2011年5月10日火曜日

月模様のドレス

8つの会場を
出たり入ったりしている
あなたは
そのたびごとに
服を着替える

さっきから
もう何度繰り返しているだろう
これは
夜を徹して行われているのだろうか

もう汗びっしょりだ
控え室のタオルで汗を拭うが
また慌ただしく
出て行く

会場では
それぞれ別々の会合が催されている
たとえば
花と音楽に包まれた陽気なお別れ会であったり
新婦が欠席している結婚披露宴であったり
平均年齢82歳の老人会の学芸会であったり
麻酔医7人のための生前葬であったり
仲間同士のただの飲み会であったり…だ

ひとつの会がおわると
また別の会の準備がなされ
やがて出席者がやってきて会が始まる
稀に「ワケあり」の会もあり
そんなとき
あなたはいつも 
緊張でカチカチになって入っていく

そんなことを繰り返しているうちに
どうも
もう数年の月日が流れてしまったらしい

あなたは
私に目配せをして
パーティーに参加するように促した
私がためらっていると
あなたはイルカになって
海の中を泳ぎ回り
高く飛び上がった

次の瞬間
イルカはトンビになり
トンビは空中で激しく輪をかいた

トンビは地面に落下して
あなたにもどり
私の手をとって
話しかけてきた

楽しいでしょ!

驚いた私は

もう終わりにしない?
お家に帰ろう

と訴えた
それをどこ吹く風といった感じで
あしらったあなたは
だれかの首にしがみついて
もう踊っている
濃厚な接吻などしながら

月の模様のドレスを腰に絡ませている

私は水

人生を楽しむの?
うまく人付き合いして

人気者になるの
友だちも恋人もスペアはすぐ見つかるよ

あなたには向いている
私には向いていない

でも一緒にご飯を食べよう
あなたは焼酎
私は水

2011年5月9日月曜日

五月の私 その1

私の命は特別に選ばれた命なのだろうか

五月

山の下の方で鮮やかに輝きはじめた緑の木々の上に
暗い雲が広がり
湿った風が強まってくる
こんなときには決まって
中腹で霙(みぞれ)が降っているのだ

私は選ばれた特別の人間なのだと
私の中の何者かが記憶している
だが私の心はそう思ってはいない

あなたはどうだろうか

小さなボロ車で山頂から一気に駆けおりる

2011年5月8日日曜日

リゾートの夜

壁を隔てて聞こえてくるのは
ウシガエルの声かと思っていたが
違うようだ

隣に寝ている彼女は
裸のままなのに
眼を閉じてどこかに出かけていってしまった

窓を開けると
暗い夜から
森の香りと一緒に
せせらぎの音が入ってくる

そこに
海辺からのメールが紛れて届く

メールも
一糸纏わぬ裸だった

2011年5月7日土曜日

天使のBIRTHDAY

二股どころではない
十股だ
いや二十股だ
いやいや百股だ

彼女の魅力は
たくさん
股をかけても
減らない

むしろ
股をかければかけるほど
加算されていく感さえある

彼女はいつも
自分のことで
忙しい

美味しい物を食べては
太らないか気にする
愛しい人に会っては
洋服をおねだりする
約束しては
遅れて登場する

ハードなスケジュールが
彼女のスレンダーな体に
磨きをかけ
過密すぎるイベントが
睡眠時間を奪い
様々な悩みが
様々な表情を作る

いつも
いつも
彼女はいそがしく
考えることが追いつかない
感じるままにやっていく

他人のことを中途半端に慮らず
ただ驚かせ喜ばせようと努力をおしまない

そんな彼女に
転機がやってきた

彼女はいままでの自分をあっさり脱ぎ捨て
新しい服に着替えた

初めての肌触り
天使の羽で織られた
それは
夏のユニクロのワンピース

地球日記より その1

2011年5月6日
地球

どんとこい


2011年5月7日
地球

スーと行け


2011年5月8日
地球

蹴り飛ばした


2011年5月9日
地球

瓶を集めます

2011年5月6日金曜日

いつのまにか

いつのまにか『命のバトン』を渡されていた

いつのまにか自分の命を守るプログラムを手に入れた

いつのまにか日が傾いてきょうも夕暮れがやったきた

いつのまにか知り合った人がどこかにいってしまった

いつのまにか大きな雲が形を変えて彼方へ消え去った

いつのまにか電話がかかってこない日々がつづいていた

いつのまにか体が古くなって皮膚が乾燥した

いつのまにか側で蛙の声が聴こえなくなっていた

いつのまにか愛する人のことを忘れようとしていた

いつのまにか遠くから小さな何かの音が鳴り続けるのが聴こえていた

いつのまにか寂しい気持ちが心に満ちていた

いつのまにか生きていることが自分のことであると気がついた

いつのまにかあの頃のコロッケが食べたくなった

いつのまにか「今」が立ち止まってこちらの様子を窺っていた

いつのまにか外出の時間が近づいてきた

いつのまにかカーテンの向こうの窓の外で星が瞬きはじめた

そして

いつのまにか私はいなくなった

2011年5月5日木曜日

ひやす

ひやして
見る

湯気が立たない状態で
見てみる

それが大事

ついでに
大事も冷やす

すると
ただの 事 になる

しみじみして

しみじみしてね

しみじみしてね

しみじみと
しみじみしてね

しみじみして
しみじみしてね


しみじみ
しみじみ
しみじみしてね

しみじみと
しみじみ
しみじみしてね

しみいる
しじま
しみじみ
すすいでね

恨みを持って

恨んでいるね

恨んでいるんだね


恨みを持っているんだね

恨みを持って恨んでいるんだね


恨んでね

恨みを持って恨んでね

恨んで恨みを持って恨んでね

恨んで恨んで

売られた喧嘩は
買わんでね