2012年6月5日火曜日

苦しんでいる人に

「もうだめかもしれません」
と心のなかでつぶやいて
絶望を抱えて苦しんでいるね

だれが
「もうだめかもしれません」って
言っているの?

その人に
あなたから
話しかけてあげて!

「あなたはそう思っているかもしれないけれど
私はそう思わないよ」って

だって
苦しんでいる人がいたら
いたわらなくちゃね

お互い様だから
あなたが苦しい時には
私がそばに居て
あなたをいたわるから
私が苦しい時には
あなたがそばに居てね
詩がからっ風になって吹いているが
誰も気に留めていない

その詩は私の詩なので
私だけが気にしている

私は分かりにくい生き方をしている
だから私が書く詩は
時々からっ風になってしまう

好きな女の人にまとわりついた布は
ほどけそうだが
詩の謎はこんがらがるばかりだ

2012年6月4日月曜日

メロンパンは私に

私の目の前にあったはずの食べかけのメロンパンが
消えている
誰が食べたのだろう

死にたい と
検索窓に打ち込んでから
読みたいものを探し始めたら
死ぬ前の準備 とか 嫁に殺された俺がさっそうと登場 とか
変なものがたくさん出てきた
しばらく探しまわっていると
あるカウンセラーのページに行き着いた

その文章には
見たくない言葉がなく
ページをめくると挨拶ができなかった少年の話が紹介されていた
少年はなぜ挨拶ができなかったのか
そこにはこう書いてあった

「人に挨拶をすることと、死んでいく父親に挨拶していないこととが、重なり合っていたんですね。つまり、さよならを言わない限り父は、自分の中に生き続けていることになるわけです。
 父に挨拶をし終っていないんだから、他人に挨拶なんかできっこない。挨拶をしてしまうと、父が本当に死んでしまうから、遠くに行ってしまうから・・・。
 でも、こうした気持ちや感情は、頭の中で一瞬の無意識のうちに作られてしまうことなんです」


私は立ち上がって数歩歩き
訳もなく壁にかかっている鏡をのぞきこんだ

くちびるの左下に
メロンパンのカケラがついていた
メロンパンは
やはり自分が食べたのだ

2012年6月3日日曜日

負担なく帰りたい

連れてくるのかな
猫も
連れてくるのかな
ふたり
ナナとビスケット

あのひと

連れてくるのかな
連れられてくるのかな

ライラックの咲く坂道
バッグ振り回して
登ってくるのかな

猫の鳴き声聴こえたら
あのひとの
泣き声と
間違ってしまいそう

青空に雲は流れ
ビルとビルの間に
この季節らしい風が吹く

そろそろ
自分の部屋に帰ろうかな
あのひととの待ち合わせは
6年前

もう地名も番地も変わってしまった
あっ
そういえば
自分の部屋も
今は新しい駅で降りなければ
負担なく帰ることは出来ないのだ

2012年6月2日土曜日

縄をかけてくる人

都合の悪いことは忘れてしまっていたので
心は重たいままだった

都合のいいことは小脇に抱えていたが
賞味期限が切れてねっとりとしている

太陽消毒を試みるが
効いているかどうか判断する者が居ない

私は
電車の駅に住んでいるが
きょうも発車ベルの音で目覚める

(電車はいつも立ち去ってばかりなので
ここは仮の宿なのだろう)

とところで私には添い寝する人がいないが
私の首に縄をかけてくる人はいる
冷たかった風ガタンゴトンとうるさかっった電車の音
錆とガソリンの漏れる匂いがした軽自動車
遠い
見知らぬ湖に向かって走った道
まだ何も知らない男と女
道を覆う木々と葉っぱ

2012年6月1日金曜日

私は走って

私は走って乗っちゃう
あなたはドタドタ走らなければならない

クールな吟遊詩人は
次々乗り物をとっかえひっかえ
夜昼なく駆けめぐり
この地球の縄張りと罠を探索する
レアアースより必要なもの
人の心より価値あるものがある  と

私は走って乗っちゃう
あなたはドタドタ走らなければならない

遊び飽きた 湘南女は
ボランティアに活路を見つけて
今度は国境を股にかけて井戸端会議
夜にダンスを教え
酔いつぶれて星を見ながら
眠れない夜をあわれに眠っている

私は走って乗っちゃう
あなたはドタドタ走らなければならない

私は走って告白しちゃう
あなたはドタドタ走って答えなければならない

2012年5月31日木曜日

林間学校の美術館

そこに美しいものがあったけど
君がいたから
美しいものは確かに僕たちをとりまいていたけど
君がいたから
僕は君にばかり気を取られていた
美しいものはずっと前から
そこにあったけど
君は今しか僕の目の前のそこにいないので
僕も今しか君に近づけない気がしたので
美しいものは単なる背景として
君と僕との舞台になってもらって
僕たちはそこから立ち去ることにした
景色は蝶になって頭上を旋回した
風が魔法の粉をそのシーンに振り掛けた

2012年5月30日水曜日

故郷の星の道へ

ペンの先からインクが出て
紙に文字が現れる
その文字は
昨日の夜空の星座からやってきたのだ

星座は
いま
欧州辺りの上空にあり
地上に光を落としなから
震えているだろう

だか現れた文字は
ブラックホールと似ていて
私は安心していることができない

その黒い穴に
吸い込まれたら
どうなってしまうのだろうか
(反対側に抜ける通路はあるのだろうか)

インクケースは
無数の宇宙を濃縮してその重さに耐えている
私は自転車の籠に
バッグを放り入れて
故郷の道へと漕ぎ進む
故郷の星の道へと

2012年5月29日火曜日

もうすぐ殻を

それは夢なのね
古びた夢なのね

新しい夢と
交換しないのね

新しい夢が
見つからないのね

古びた人になったのね
もうすぐ殻を
捨てるのね