ゆうひがオレンジいろにひかりながら
しずんでゆきます
わたしのかおを
したから
てらそうとしています
わたしは
ちきゅうにいると
ちいさいから
わたしは
したからなにかをされることに
なれていません
わたしのなかまたちも
みなちいさいから
ここでいきていくことには
くろうしています
たとえば
やまやビルやいえのやねや
そこいらじゅうにはえているきや
でんしゃのつりこうこくだって
わたしをみおろしているのです
わたしはみおろされることになれているから
したからみあげられると
おちつきません
わたしはうえからよぶこえに
「はい!」とおおきくへんじをして
じめんをふんで
かけてゆきたいのです
窓がガタガタ気が狂ったように
鳴ります
カーテンを開けると
異様に明るい列車がゆっくり走っていくのが
見えます
そのせいで
街の様子はかき消されて見えなかったのでしょう
記憶の中で
明るい列車が走る姿がリピートされます
私は明るい列車です
すでに人間ではありません
明るい列車になって
夜の線路を
海の方へ走ってゆきます
途中に山もトンネルもあるでしょう
窓がガタガタいっていますが
なんの どこの窓なのか 分かりません
私は腕を伸ばそうと
胃袋から肋骨を突き抜けて出します
指先に胃液と未消化のものが付着しています
私の計器は狂っています
後ろからもう一人の私がやってきて
なだめようとしましたが
背骨の方から腕を突っ込んだので
もうグチャグチャです
電車はねじれた線路の上を行きます
ねじれているからこそ
まっすぐ走れるのです
斜めに陽が差してきました
どこから始まっているのかわからない
透明な巻物です
そのフィルムに巻かれて
映画が上映され始めました
それを見始めたのも
また私のようです
私の視覚がそう言っていますから
あの場所に何もかも置いてきたまま
あの場所のことを忘れていた
あの場所に少しずつ埃が降り積もり
少しずつゴムの張力はなくなり
生々しい思い出も少しずつ風化した
あの場所を知る人はいなくなり
あの場所からつながっていた糸も切れた
あの場所を守る人は年老いて
何かをする意欲はなくなった
あの場所は黙って
世間から遠ざかってゆくのを受け入れ
小声で悲鳴を上げるだけだった
ある日
きのうからきょうになろうとする頃
私の内側にあの場所が現れ
狭い階段の先に古い畳の続きの部屋が見えた
長い間私はその場所のことを忘れていた
だがそこは私の部屋だった
愛する人とのつらい思い出も置いてあった
私にどうしろというのだろう
その場所の地図もなければ行き方も分からない
あの場所は幻ではないのだろうか
そう思えば思うほど
あの場所は扉を開けて
私の心の穴にその口をポッカリと重ねて
すべてを飲み込もうとした
そして
飲み込んだあとにあの場所は消え
もう誰も
思い出すことさえできないのだ
よそいきのふくのせい?
きみのかたが
とがってる
きみはくちびるもとがらして
かわいいえがおを
ふりまいてる
もったいないよ
ぼくにだけ
みせてよ
そのえがお
とがらしたくちびる
とがったかた
きみはやさしい
すてきなひと
おこったかおも
みてみたい
ねえ
おこったかおを
してみて
ぼくにだけ
こっちをむいて
なにもしらない
おとうさん
なんでもしってる
おかあさん
ふたりをみてる
ぼくとねこ
それをみている
まどのえだ
死にたくなるような日々の数々も
日差しに暖められて起こされた沈みゆく朝も
絶望を一人で抱えたような顔して
さまよっている午後も
かたときも離れずきみを守ってきたもの
それがどこから来たのか
きみはしらないまま生きている
轟音とともにきみの脇を走り去ってゆくダンプ
カミソリの刃がスッと血の線を引く
きょうは記念日
きみと私がきょうを生き抜いた
アイスコーヒーが喉から沁みて
全身を一つにまとめようとする
星屑が見えないところで箒ではかれている
光の粒がまぶたの裏に集まってくる
それを水の流れが眺めている
私は息を止めて
命の在り処をたしかめようとする
あの
なんでもない
ゆめの続きに
戻ることができない
あの
なんでもない
意味のない風景の
一コマに戻りたい
あの
なにも思わなかった
忘れてばかりの日々に
帰るように
あの
命とおなじ重さだった体に
帰るように
あの
なんでもない
ゆめの続きに
戻りたい
前も後ろもない
流れない時間の
真ん中へ
入っていきたい
黙って静かにしていたら
だれかが心をノックした
気のせいなんかじゃありません
心の扉をあけてみた
すーっと風が吹き込んだ
泥棒入ってこないかな
ゆったり椅子に座ってた
時は行列作ってる
いったいどこへ行きますか
星の明かりが灯ったら
幸せなこと数えます
数えるうちに いなくなります
不幸せだと思っていた
幸せだった日々
いま
まいにち苦しんでいるが
これからきっともっと苦しくなる
苦しみのなかに
幸せはあるだろうか
あったら
おしえてほしい
なにかの合図をしてほしい
私はまじまじと
幸せをながめて確かめてみよう
ざらざらした背中をなでてみよう
他人行儀な幸せは
私になじんでくれるだろうか
私は幸せを大事にしよう
幸せに好かれるように
友達の苦しみも一緒に
未来のことを夢見たりして