11月
どこかから賛美歌が風に乗って
大きな池のある公園を通り過ぎ
駅前の鳩のいるベンチの前の小さな広場に
聴こえてきたような気がしたその日
その穏やかな日の午後2時
そのひとは黄色いラインの電車に乗って
心の闇を見せに行く
白く入り組んだ瀟洒な建物の
まあるい噴水の音が聞こえそうな
植え込みの向こうの窓に
ちらりとそのひとの姿を見ることができる
午後3時
何人かと面談をして
会釈を繰り返しているうちに
心の目はおでこからはみ出して
でんでん虫のツノのように頭上に突き出していた
買ったばかりの白いスマートフォンで
電話をしなくては
私がここにいることを確かめなくては
そうして
白い糸にがんじがらめに巻かれた自分の様子を
デジタルカメラで撮影して
タイムラインに上げなくては
日暮れのオレンジ色の太陽が
ビルの向こうに落ちる前に
闇を消毒して
目を閉じてもなにも踏んでしまわないように
下の方を片付けよう
手を揉んで
リズムを掴む
心臓の鼓動と呼吸と瞬きと
言葉の早さを合わせるのだ