あなたがこのよにうまれて
よろこんだひとはいたが
かなしんだひとはいなかった
あなたがかなしみのなかにいるとき
くうきはバリアをつくって
あなたをまもろうとした
あなたがこのよにうまれて
やがてあなたはめをひらき
うつくしいものをみた
いいかおりをかいだ
それはあなただけのものだ
いま
まちにながれはじめたおんがくも
よくきいてみるといい
それは
あなたのためだけに
かなでられている
おんがくだ
と
わたしはおもっている
はなをだいていた
おんなのこ
いつのまにか
じぶんも
おはなになっていました
みんながくちぐちに
きれいだと
いいました
はなをだいていた
おんなのこ
かれていく
おはなも
だいじにしました
みんながくちぐちに
あわれだと
いいあいました
はなをだいていた
おんなのこ
じぶんは
きれいじゃないと
ないていました
みんなはくちをつぐんで
ひとことも
こえをかけませんでした
はなをだいていた
おんなのこ
かれしが
きれいだよと
まいにちきすをしました
みんなはくちぐちに
おにあいだと
いいました
はなをだいていた
おんなのこ
はなの
たねを
まきました
みんなはどんなはなが
さくのか
めをとじてかんがえました
こそこそと
みちのはじをあるけば
どろみずにはまり
こえをたてずに
ちかづくとちゅうで
ころんでたおれ
みようとすれば
そこにはもうなく
さわったときには
やけどしたっけ
のぼっていくと
みちはなく
くだっていけば
がけからおちた
わたしはさいきんこんなぐあい
だからとにかく
だいじょうぶ
コンサートが終わり
一つの家族が薄暗い道を歩いている
命のかたまり
音楽はしつけ糸
靴はクッション
まとったユニクロのウルトラライトダウンは
隠し事を欺く
足取りは恋心の成れの果て
夜の星空は
寒い風に散る涙を映した偽物
ゆらゆら
ゆれています
ふらふら
しています
うごくもののうえ
かわりゆくかたち
うまれてくるもの
きえさってゆくもの
ゆらゆら
ゆれています
ふらふら
しています
ゆらゆらゆれる
しんきろうのまどから
みわたします
せかいは
やはりゆらゆらゆれて
そこにたつ
ひとはふらふらしています
ふらふらしながら
どこかに
たよるものがないか
めをまわしてさがしています
私の考えは
鉛筆で書く
文字を書き間違えるように
考えもよく間違えるから
私の思いは鉛筆で書く
書き終わった途端に変わるから
きらいな人も好きな人に変わるから
私の未来は鉛筆で書く
あなたが消して書き直せるように
未来は独り占めできないだろうから
絵 一之瀬仁美
いつまでも
ここにすわっていたい
この席に
いまは
駅前の
クリスマスのイルミネーションを借景に
珈琲の香りが漂い
ほどよく賑わっている
今ふうのカフェだが
まわりのひとが
すべていなくなり
たてものに蜘蛛の巣が張り巡らされ
壁は剥げ落ち窓は割れ
寒風が吹きこんでも
街が廃墟となり
行き交うひとが皆無となっても
私は
この席に
すわっていたい
私の思いは
強く不変であるに違いない
私はいたい場所に
いたい
それが私の抵抗だから
それが私がいる意味だから
あやまちをくりかえし
いきてきた
いきてきたといま書いたのも
またあやまち
あやまちにあやまちをかさね
あやまちの塔が建つ
あやまちの塔を自ら破壊して
あやまちの道をひきかえして
あやまちの川のほとり
誤って正しいことを
水にながす
あやまちで
日が暮れて
あやまちの夢にめをさまし
誤った名を呼んで
ふたたび眠る
あやまちをくりかえし
いきつづける
くらしをよくしようとする
だがくらしはよくならない
すべてがあやまちだから
あやまちの躯を
正しいもので染め
正しさというもので染め
中身も
ねこそぎ入れ替えなければ
それでも
あやまちをおかすだろうが
あやまちには
気づかなくなるだろう
だれかのために
はたらいて
なにかのために
しんでいく
そんなじんせい
ありました
すきなだれかに
のせられて
しぼりとられて
わらわれて
ちいさなゆめは
きえるもの
やさしいひとを
ふみだいに
とおくをながめた
ひとがいた
こわれたふみだい
もえるごみ
ながいものには
まかれつつ
いやなおもいは
ひとまかせ
おやまのたいしょう
ごきげんよう
わるいはなしは
わすれましょう
おとくなはなしは
おぼえとこう
やったもんがち
おらがむら
きれいなものに
かこまれて
よごれたものは
しらんぷり
じぶんのよごれは
きづけない
行くところがないから
行きたくない方角を避けて歩いた
落ち着く場所がないから
好きな本を開いては
その中に入っていった
愛するひとがいないから
すれ違うひとが「そのひと」かどうか
確かめながら歩いた
守りたいひとはいたが
その力はないから
ただ守られていた
神様は見えなかったが
神様はきっと
視線を合わせるのが苦手なのだ
と 思うことにした