2010年10月23日土曜日

とてもいいわ

(とてもいいわ

そう言われて
舞い上がった

(とても素敵

あっ、また、ほめられた
ナマでこう言われるのはいい

短いヒトコトなのに
地球だって持ち上がりそうだ

(なんでもできるね

そんなことないけど
そんな気さえしてくる

(ひとりでなんでもできるよ
(あなたひとりで

2010年10月22日金曜日

花びら

小峰が大事にしている花
ベランダで咲いている綺麗な花
いつだったかてんとう虫が茎を登っていった
きっとその細い足に
水の流れを感じていたのだろう

小峰は別の流れを感じていた
花びらを染める鮮やかな色の流れだ
茎を伝わるうちに
見る見る変化していくその色は
花托に到達すると同時に
その花びらの色となる

そんなことは理科の時間には
習わなかったけど
小峰はそう信じていた

何かを思い
合わせて握られた手のひらの中で
息づいていた
小峰の思い

しっとりと熱い
愛のような 
愛でない なにかのような

2010年10月21日木曜日

不足

きょうは指たちがやる気ない
キーボードを叩いても
愚痴ばかりしか出てこない
ビタミンが不足しているのか

月の光に訊いてみたら
反対に叱られた

何をいってるの!
ビタミンじゃないわ
愛情が欠乏しているのよ
愛錠で補いなさい

ところで
それがどこで売っているのか
月の光も
どこ吹く風で
教えてくれない

誰に電話したら
教えてくれるのかな

2010年10月20日水曜日

帰宅

帰り道の不真面目な月
きょうはその位置で合っているのか

腕を振って歩くことが
力をくれる
車の音が遠ざかる
家は暖かく
何気なく迎えてくれるだろう
テレビが笑わせてくれたり

すぐ脇を
追い越す自転車
倒れろ と念力かける

きょうは つかれた
はりきりすぎた

一歩ごとに近づくドア

一歩ごとに遠のく
やさしい友

2010年10月19日火曜日

おっとこれは泥のついた一万円札か!

おっとこれは泥のついた一万円札か!
この封筒の金はつかわずにおこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
この祝儀袋の三万円もつかわずにおこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
この通帳の10万円はつかわずにおこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
このお守りは大事にとっておこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
この掛け軸も大事にとっておこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
この本も大事にとっておこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
このグリーティングカードも大事にとっておこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
この写真も大事にとっておこう
おっとこれも泥のついた一万円札か!
そうおもってこれも大事にしておこう
おっとこれは泥のついた一万円札か!
いいやこれは泥のついていない一万円札だ
(あってよかった。)

2010年10月18日月曜日

塀の向こう

ぴにょーん ぴにょーん
おまちかね
またまたやってまいりました
ぴにょーん

トランポリンは良い道具です
塀の向こうがよく見える

新しい塀 古い塀
垣根も 白壁も 砂壁も
勢いつけて ひとっ跳びです
ぴにょーん

自分の体の重さだけを使って
気になるあのひとの 塀の向こう
プライバシーだって
勝手気ままにのぞき見します

それはダメダメ
イケないこと
なんて言わないで

深いわけがあるのですから
それは人を助けるためなのですから

ぴにょーん と跳ぶと
塀の向こう 芝生が見える
家が見える
中では君が倒れている

わたしは
ぴにょーん
それを発見して
救急車を呼ぶ
病院に連れて行く

ピーポー ピーポー
ピニョン ピニョン
ピーポー ピーポー
おまちかね
またまたやってまいります
お邪魔でしょうか
塀をこえたら
よくないですか

2010年10月17日日曜日

無関係な自分

睡眠障害になりたくなかったので
気にしないことにした
朝と夜がどう過ぎようと
眠気や気だるさがいつ襲って来ようと
僕とは無関係
ということにした

毎日同じ夢も見るし
さまざまなバリエーションの怖い夢も見るので
それに
起きていても厄介な妄想や気分の抑揚が激しいので
僕は無関係
ということにした

僕のことは僕には無関係
僕は日記にそう記し
関係ない僕に時々日記を書かせた

詩を担当している僕は
僕を現実の社会に連れ出そうとする
しかし無関係な僕はそれを夢の中のこととして始末しようとする
僕は怒り僕を問いただす
しかし僕は答えず
反対に質問をしてくるありさま
僕は途方に暮れてあきらめる

僕は何を思い何をしようとしているのか
僕はだれに頼まれて僕を運営しているのか

そうして
疑問は置き去りにして
時間が流れたり逆流したりして転がっていく

時計が転がっているのではなく
中身の針やら数字やらがまわっているだけなのだ
きっとそうなのだ

推敲しながら

このブログは公開されている日記のようなものです。毎日書いた詩は、しばらくすると読み返して推敲します。なかなか思うようにいかないものも少なくありません。
黒糖ジンジャーソーダ

2010年10月16日土曜日

三姉妹

一番上のお姉さんが一番美人
二番目のお姉さんが一番かわいい
三番目のわたしは個性的でチャーミング

一番上のお姉さんはしっとりした名前
二番目のお姉さんは弾けそうな名前
三番目のわたしは個性的な名前

一番上のお姉さんは英語が上手
二番目のお姉さんは料理が上手
三番目のわたしは踊りが上手

一番上のお姉さんはほっそりしてる
二番目のお姉さんはぽっちゃりしてる
三番目のわたしはふつうの体系

一番上のお姉さんはハードな生き方
二番目のお姉さんは平凡生き方
三番目のわたしは思いつきで生きる

一番上のお姉さんは結婚に失敗
二番目のお姉さんはもうすぐ結婚
三番目のわたしはもうすぐ出産

一番上のお姉さんは夢を追う
二番目のお姉さんは現実を追う
三番目のわたしは夢見て生きる

一番上のお姉さんは二番目をかばう
二番目のお姉さんは三番目をかばう
三番目のわたしは一番上をかばう

一番上のお姉さんは6歳年上
二番目のお姉さんは4歳年上
三番目のわたしはいつも年下

一番上のお姉さんが夕日を見てる
二番目のお姉さんは日向ぼっこ
三番目のわたしは月食に祈る

「みんな しあわせ
 いつまでも
 みんな 
 別々
 いつまでも」

2010年10月15日金曜日

いつも聴こえていた

耳を澄ますと何が聴こえる?

雑多な日常の音たちの向こうに
いつも聴こえているその音
きっと
巡り合えるだろう

音は鳴って
語りかけている
音は
耳を傾ける者のためにある

しかし
音は
操作することはできない

音は 
救命ロープみたいだ

底なしの闇に落ちても
いつの間にか地上にいるのは
そのせいだ

今夜

耳を傾けてみないか
息を 殺して
しじまのような呼吸に

音は
近づいてくるか
遠ざかっているのか
確かめて