この世に「奇跡」というものがあることを
忘れて暮らしていた
いや
たまに机の引き出しの奥から
いつか好きな人に貰った大事なプレゼントを取り出すように
そのことを思ってみたりしたことはあったけれど
だか
奇跡は
自分の日常とは無関係だと
いつの間にか思い込んでいた
そうするしかなかったから
私には過酷な暮らしの日々が訪れては消えて行ったから
そこには奇跡は気配さえ現わさなかったから
しかしその日
ハンバーガー屋で安いコーヒーを飲みながら
久しぶりに普段考えないことを考え
普段思わないことを思い描いている自分にハッと気づくと
隣にもう忘れていたリアルな奇跡の顔があった
奇跡は 久しぶり! と言わんばかりに私を見ていた
私は焦り奇跡のことを思い出そうとしたが
脳みそをフル回転すると同時に
奇跡のことを思い出した
2013年6月3日月曜日
2013年6月2日日曜日
2013年6月1日土曜日
追いかける私
私の視界は
目の形に切り取られているのかな
前髪が空の上にある
私は
私の形に空気を切って
あなたがいる場所へと移動してゆく
あなたは私の心をみて
曇っているね と言う
私は
聴覚の可聴域を微妙に変化させながら
あなたの声を経験と照合し
何が言いたいのかを類推する
その間
瞬きを多めにする
あなたは私の応答を聴かずに
体重を移動させ前へと歩き始める
私は涙腺を若干開いて
瞳の渇きを癒し
あなたの後を追いかける
2013年5月31日金曜日
囚人列車は私だけをのせて
坂道の途中
石垣の割れ目に根を張って咲いている白い花
きみは私より
清くたくましい
私はきみの横を通り過ぎて
言い訳をしにいく
わずかな給料の余力を使い果たして手に入れた
言い訳に添えるお詫びの品を脇に抱えて
電車とバスと徒歩で1時間
休日の太陽を背中に受けて
背中を丸めて歩いていく
私はなんて小さい人間なんだ
電車のつり革に手錠をかけられ
囚人列車は私だけをのせて
2013年5月30日木曜日
女三人 それはだれ?
もんもんもんもん もんもんもん
空がふやけた 霧雨だ
もんもんもんもん もんもももん
女三人旅に出た
もんもももんもん もももんもん
へのへのもへじが笑ってる
ろんろんろんろん ろんろろろ
ろろろろろんろろ 誰ですか
ろんろろろんろん ろろんろろん
ろろろろろろろ ももんがです
2013年5月29日水曜日
愛について
私はその重さと釣り合う雲
ふと足を止め
深呼吸をしてみたくなる
あなたはそれを打ち消すリズム
痛みの鼓動を逆手に取って
快楽に変える
私は空の器
私の言葉を受け入れ
信じもしないまま
言葉のベッドで眠ってしまう
地には心地よい夜の闇が
訪れているだろう
2013年5月28日火曜日
ナポリタンとサイダー
学食にはいつも幽霊がたむろしている
昼飯時の混み合う時間帯には
生きている人間と死んでいる人間がダブって存在しごった返してしまうので
なにかの〈るつぼ〉となっているが
先ほどから彼が何の〈るつぼ〉か
的確な言葉を思い出そうとしているがいっこうに思いだせない
その間にも
詩は進行する
いつか言い表したあの言葉!
行ったり来たり
行ったり来たり
である
飛行機が遅れたため
東京からこの大阪の大学にやって来る電車の車中で
彼には既に目的の四分の一が達成できないことが分かっていた
それで少し焦ってはいた
大学のある駅で降りると
駅の出口は大学からは一番遠い位置に位置していたので
さらに彼は駅の出口から一番遠い車輌に乗っていたので
最悪だ〜! と
我が身の不幸を嘆かずにはいられず
だからつい足早に投げやりに歩き始めた
十四(しいすう)という名の駅にあるその大学の学食は地下にあり
二階までの吹き抜けの構造になっている
食堂の周囲には内階段から繋がる渡り廊下があり
さらに螺旋階段を通じで二階の廊下に繋がっていた
彼はエレベーターホールから学食へ行くエレベーターに乗ろうとしていたが
何階に行けばいいのか分からず混乱していた
いくら考えても分からない
答えが見出せない
そのうち上へ行くエレベーターがやってきて
彼は乗り込みB1ボタンを押した
エレベーターから降りると
そこは学食より1メートルほど下の床だったので
五段分の半端な階段を上り
上り過ぎたので一段下がり
奥のカウンターに近づいていった
ナポリタンとサイダー
おそらくこれが
きょう彼が初めて人間に発した言葉だった
そして
その声はいつまでも木霊していた
まるで彼を責めるように
まるで彼を愛するように
夕方の学食で
彼がいなくなった後
幽霊たちがお酒をチビチビやりながら
その彼の声を繰り返し歌っていた
ナポリタンとサイダー
ナポリタンとサイダー
昼飯時の混み合う時間帯には
生きている人間と死んでいる人間がダブって存在しごった返してしまうので
なにかの〈るつぼ〉となっているが
先ほどから彼が何の〈るつぼ〉か
的確な言葉を思い出そうとしているがいっこうに思いだせない
その間にも
詩は進行する
いつか言い表したあの言葉!
行ったり来たり
行ったり来たり
である
飛行機が遅れたため
東京からこの大阪の大学にやって来る電車の車中で
彼には既に目的の四分の一が達成できないことが分かっていた
それで少し焦ってはいた
大学のある駅で降りると
駅の出口は大学からは一番遠い位置に位置していたので
さらに彼は駅の出口から一番遠い車輌に乗っていたので
最悪だ〜! と
我が身の不幸を嘆かずにはいられず
だからつい足早に投げやりに歩き始めた
十四(しいすう)という名の駅にあるその大学の学食は地下にあり
二階までの吹き抜けの構造になっている
食堂の周囲には内階段から繋がる渡り廊下があり
さらに螺旋階段を通じで二階の廊下に繋がっていた
彼はエレベーターホールから学食へ行くエレベーターに乗ろうとしていたが
何階に行けばいいのか分からず混乱していた
いくら考えても分からない
答えが見出せない
そのうち上へ行くエレベーターがやってきて
彼は乗り込みB1ボタンを押した
エレベーターから降りると
そこは学食より1メートルほど下の床だったので
五段分の半端な階段を上り
上り過ぎたので一段下がり
奥のカウンターに近づいていった
ナポリタンとサイダー
おそらくこれが
きょう彼が初めて人間に発した言葉だった
そして
その声はいつまでも木霊していた
まるで彼を責めるように
まるで彼を愛するように
夕方の学食で
彼がいなくなった後
幽霊たちがお酒をチビチビやりながら
その彼の声を繰り返し歌っていた
ナポリタンとサイダー
ナポリタンとサイダー
2013年5月27日月曜日
初心者として
するめを炙っている
そのよこで
柱時計が時を刻んでいる
板張りの床に響くたびに
心臓はリズムを乱されそうになる
ラジオからは流行り歌
たぶん間違えずに律儀に歌い終えてくれるだろう
あなたとのことを考えていたが
いろんなことが入れ替わり立ち替わり心を占領しようとするので
ついにあきらめて放っておくことにした
日が暮れて暗くなり
公務員が帰路につく
あるいは酔って飲み屋のはしごに出かける
きょうという日は
はじめてのことだ
毎日その日を初心者として
生きなければならない
私は声を上げ
おどけて助けを呼ぶしかないだろう
死んだあの人に
2013年5月26日日曜日
男子だけ全員集合!
男子だけ全員集合!
そう号令が掛かったので
私はそこへ行って
腰を下ろした
女子はどこかで
何かをしているのだろう
なにか秘密めいたことなのだろうか
なにか秘密めいたことなのだろうか
でも きっと
いつかまた
いつかまた
女子と一緒になれるだろう
そんなことを思った日から
あっという間に
あっという間に
長い長い年月が過ぎ
私はずいぶん歳をとった
私はずいぶん歳をとった
男子だけ全員集合!
そして またもや
号令が飛び交う
号令が飛び交う
私は号令の声がする方へ行き
腰を下ろした
膝小僧を抱えて
あの時と同じように
未来創作から電子ブックが出版
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