2012年5月23日水曜日

よろこびをきいて!

からだのなかに
よろこびがはいりきらない
あふれそうになったから
かけだして
とびはねた
だれかにつたえたいけど
しってるひとがそばにいないから
なおさら
わいてくるよろこびがふえるばかりで
いきおいだけで
かけだして
とびはねて
さけんだ

ひとからみたら
へんなひとだ
でも
じぶんでは
どうしようもない
だってこんなに
うれしいから
いままででいちばん
きぶんがいいから

よろこんでいる
りゆうだって
ひとからみたら
つまらないことかもしれない

ああ
そんなひとはかわいそうだ

このきもちを
みらいのじぶんに
わけてあげたいよ
こんなにさいこうのことが
むかしおこったんだって
しらせてあげたい
きっとこれからも
なんかいも おこるとおもうよと
おしえてあげたい

おせっかいかな
ねぇ
みらいのじぶんさん
どうおもう?

2012年5月22日火曜日

すばらしいすみか

わるいひとが
もえている
くらいむらさきいろの
ほのおにつつまれて
たまに
しゅわしゅわ
ぱちぱち  と
おとをたてている

わるいひとは
もう
こえをだして
うまいことをいうことができない
なにもいうことができないから
だまって
もえて
はいになっていっている

わるいひとのほのおのまわりには
だれもあつまらない
きゃんぷふぁいやーや
かじかんだてをあたためるたきびとは
ちがうから

もえているわるいひとのひを
けそうとするひとはいない
わるいひとは
どくをふくんでいるので
ねつでやきつかされなくてはならない

このよには
もえないわるいひとも
かずおおくいる
わるいひとたちが
すくらむをくんで
わるいひとのしろを
まもり
みはりをしているから
だから
わるいひとは
もえるすんぜんに
なかまに
けしとめられることがよくおこる

ところが
さいきん
わるいひとのしろのしゅうへんのきおんがあがり
かんそうしてきて
いよいよ
いっきに
しぜんはっかするのではないか
ということがささやかれじめた

もし
わるいひとのしろが
しぜんはっかして
わるいひとがいっきにもえたら
みんなは
どうしたらいいのだろう

わたしは
しんぱいいらないとおもっている
あなたはどうですか
いっしょにはなしあって
いいすみかをつくりましょう
きれいなほのおが
ほしをこがすほどもえたつ
すばらしいばしょを

2012年5月21日月曜日

虫の鳴き声が止んで
鳥のさえずりが聞こえてきたら
ここは
もうすぐ朝になる
微かに塩辛い朝の風が吹いて来るのを
誰かがおくれ毛で感じるよ

どこにいても
人はいつかあった朝の記憶を
再生することができるから

澄んだ空気の森や
木の枝や空を映す麗しい水面がなくても
まぶたを閉じれば
都会の喧騒からだって
瞬間移動できる

あなたは朝なのに
夜のような暗がりに心を置いてきている

もしそのことに気がついたら
あしたは
心を持って
朝にやっておいで

この詩がその道になる
あなたの知らない一人の詩人が
あなたを愛している

2012年5月20日日曜日

詩があなたを

詩の始まりは東にあり
終わりは西にある
行は
北から南に伸びている

人は南の果てに行き着くと最北へ飛び
次の行へと暗黙のうちに導かれている

いまあなたがどこにいて
どこに向けて旅を始めるかは
あなたの自由だ

詩があなたを追いかけて
出会おうとしているかもしれない

2012年5月19日土曜日

椅子が知っている

その頃
椅子はただ椅子だった

小学校の椅子
駅のホームの椅子
野球場の椅子
自分の部屋の椅子
家のソファー
教会の長椅子
公園のベンチ
マクドナルドの椅子
縁側のロッキングチェア

どの椅子もただ
私の前で
椅子であるだけだった

私は
座り心地などは気に留めずに
ただ無心に椅子に座っていた

いま
思い出すと
いろんな座り心地があった
大人になってから
座り心地を気にするようになって
おのずと自分の心地のいい居場所に向かった

ものの価値やディティールが分かるようになったのだろうか
いや
ものの価値やディティールが分からなくなったのだ

心地のいいクッションに邪魔されて
木の硬さも自分の罪深い重さも

2012年5月18日金曜日

片付けられないものがある

どうして終わりにしたのか思い出せない
夢のお城
夢の街
いつまでも作って
いたかった
眺めて手にして
作って
住んで
いたかった

家族がもうやめなさいと言った
ご飯だから
箱にしまいなさい と

だが
私はしまわなかった
そのとき
終わりにしたのか
思い出せない
誰かが片付けてしまったのだろうか

いま
作ったものは
どこにあるのだろう
引越し荷物のダンボールを片付けながら
私は
片付けられないものがあることを
知っている

2012年5月17日木曜日

お弁当は好きですか

中学生のころ
学校ではお弁当を持って来ることになっていた

食べたくなかったので
持たされたお弁当は
毎日
あまり箸をつけずに持ち帰った
まずいわけではなく
その味は
いつで当たり前に
そばにあったから

食べなかったのは
気になることがあったから

家に帰ると
私は自分の部屋にこもって
考えごとのつづきをした
何を考えていたのか
言葉にすることはできない
そして
いつの間にか夜になる

お腹が空いた私は
何食わぬ顔をして
居間に行き
ご飯を食べた
いつもの味のご飯を

食べなかったお弁当の分も
たぶん食べた
成長するために
食べた

今は
何のために
お弁当を買って来て
食べているのか
分からない

2012年5月16日水曜日

引っ越し

深くしぶとく根を張ってしまわないうちに
自分で引っこ抜け
自分を

大地の
囚われの身になるにはまだ早い
風を捕まえてどこへでも飛んで行け
戻りたくなったら
戻ればいいのだから

昨日の荷物を解く前に
きょうも引っ越して行け

2012年5月15日火曜日

〈タイトルなんかない〉

錆びた缶からだけど
カランコロンと
いい音を出すね

あなたはコロンを素肌に叩いて
いい音を出した

私は
錆びついた感覚器官を
どうしたらいいかな

油をさして
ジタバタ転げ回ったら
丘の上の夕日の沈む海が見られるかな

2012年5月14日月曜日

兎と

兎を追いかける
兎を捕まえるために

兎を捕まえると
私に新たな課題がうまれる
兎をどうするかという
進行形の課題だ

兎を撫でる
兎を撫でると
兎が落ち着きなく体をよじる
私は兎と一体になって
自然に動きたいと思う

兎は普段見せない様子を見せる
私は驚きながら
もっと他のことが起こらないか期待する
兎は兎の匂いを発する
私は兎の匂いに包まれながら
先に進むか後退りするかを考える

兎は元気に細かく動く
私はうでに力を込めて
兎の体制を変えようとする
兎はなにか別のことを考えている
私は兎の思考の中で泳ぎまわる

兎は疲れを知らない
私はさらに泳ぎ続ける
兎の満足はいつまでもきりなく満たされない
私は兎に殺されてしまうのか

兎は無垢な様子で白い毛に包まれている
私もまた
白い毛に包まれてしまう

それのため
兎をもっと外から見ることが出来ない
溺死寸前のまま
私はゆるやかに流れていく
いつの間にか自然に出来た
沼の水面を