2013年10月26日土曜日

えらいひとは


えらいひとは
なぜえらいのか
えらくないわたしは
かんがえます

えらいひとに
なりたくないと
なれないわたしは
おもいます

えらいひとは
ほかのえらいひとを
だいじにするのは
なぜでしょう

えらいひとは
みんなのじんせいに
よろこびをあたえます
かなしみとおなじくらい

えらいひとは
それでもいきることには
いみがあると
おしえてくれます

えらいひとは
なんのために
えらいひとを
やっているのでしょう

えらくないわたしは
なんのために
えらくないひとを
やっているのでしょう

2013年10月25日金曜日

さようなら


しずめすしずめでんしゃのり
るのとばりはもうおりた
ちにかえればはらぺこの
きむしけむしのごんたくん
っきょのかおしてまっている

2013年10月24日木曜日

庭の木々が

庭の木々が私を見ていた
あの時は気づかなかった
五月に花びらを落としたモクレンが
そのことを忘れようとして
私に視線を投げかけてきた

あの時は分からなかった
私には何もしてあげられない

木々の上の空から
雲が私を見て
待ちきれないという様子で
去って行った

だが本当は
私の方が待ちきれなかった
私はすぐに意味もなく立ち上がり
身支度を始めたから

あの時は知らなかった
私がいないところで起こっていたこと
それを知らせようと
周りのものたちが働きかけてくれていたこと

私は何も知らなかった
いまも屋根の上に雨が降り注ぎ
テーブルの上のコーヒーカップが微かに湯気をたてている
いま私が何を知るべきなのか

指先から文字は生まれ続けるが
私は何も気づかなかった
私は何も気づけなかった

2013年10月23日水曜日

永遠の住処

夢の中でしか行くことができない場所を見つけた

水辺にちょうどいい窪みだってある

持っていないものは何でも借りられる

ここにいれば誰もがやさしくしてくれる

バカにしてののしってくる者もいない

鼻につく見栄っ張りも見ることがない

それできみは

ここにいることにした

どこへも帰ってゆく理由はない

枯れた草花を焚いているので悪い虫もよってこない

生々しい問題はなにもないここは

永遠のきみの住処

疑わなければ消え去ることがない

きみがひとりでいるところ

2013年10月22日火曜日

ヤマトタケル

ヤマトタケル
ヤマトタケル
これは呪文です
ヤマトタケル
ヤマトタケル
ヤマトタケル
に遭遇したことはありませんその憶えはありません
ヤマトヤマトヤマトタケル
ヤマトタケル
いまは悶々として苦しくても電話するのは流行りません
重たい話題は禁止です
ヤマトヤマトヤマトタケルヤマトタケルヤマト
スピリチュアルな話題に変換して
せめて少しだけでも話します挨拶代わりに
ヤマトタケルヤマトタケル
それでも彼女は友だちに次々と電話していきます
切られても嫌われてもその方が楽だと気づきましたから
クラウドにはいい写真が増えました魅力的な自分の写真も
時間は味方してくれます世間よりはやさしい
しかし神様の味方をしようとしても神様は暗闇に隠れてばかり
ヤマトタケルヤマトタケルヤマトヤマトヤマトタケルタケルヤマト
それだからふて腐れて加速度を付けて毎日夢の中に落ちていきます
だれも文句を言うことはできません好きにできます
夢の中から戻るときに戦争ゲームのように現実と勝負します
絵札をたんまり仕込んできているのでまず現実に負けることはありません
ヤマトタケルヤマトタケル
ヤマトタケルヤマトタケルヤマトヤマトヤマトタケルタケルヤマトヤマトタケル
何回でも何遍でも繰り返しますその間は老けません
ヤマトタケル
さて要らないものは喜ぶ知人に送りつけましょう
役立たずの冠をかぶった醜いハリボテくんは火にくべてお祈りしましょう
ヤマトタケルヤマトタケルねえそれでいいんだよね

2013年10月21日月曜日

アタマとココロ

となりどうしのアタマとココロ
うまくやってはくれまいか

だましあうのはやめにして
いやみいうのはあとにして
うまくやってはくれまいか

となりどうしのアタマとココロ
どちらがえらいこともない

きずつけあうのはなんせんす
たまにけんかもいいけれど
うまくやってはくれまいか

おねがいだから
おふたりさん

2013年10月20日日曜日

雨の日の電車


ニューヨークのミュージアムショップで買った傘をさして歩いている。家から駅へ向かう道。傘を買ったのは十年以上も前の夏。今は秋。
ホイットニーミュージアムのロゴがデザインされた傘。私はその傘の中に収まって、足を前へと振り出している。きょうは、中国人の友だちが誘ってくれた京劇を観に飯田橋までいくのだ。
雨は歩道に川を作っている。喉が渇いたのでセブンイレブンで緑茶のペットボトルを買ってナナコで支払った。すでに靴に水が浸みて靴下が濡れている。雨の日に履くのは初めての靴だった。
電車に乗ると皆、傘を持て余し気味に持っていた。
電車もまた、車内を傘の滴で濡らしながら、濡れながら走っていた。

2013年10月19日土曜日

こわがることもわすれて


すきなことをすれば
あっというまに
いやなことはすぎる
おもいだしたくないことは
ちいさくちいさくちぎって
たきびのなかになげいれちゃう
なにがもえたのかさえ
きっとわからなくなる

ぱぱままは
おもいでのたからばこがもう
いっぱいだけど
これからなにをいれようか
かんがえるのはたのしい
つらいひびは
てをつないできて
なかなかはなしてはくれないけど
いつかじぶんからてをはなせばいい

しあわせになっても
ばちはあたらない
ひとりじめしなければ
このよは
みんなのすみか
すきなことをやって
すきなひとをみつけて
すきなばしょにいればしあわせ

ぱーてぃーもわるくないね
ひとりで
よぞらのほしとかいわするのとおなじくらい
こわがっていないで
こわがることもわすれて
すきなことをしよう

2013年10月18日金曜日

不要なものを


不要なものを
捨てようとした時
近くで
〈私も不要でしょう〉
という声

見ると
目が合った

押し問答

分からない
不要 か
どうか

時が経つ
すると
また
どこからか
〈私も不要でしょう〉
という声

〈不要ですか〉

訊いてみた

答えない
目が訴える

〈きっと不要です〉

不要なものを
放置しているのは
全員

捨てられずにいると
いつまでも
不要なまま

信じてもらえない
ならず者

捨て場所は
ある

ここは広い宇宙だし
置き場所を
変えるだけ

不要なものが
手をつないで
行きたがっている

行かせてあげれば
君も
行ってもいいよ

2013年10月17日木曜日

薄暗がりにたたずむこころ

薄暗がりにたたずむこころ
こんなに重い

丸いパイプの
ペンキが剥げたところに
同じ色を塗り重ねると
すると
そこは新品よりもいい色になる

薄々気づいていたこと
だけれど世間はそんなことばかりだ

十重二十重に
塗り重ねられた空は
今は亡きあの映画監督が作った映画さながら
高い天井から吊り下げてある

私は足もとと頭上を交互に見る

約束ごとのように
背後にお化けたちの気配がするが
気づかなかったことにしておこう

よんどころない事情があるのは
人間ばかりではない

薄暗がりは
私のこころを隠そうとしているが
すでに
隠せない大きさになってしまっている
私のこころ