2011年12月28日水曜日

絶望の谷には何も落ちていない

絶望の谷には何も落ちていない
孤独の影さえ見ることができない
日は暮れかかり
どんよりと冷たく湿った空気が忍び寄ってくる
カビのにおいが立ちこめて
逃れるすべがないことが知らさる

体の向きを変えれば
少しは景色が変わるが
もう前に見た景色は忘れている

いつからここにいたのか
迷い込んだのか追い立てられたのかも分からない

心臓の鼓動と息の音はしているが
その数を数えることはできない
星は出ているのだろうか
ここは屋外のようだが
なぜ空が見えないのだろう

立ち尽くしているより
歩いていた方がいいのだろうか
靴紐がほどけているようだ

耳を澄ますと
静けさに圧倒されそうになる
何という轟音だろう
体の中を甲高いエンジン音をうならせて
黒い輸送機が飛行していく
戦地から帰るのだろうか

目を閉じても
何も変わらないのは何故だ

小学校の授業を抜け出して
掛けていった裏庭の花壇のミツバチが
この世界を想像しているのだろうか

誰かが誰かを呼ぶ声が
上空を通過する
私の名前を呼ぶ人は居ないのか

何らかの変換装置が作動して
私には届かないだけなのか

2011年12月27日火曜日

暮れかけた商店街の道を

暮れかけた商店街の道を
下を向いて歩いていたら
そのこの横顔が
逆光の中で
いきなり光ったんだ

一瞬のことだったけど
シルエットは形のいい鼻の輪郭と
ふっくら盛り上がった唇を浮かび上がらせた
小さな光の欠片となった前歯は
夜空の星になろうとして飛んでいった

暮れかけた商店街は
落ち葉の雰囲気もして
足音にカサカサという音が混ざる
あの落ち葉は何日かまえに
わたしの肩をトンと叩いて落下した落ち葉だろう
商店街に人は多くも少なくもなく
冬のやや冷たい風が吹いている

そのこの額は
頭に優しい髪を湛え
体はそのこをいろんなところに連れ回してきたが
たぶん仲良くやっているのだろう
不穏さはなく
心地よさが湧き出ていた
笑顔はその一つの表現だろう

下を向いて歩くのはやめたいと
ずっと願ってきたが
いつのまにかすっかり慣れてしまい
目には動く灰色の道しか見えなかった
方向さえ決めれてやれば進んで行く道に
特別な思いもかけず
ただ単調になりかけていた

だかあのこの横顔が
逆光の中で
光ったとき
カラー写真が心に焼き付けられたんだ

薄暗い商店街の道は
私の心を映して
あかんべーをして
灰色の舌を晒しているが
その上を
慌ただしく人は通りすぎ
あのこは
いつまでも止まっている

動くことを私の心が許さないからだろう
だが間もなくその壁は破られ
動き出すだろう


これはまだ願いにすぎないのだが
薄暗い商店街のそのこの横顔が発した肉弾は
私の弱った心を間もなく打ち砕き
景色は動き
輝き出すにちがいない

それを見てみたい
岩陰から
こっそりと
できれば
だんだん堂々と

2011年12月26日月曜日

何度も経験している君に

何度も経験している君にしてみれば
それは形式的なことに過ぎず
見ているだけでも飽き飽きしているのだろうが
まだ経験していない私にとって
それはとても刺激的でときめくような出来事なのだ
だから口を出さず見守っていてくれないか
答えや本質を知っているからって
何度も経験しているからって
うまくできるからって
偉そうにできることではない
初めてやるときの気分を
君は思い出せるか
君はYesというかもしれないが
それなんだっていうのだ
私はいま
初めてそれを体験することで
こころが
満たされている
うれしいのか辛いのかさえ分からない
なにをどうやったらいいかは
他人からの受け売りだ
だけど
君のほうがオリジナリティがあるのだろうか
私はそうは思わない
私はうまくできないかもしれない
うまくできるかもしれない
またやりたいとおもうかもしれない
それが形式的なことでも
何度も繰り返しても
いつも飽きもしないで
次を待とうとするかもしれない
そんな私を
君は笑うだろう
でも
そんな君を
私は笑いはしない
私には
そんな暇はないのだ




2011年12月25日日曜日

なにかありそう気分

よくないことがないように
ずっとしんぱいしてします
しんぱいしすぎていがいたむ
おまけにずつうがしてきたよ
ねつもしょうしょうあるみたい
よくないことがないように
やはりしんぱいしています

なにかいいことありそうで
とにかくそとにとびだした
きぶんそうかいスキップし
にだんとばしでかいだんを
あがったところはうでのなか
やさしいあなたにだかれます
とてもいいことありそうで

2011年12月24日土曜日

こんにちは さようなら

こんにちは

マツザキヨシユキです。
どうぞよろしくお願いします。

きっと
あしたも
マツザキヨシユキです
やはり
どうぞよろしくお願いします。

日本という国は
あなたがいるので
日本は素敵な国です。

あさっても
マツザキヨシユキです
日本にいませんが
どうぞよろしくお願いします。

パソコンのラジオからは
日本の歌と中国の歌が
ランダムに流れてきます
中国の歌の言葉で一番好きなのは
つーちー です
あっ いままた出てきました

つーちー は
日本語では「自分」という意味です

あなたは
誰ですか
どこにいるのか分かりませんが
どうぞよろしくお願いします。

あっ 曲が変わりました
とくにいいたいことはないのです。
周りのみんなは
メリークリスマス、バイバイといって
立ち去っていきます

それではさようなら。
さようならは
仮定法の言葉ですか
よくわかりません
それではさようなら、
自分。

2011年12月23日金曜日

待たれている人

いつものところで
待っている

いつまで待って
いるのかな

来たら待つのを
やめるかな

来ないからこそ
待っている?

待たれていること
知らないで

2011年12月22日木曜日

愛しているといえなくなった日 12月

愛しているといえなくなった日に
あきらめ顔で
気取ってみる

誰も見ていないのに
誰かに見られているよう

あなたではない誰かが
あなたに報告してくれそうで

愛しているといえなくなった日に
周りに流されなかった
過去の一シーンを繰り返し思い描く

あなたはそこに居なかったけれど
いつかあなたと出会う日の
準備をしていたあの日

愛しているといえなくなったのには
どんな訳があるの?
誰も訊いてくることはないけれど
誰かがあなたに報告してくれそうで
何もない半端な高さの空を
何も見えない風が吹いてゆくのを
感じるふりをして
耽っている

2011年12月21日水曜日

大丈夫

鳥の巣に
鳥がいて
家には
人が住んでする

出かけていっては
帰ってくる

帰ってきては
また 出かける

引っ越し無用
鳥も人も
我が家があれば
大丈夫

2011年12月20日火曜日

意味があるの?

これ、ほしいの?
持っていたいの?
好きなの?

と訊かれても
意味がわからなかった

その意味が
今は分かるようになり
人に
尋ねることさえしてしまう

これ、いらないの?
欲しくないの?
じゃあ
あげないよ

意味が分かるようになって
分からないことが
増えていった

はおま?
にーやお?
るーぐおにーしゃん
ばーぅおーそんげいにー

答えを
知らず知らず予想してしてしまうことも
うまくやるコツだと
教えられ

言葉の籠を背おって
切り立った霧の崖に登る

ここから
飛び降りるときの話

言葉の意味と私は
どちらが先に落ちていくだろうか

答えは分かりきっている

だんらん
・・・・・
おふこーす
・・・・・

ちゃお

2011年12月19日月曜日

動物園

★ひとつめ

ネコが歩く
熊のあとを

鳥が
羽ばたく
ネコの上で

あなたが歩く
ネコの横を

わたしは
見てる
歩くの やめて

★ふたつめ

猿の山の広場に
いるのは
黄色い木馬と
赤い木馬
緑の木馬

猿の母さん
子どもを
木馬に乗せるかな
あっ
子どもは
ひとり勝手に飛び乗った
木馬がゆらり
重みで揺れた

猿の母さん
楽しそう

木馬は揺れる
お猿を乗せて

何を考えてるの?
揺れながら
木馬は

★三ツ目(小僧)


三つ目は、いつの間にかそばにいる「三ツ目小僧」のお話。


私には
生まれ時から
目が三つある

おでこにある目は やっかいで
髪の毛が 入っていつもかゆくなる

だけど
どの目も大切な目
シャンプーの時は
全部つぶらなければならない
だけどいつも
右の目を閉じるのを忘れて
痛い思いをする

左の目は
一番視力がよくて
天文学者がやっと発見した星だって
あたりまえに見える

右目は普通の目
ふつうの人間の子と同じ

おでこの目は
何が見えると思う

あなたの顔が見えるんだよ
ここに居ないのに


  おまけ
  三ツ目小僧は女の子も居ます。小僧ってよくないと思う。
  パンダより珍しいけど、動物ではないので動物園には居ませんが、見に行くことはあります。