のしおりを挟み入れてきます

私はどうやって生きて行けばいいのでしょうか
考える必要がなくなりました
西の屋根に日が沈んで
残り火がどこかでちろちろと燃えています

2013年10月10日木曜日

グレーのスーツを着た女


心だけもたれて
立っている
自分にもたれて
立っている

木のようだ
風に葉っぱがゆれる
繊毛が光を指揮している

片膝を曲げて
唇をきゅっと締めて
息を凝らしている
自分では気づかずに
いつからかも気づかずに

心だけもたれて
立っている
自分にもたれて
立っている





2013年10月9日水曜日

家族が消えさらない部屋


遠くに海鳴りの聴こえる部屋
夕日が楽しげにやってくる部屋
家族が消えてしまった部屋

いるのは私だけ
でも私はいないも同じ
息を潜めて
笑いあったあの時の写真を
くり返し引きちぎる

いるのは私だけ
でも
いつでもいなくなるのも私
でも
いるのは私だけ

あるのは愛だけ
聞き飽きた陳腐なアイで包まれているアイだけ
包んでいるのもアイだけ

遠くに海鳴りが消えていく部屋
夕日が楽しげに帰っていく部屋
家族が消えさらない部屋 部屋





2013年10月8日火曜日

先生はあいさつをしましたか


先生は
別れるとき
私に
あいさつをしましたか
死んでいったとき
私に
あいさつをしましたか

先生は
誰に
あいさつをしましたか

私たちが
見ていないところで
だれに
初めまして と
さよなら のあいさつを

キスと
抱擁を

しましたか


2013年10月7日月曜日

不幸どころか


ジャムを塗ったところが
坂道に変わってゆく
そのとき
パンは海に
パンの耳は屋根の内側になる

白かった小麦粉は
海の青色に変わり
もう海になっている

ジャムを塗ったパンは
もう消え去ろうとしている
記憶の片隅に片足を残しているだけだ

エアコンから吹いてくる風は
むせぶほどの潮の香り
ラジオから聴こえてくる音楽は
海鳥の鳴き声となる

私は消え
私のいた空間は
景色で満たされて
不幸どころか
幸せさえ感じない









2013年10月6日日曜日

3人の女性



3人の女性が
橋の上に立っている
こんもりとした常緑樹の緑が向こうから見守っている
そこに水が流れているのか
私の立つ場所からは見ることができない

3人の女性は
橋の上から橋の向こうを見ている
見ながら何かをひそひそと話している
楽しい話ではないだろう
誰かがどうにかなってしまった話だろうか
川の流れを見ながら
この世に生きる辛さを嘆いているのだろうか

3人の女性は
若い娘と友人とその母だろうか
それとも娘と母と老婆だろうか
後ろ姿しか見えないので判別することができない
いつからそこに立っているのだろう
背の低い古びた街並はどんよりと暮れはじめ
橋の上を行き交う人も
やがて夕闇に呑まれるだろう

3人の女性は
その橋の上でかつて見知らぬ男が発狂して
おおきな荷物を川に投げ入れたことを
憶えているだろう
それはこんな季節のこんな時間帯だった

3人の女性は
疑いをもちはじめている
ひょっとしたら存在するのは自分だけで
あとの2人は誰かの幻想なのではないかと
私たちは外からはただ1人にしか
見えないのではないのかと
そして
やがて見ている私のことに気づく
私はこの場を立ち去らなければならない
私は立ち入ってはいけないのだ
3人のいる世界に入ってはいけないのだ

だが3人の女性は
私に近づいてくる
その躯だけを置き去りにして
あの橋の上の欄干から手を離して
私の中に
入ってきた





Girls on the bridge,1901 Edvard Munch

2013年10月5日土曜日

危ないので注意が必要(注意喚起)

5階建ての建物であるが
1階から5階まで全部吹き抜けになっている
吹き抜けの空間にジャンプ台のようにせり出しているのは畳
その畳は床板にガムテープで固定されている
誤って畳の吹き抜け側まで歩を進めると畳は撓(しな)り
ほぼすべての人は落下してしまう
(そのような人を何人も見てきた)

階段は数カ所にあるが
メインの階段は木の椅子を積み重ねて造ってある
この階段の中には
ソファがいくつか交じっていて
また固定が良くないものがあるので
不安定であるため
やはりたまに落下する人がいる

2013年10月4日金曜日

喋っているときには

喋っているときには
聞こえなかった
彼の沈黙が
語り始めた

彼は
夜の雨の向こうで
一方的に
問いを投げかけている

私は答え合わせをしたくて
喋ってみたくなる

時折
雨は降る強さを変え
二人の間に
ざわめきのベールを引く



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