2014年4月13日日曜日

きみの砲弾

優しい笑顔に武器を隠して
いっせいに砲撃しようと狙っている
きみを愛するものから引き離したものに向けて
きみは甘い吐息の毒よりも効き目があると信じるその砲弾を
打ちこもうとしている

きみの甘い吐息の毒をかすめて
砲弾は飛んでゆくだろう
きみを愛するものから引き離したものに向けて
甘い吐息の毒を微かにまとって

優しい笑顔に武器を隠して
きみは得意になっている
それはきみの素晴しいところだ
砲弾など何の役にも立たないことを
疑おうとはしない

そのしなやかな腰に張った帆や
衝撃を吸収する肉体のほうが
どれほど敵を殲滅するのに役立つことか
きみは頓着ない

優しい笑顔に武器を隠して
いっせいに砲撃しようと狙っている
時は文字盤の上で刻む
きみの時は少しずれているのか
たまに早くなったり
止まってみえるのだけれど

2014年4月12日土曜日

その 透明な ・・・

頭のてっぺんからつま先まで好きなひとが
疑いの眼差しで私を見ている
私にはちゃんとした理由があるから と
私は自分を落ち着かせようとしている

初めて同じ部屋で寝た夜のことを
私は思っているが
君はどうやって帰ろうか
考えている

君の胸と私の胸とを合わせて
背中を両方の手のひらで
激しく撫でて愛してるよと伝えた

いま車を運転してきた君の
助手席で
私は君をつなぎとめるために
色々と画策した

ロービーで君を待っていると
君が来ないのではないかという不安が
私をいらだたせる

私は悪いことをしているかもしれない
無理やり君にいうことをきかせようとしている

だが君は来ない
降りだした雨の向こうに
走り去ってしまうのか
そんな
悲劇的な画が
私にはに似合っていると
君は私の悲壮な出来事を楽しみながら言いそうだ

私は君を信用などしていない
だだ好きなだけだ
君は私を好きではない
ただ無理やり繋ぎ止めて欲しいだけだ

二人の間に
理解し難い謎が
透明な丸い水晶球のように落ちている
その魅力に囚われてしまったことだけ
私達は一緒だった

2014年4月11日金曜日

みあげたわたし

ゆうひがオレンジいろにひかりながら
しずんでゆきます
わたしのかおを
したから
てらそうとしています

わたしは
ちきゅうにいると
ちいさいから
わたしは
したからなにかをされることに
なれていません

わたしのなかまたちも
みなちいさいから
ここでいきていくことには
くろうしています

たとえば
やまやビルやいえのやねや
そこいらじゅうにはえているきや
でんしゃのつりこうこくだって
わたしをみおろしているのです

わたしはみおろされることになれているから
したからみあげられると
おちつきません

わたしはうえからよぶこえに
「はい!」とおおきくへんじをして
じめんをふんで
かけてゆきたいのです

2014年4月10日木曜日

未消化の映画

窓がガタガタ気が狂ったように
鳴ります
カーテンを開けると
異様に明るい列車がゆっくり走っていくのが
見えます
そのせいで
街の様子はかき消されて見えなかったのでしょう
記憶の中で
明るい列車が走る姿がリピートされます

私は明るい列車です
すでに人間ではありません
明るい列車になって
夜の線路を
海の方へ走ってゆきます
途中に山もトンネルもあるでしょう

窓がガタガタいっていますが
なんの どこの窓なのか 分かりません

私は腕を伸ばそうと
胃袋から肋骨を突き抜けて出します
指先に胃液と未消化のものが付着しています

私の計器は狂っています
後ろからもう一人の私がやってきて
なだめようとしましたが
背骨の方から腕を突っ込んだので
もうグチャグチャです

電車はねじれた線路の上を行きます
ねじれているからこそ
まっすぐ走れるのです

斜めに陽が差してきました
どこから始まっているのかわからない
透明な巻物です
そのフィルムに巻かれて
映画が上映され始めました
それを見始めたのも
また私のようです
私の視覚がそう言っていますから

2014年4月9日水曜日

あの場所

あの場所に何もかも置いてきたまま
あの場所のことを忘れていた

あの場所に少しずつ埃が降り積もり
少しずつゴムの張力はなくなり
生々しい思い出も少しずつ風化した

あの場所を知る人はいなくなり
あの場所からつながっていた糸も切れた
あの場所を守る人は年老いて
何かをする意欲はなくなった

あの場所は黙って
世間から遠ざかってゆくのを受け入れ
小声で悲鳴を上げるだけだった

ある日
きのうからきょうになろうとする頃
私の内側にあの場所が現れ
狭い階段の先に古い畳の続きの部屋が見えた

長い間私はその場所のことを忘れていた
だがそこは私の部屋だった
愛する人とのつらい思い出も置いてあった

私にどうしろというのだろう
その場所の地図もなければ行き方も分からない
あの場所は幻ではないのだろうか

そう思えば思うほど
あの場所は扉を開けて
私の心の穴にその口をポッカリと重ねて
すべてを飲み込もうとした

そして
飲み込んだあとにあの場所は消え
もう誰も
思い出すことさえできないのだ

2014年4月8日火曜日

とがってるきみ

よそいきのふくのせい?
きみのかたが
とがってる
きみはくちびるもとがらして
かわいいえがおを
ふりまいてる
もったいないよ
ぼくにだけ
みせてよ
そのえがお
とがらしたくちびる
とがったかた

きみはやさしい
すてきなひと
おこったかおも
みてみたい
ねえ
おこったかおを
してみて
ぼくにだけ
こっちをむいて

2014年4月7日月曜日

えだ

なにもしらない
おとうさん
なんでもしってる
おかあさん
ふたりをみてる
ぼくとねこ
それをみている
まどのえだ

2014年4月6日日曜日

記念日

死にたくなるような日々の数々も

日差しに暖められて起こされた沈みゆく朝も

絶望を一人で抱えたような顔して

さまよっている午後も

かたときも離れずきみを守ってきたもの

それがどこから来たのか

きみはしらないまま生きている

轟音とともにきみの脇を走り去ってゆくダンプ

カミソリの刃がスッと血の線を引く

きょうは記念日

きみと私がきょうを生き抜いた

2014年4月5日土曜日

星屑

アイスコーヒーが喉から沁みて
全身を一つにまとめようとする
星屑が見えないところで箒ではかれている
光の粒がまぶたの裏に集まってくる
それを水の流れが眺めている
私は息を止めて
命の在り処をたしかめようとする

2014年4月4日金曜日

あの なんでもない

あの
なんでもない
ゆめの続きに
戻ることができない

あの
なんでもない
意味のない風景の
一コマに戻りたい

あの
なにも思わなかった
忘れてばかりの日々に
帰るように

あの
命とおなじ重さだった体に
帰るように

あの
なんでもない
ゆめの続きに
戻りたい

前も後ろもない
流れない時間の
真ん中へ
入っていきたい