お母さん 私が子どもだったころの話を
聞かせてよ
意味のないことでいいから
うれしいと思ったことばかりを
聞かせてよ
お父さん あなたがしたかったことを
聞かせてよ
不甲斐ない私を叱ってくれてもいいから
私に して欲しかったことも
聞かせてよ
初秋の街が密かにざわめいている
私たちのことを
見ない振りして
見ているから
2013年9月23日月曜日
2013年9月22日日曜日
おいしくないメロンパン
あの
おいしくないパン屋の
おいしくないパンをたべながら
お茶を飲みたいと思い
恋人と別れてきた
その
おいしくないパン屋の
おいしくないメロンパンを食べながら
うまくいかなかったことが
思い出され
おいしくないメロンパンとともに
反芻され
癒されていくだろう
おいしくないパン屋は
客も少なく
ゆったりと座って
いつまでもいることができたから
おいしくないパン屋は
いつまでもそこにある
おいしくないパン屋の
人気メニューは
おいしくないメロンパン
あの
メロンの香りはしない
おいしくないメロンパンの
やさしさ
おいしくないパン屋の
おいしくないパンをたべながら
お茶を飲みたいと思い
恋人と別れてきた
その
おいしくないパン屋の
おいしくないメロンパンを食べながら
うまくいかなかったことが
思い出され
おいしくないメロンパンとともに
反芻され
癒されていくだろう
おいしくないパン屋は
客も少なく
ゆったりと座って
いつまでもいることができたから
おいしくないパン屋は
いつまでもそこにある
おいしくないパン屋の
人気メニューは
おいしくないメロンパン
あの
メロンの香りはしない
おいしくないメロンパンの
やさしさ
2013年9月21日土曜日
2013年9月20日金曜日
泣いている私たち
目の高さを合わせて
見つめあったら恥ずかしい
笑っちゃう
高さを合わせただけなのに
それとも
あなたが
普段とちがうこと
思っているの?
そう
私も
あなたと同じ
普段とちがう
特別なことを
思ってる
他人から見れば
他愛ないこと
そう
私たちから見ても
他愛ないほど
あたりまえで
特別なこと
でも一番大事なこと
力が入ってしまって
おかしいね
笑ったけれど
変だな
泣いている
私たち
見つめあったら恥ずかしい
笑っちゃう
高さを合わせただけなのに
それとも
あなたが
普段とちがうこと
思っているの?
そう
私も
あなたと同じ
普段とちがう
特別なことを
思ってる
他人から見れば
他愛ないこと
そう
私たちから見ても
他愛ないほど
あたりまえで
特別なこと
でも一番大事なこと
力が入ってしまって
おかしいね
笑ったけれど
変だな
泣いている
私たち
2013年9月19日木曜日
私に何ができるのか
私に何ができるのか
私には分からないことを
あの人は知っている
だが
私はあの人のことは
何も知らない
あの人が
私のことを
知っていること以外
私は何も知らない
あの人は誰?
あの人に訊いても
教えてくれない
水銀灯が
閃いて消えた
あの人も
影を残して
消えてしまった
私には分からないことを
あの人は知っている
だが
私はあの人のことは
何も知らない
あの人が
私のことを
知っていること以外
私は何も知らない
あの人は誰?
あの人に訊いても
教えてくれない
水銀灯が
閃いて消えた
あの人も
影を残して
消えてしまった
2013年9月18日水曜日
デュラスの声
会ったことはないが
デュラスの声なら聴いたことがある
波打ち際に立ち
心を躍らせることも
感傷に浸ることもせず
波や
遠くを往き来するさまざまな舟や 飛び交う鳥を
見るともなく見ている
昼間の月が空に
特別扱いで
太陽の光を反射して
舟のように浮かんでいる
初秋の海
私は
特別扱いしてもらえるだろうか
人には様々な生き方があるが
いつもそのことを忘れてしまう
砂浜から滑やかな膚をもつ小石を拾い
指の腹で撫でてみる
波は
微動だにせず
打ち寄せてくる
靴を濡らして
私の中まで濡らして
2013年9月17日火曜日
ぶら下がり健康器
ぶら下がり健康器
というネーミングはどうかと思う
多機能のものが人気で
彼女はそれを買い
気が向くたびにぶら下がり
また背当て板を斜めに付け替えて
筋力トレーニングやストレッチもした
彼女には夢があったから
滑車には緑色の紐
(明るい色だ)
紐には持ち手が付いていて
交互に引き合うエクササイズもできる
人は邪魔な器具だと言うけれど
彼女はここに引っ越してきたとき
真っ先に購入したのだ
薄暗くなった部屋で
香を焚き
小さい暗い明かりを灯して
彼女はぶら下がった
ぶら下がり健康器
というネーミングはどうかと思う
そこに
彼女がぶら下がるのは
お似合いだ という人がいるなら
それは酷な話だと思う
*私はぶら下がり健康器が好きだ。今使っているタイプはガタガタいうが、衝撃を逃がしていることが分かる。そうして自らは安定しているのだろう。
*私はぶら下がり健康器が好きだ。今使っているタイプはガタガタいうが、衝撃を逃がしていることが分かる。そうして自らは安定しているのだろう。
*何度も「首吊り』の夢を見てきた。このブログを始めた3年前は毎日のように見ていて、見ないと「何かが足りない」と思うほどだった。最近はたまに夢のなかで首を吊る。それはなぜなのか。考えたこともあったが、あまりに回数が多かったので、ただうんざりしている。
*中学生の頃、自殺することを良く考えていた。自殺したかった訳ではないとおもう。生きるに値する人生、というものに自信がなかったのだろう。しかしそれは不遜なことだ。そんな不遜なことを、命を預かる私はなぜ考えたのだろう、と、今なら思うだろうが、でも大して自信はない。
2013年9月16日月曜日
牡蠣を食べに
アイドルの車に載って
牡蠣を食べに
港町を幾つも縫って走っていく
私はふだん都会で仕事をして生活しているから
アイドルの車に載って
牡蠣を食べに
港町を幾つも縫って走っていくことは
特別なことだ
アイドルは
自分が歌ってヒットしたあの歌を
歌ってくれる
伴奏なしで聴いたのは初めてだ
この歌をアイドルのナマの口から聴くことができるとは
まだ生きていて本当に良かった
アイドルは
みごとなハンドルさばきで
車を道の駅の駐車場へ入れた
エンジンを切って外に出ると
潮風とともに
波の音も聞こえてきたような気がしたが
それは錯覚だった
アイドルは
お手洗いに行き
私はアイドルの歌を口ずさんで
手すりにもたれて展望デッキから海を眺めて
目を細めて
何度となくテレビや映画で見たあの表情を作って
悦に入ろうとしたが
それはできなかった
アイドルは昨日の夜
私の部屋にやって来て
私のパンツの色を褒めて
体を揺らして
よろこびを表現した
そしてすぐに白いワンピを
ソファの上に放り投げた
白い鳥が
私の上を飛んで
風に引き戻されて方向を変えた
気づくと
アイドルは私の手を
後ろから握って
いい香りの髪の毛を私の首筋にあててきた
アイドルは
仕事に戻らなくては行けない
私はそんな無粋なことを思った
牡蠣が待っている
牡蠣が頭から遠ざかっていく
牡蠣を食べたら
殻を残して
部屋に帰るのだ
部屋には
私が収まるべき空間がある
アイドルは
私の手をとって
車へと向かう
私は
アイドルの車に載って
牡蠣を食べに
港町を幾つも縫って走っていくのだ
*昨日の物語風の一筆書きの詩の評判が良かったので、それに気を良くしてきょうも書きました。
*おもしろいのかどうか、わかりません。
2013年9月15日日曜日
ぼろぼろのズボン
ぼろぼろになったズボンを
捨てることができない
自分を捨ててしまうようで
自分はこんなに
ぼろぼろではないけれど
ズボンを捨ててしまったら
こんどは
自分がぼろぼろになる
いままで生きてきて
ぼくはズボンを捨てたことはなかった
ズボンは
いつのまにか
新しいズボンをはいて
ぼくの前に立っていた
ぼくは
いつも
ぼろぼろになるまえのズボンをはいて
外に出かけていった
また
ズボンはいつも
ぼくの帰りを待っていた
自分の場所に折り目正しく腰を下ろして
そして
いつの日からか
ズボンはぼくを
ぼくはズボンを
ふだん
気に留めなくなった
そんなとき
ズボンはスカートに恋をして
ぼくも
そのスカートの女の子に恋をした
僕たちはよく
駅や街灯のベンチに腰掛けて
話をした
家に帰ると
ぼくはすぐに
ズボンを脱いだ
ズボンが邪魔だったから
一人暮らしを始めたぼくは
スカートの女の子がスカートをふわりと脱いで
やさしく畳んでおくのがすきだった
そんな時も
ぼくはズボンを勢いよく脱ぎ捨てた
そして
ある日
ズボンは
ぼろぼろになっていた
ぼくは
一人の部屋で
ズボンを見た
ズボンは
思い出を刻んでいた
ぼくと一緒に
あのスカートの女の子と
写真に写っていた
日差しを浴びて
きっと徐々に色あせて
ほつれていった
ぼろぼろのズボン
ぼくは
捨てない
捨てることができない
何度目覚めても
新しくなっていないズボンと
ぼくはいつ
さよならすべきなのだろう
2013年9月14日土曜日
いかすすいか
すましがおて
いすにおわすが
わすれものは
ないですか
あいすいません
すいかと
すいかと
すいかを
わすれもうした
いかがいたしますか
かいすうけんで
とりにいかれては
いかれた
いかがわしいすいかは
かえしましたし
とりにいかせる
かいがいしいしもべもいませんし
かいすうけんを
さあ
すいません
とりにいかせていただきまして
かえりましたら
すいかと
いかすすいかを
おわたしに
さんじょういたします
はい
*スイカ JR東日本が発売し、今はほぼ全国で使える交通系のプリペイドカード
*西瓜 夏が旬の大きな実の果物。泥棒する者がいる。
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