未来創作
みちるのブログ
2013年1月15日火曜日
足は短い
足は短い
長くはならない
あきらめなさいと
先輩が言う
胴より足は短い
僕は背の低い少年より
短い足を付けている
曇り空の凧を見上げて
あの足より短い と
嘆かわしくなる
2013年1月14日月曜日
道を湿らせて
川沿いの道を歩いた
本社の秘書たちは思い思いに
愛しい人を待っていた
社長は人間が
空き缶をかぶったようなものだ
空き缶の中の
剥かれたトマトは
震えながら恋人の体内に入ることを
夢みている
見知らぬ発情した男と
川沿いですれ違い様にガキーンと視線がぶつかった女は
カワラヒワの背中の水はけに
嫉妬しているが
互いに欲する男の前では
すぐさましっとりする
そして
川沿いの乾いた道を
湿らせて帰っていく
2013年1月13日日曜日
寂しい私を
沈んだ太陽を追いかけて
遠くの空に鳥の影が消えていきました
きょうの空は
いつかみたあの空とつながっていて
寂しい私を手招きします
過去は私の味方でしょうか
密かに隠しておくつもりでいて
そのことさえ忘れてしまった宝物が
今もどこかで光り
うずいているのでしょうか
2013年1月12日土曜日
僕が憶えていることを
僕が憶えていることを
母は憶えていない
母が忘れた辛いことだけ
僕も忘れてしまおう
父がやっていたことを
僕は斜めにみていた
僕がやったことを
父はいつもまっすぐみていた
愛する人の笑顔を
僕は大切にしようとした
僕を愛する人は
僕のすべてを守ろうとした
2013年1月11日金曜日
ひとりぼっちの命
ひとり
ひと ひとり
ひとりで生まれ
ひとりで死んでゆく
生きている時に
抱擁し合ったあのひとも
ひとりで死んでゆく
命はこの世の中で徘徊しているだけ
だれも死の門に入ることはできない
その門の向こうには
死が蹲って夢を見ている
ひとはいない
命も入ることはできない
私は生きて
いつか死ぬ
だが死の門に入るのは
私の中の死の部分だけ
それは影のようなもの
体は燃やされ土になっても
命は残り彷徨
死だけが他人事だ
いつか出会った他の命に
すまないと泣き崩れて詫びたくても
昔の記憶を命は辿れないから
もうなかったことにされてしまう
死は身じろぎもしない
私が寝返りをうっているあいだも
息さえしていないのだから
2013年1月10日木曜日
中身は何が入っているの?
中身は何が入っているの
?
からから音がするのはどうして
?
難しい事ばっかりいっていないで
ライオンの首に縄をつけてきなさい
雪が降る日にライオンは
気が狂って暴れだし
こんなはずじゃなかったと嘆いてる
ニトリにいって
ニトリにいって
ヘチマを買った
井戸端会議で
にんまり笑う
変な態度の
言い訳は
ノリマキの中
具としていれて
チキンも足して
菜の花もいれ
おがくず入れて
こんちくしょう
2013年1月9日水曜日
なよなよするあなたを
なよなよするあなたを
骨が支えている
皮膚の表面は熱を帯びて
水気を空中に放っている
怒った時のあなたのは
いつもの唄をうたう
白い喉に触ると
モーターの振動が伝ってくる
今夜あなたは
すべての衣服を脱ぎ捨てたあと
お湯に浸かり
自分の肌を撫でて水の玉を弾く
なりふりかまわず
オトナのいやらしさを攻撃し
氷のように熱くなり溶けてゆく
2013年1月8日火曜日
何ももっていないその子
何ももっていないその子に敵わない
その子は何ももっていないから
もっているぼくには敵わない
何ももっていないその子は
何も捨てない
そして何ももとうとしない
何かをもっているぼくには
その子のことが分からない
何故もたないのか分からない
もっているぼくはまだ何かもとうとして
何ももっていないその子を
もの欲しげに見ている
2013年1月7日月曜日
ひとりじゃない
涙に頬がぬれて
眼を覚ますと
私は毛布に包まって
明るい日差しの中にいた
どんな夢を見ていたのだろう
懐かしい人
やさしい微笑み
大きく手を振って どこへ
?
取り残されたの 私は
?
置いていかれたの ここに
?
小鳥の声がして
子どもが駆け回る声
穏やかな季節の風に
ひとりじゃないと気づいてく
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