2012年12月18日火曜日

寒い街並みの向こうに

寒い街並みの向こうに海がある
風にヨットがきしむ
夏の青い海がある

窓辺に立って
私は背後に
ポットのお湯が滾る音を聞いている

山の方角に日が落ちる
明日の朝は爽やかに晴れる気がして

2012年12月17日月曜日

曲がりかどの向こうで

寝入りばなの目覚め際
小鳥のさえずりを聴いたような気がして
陽だまりの中にこころを移してみると
そこに
やはりあなたが後ろ向きで座っていた

胸騒ぎがして近寄り覗き込んでみると
なんのことはない
あなたは独り遊びに興じていて
他人の心配などはどこ吹く風

その独り遊びは
バリアで自分を覆い
外の声は聴こえないらしい

なにか寂しい事件でもあったのだろうか
しゃぼん玉のように疑問は天へとのぼり
青空の震えのせいで
虹を現しては破裂する

そのとき
私の心の中で
音もなく破裂したものは
何だ



----今月誕生日のひとに----

2012年12月16日日曜日

素直に生きていけばいいと

自分のよさに気づける人は
素直に生きていけばいいと
神様から選ばれた人

神様から選ばれても
そのことを信じないでいると
幸せになれない

幸せになれないまま
悩み続けて
ある日やっと素直に生き始める

というのが
婉曲に表現した
私の人生です

私というのは
あなたのことであり
筆者は神様の家来として
これをあなたに伝えるため
このような方法で
ここに書いています

2012年12月15日土曜日

パズル

そこには
日本語のパズルがあって
それをせっせとならべて
ぼくは
たまにうれしくなる

そのパズルを
だれがくれたのか
ぼくはうすうす
気づいているけれど

それをみんなに知らせるのは
なんだか
はしたないことのように思えて

だから
ぼくは黙って
パズルのかけらをただ選びつづける
パズルはしょっちゅう完成するが
決まった答えはないので
いつまでも
やめられない
それに
パズルはどんどん増えていく

その一方
磨り減ってなくなって行くパズルもある

いつのまにか
たくさんのパズルを
ぼくはもっている

詩集のようなパズル
お伽噺のようなパズルもある

ぼくは
自分のパズルも作っている
いつから作りはじめたのだろう

無数の星が
パズルの上でまわって
ぼくは消えていく




きょう、12月15日は、谷川俊太郎さんの誕生日です。

2012年12月14日金曜日

素敵なおじいちゃん

素敵なおじいちゃん
愉快で
おもしろくて
ちょっとだけひねくれていて
人を驚ろかすのが好き

一人っ子の風体を後姿に感じさせながら
わき目も振らず何かに打ち込む
それはいつからの癖?

今までしてきた仕事が
おじいちゃんの信念を裏打ちして
つよく押し出す

おじいちゃんが遠慮なく言うことが
世の中を楽しませることだと感じるから
無用な遠慮もしなければ
させないようにも気を遣う

長い間
いろんなところにでかけて仕事をしてきたから
いまや世界一の物知りだと言っても
否定する人はいない

おじいちゃんは
新しいものを作っては惜しげもなく人々に見せる

おじいちゃんがした仕事は
世界中に広がり
たくさんの人を喜ばせた
そのせいで
おじいちゃんは
たくさんの人から愛されている

おじいちゃんは
年をとった
死ぬのが楽しみだという
おじいちゃんにとっても
死は初体験のことだろうから

その新しい経験が
気分よく
できますように

みんなが願っています
誕生日の日に
あなたのことを目蓋に思い浮かべながら




12月15日は谷川俊太郎さんの誕生日です

 毎年、誕生日のお祝いのつもりで詩を書いています マツザキヨシユキ

 去年の詩はこちらです↓
http://miraisousaku.blogspot.jp/2011/12/blog-post_14.html?spref=twv

2012年12月13日木曜日

雪解けを待つ

私の庭は雪に埋まっている
その下で放射性物質が
身の振り方を考えている

私はあなたの下で
身の振り方を考えている

なにもかも
あきらめて
なにもかも
新しく望む

私は私の庭で
雪解けを待つ

2012年12月12日水曜日

花は立ち止まる

花は立ち止まる
私の前で

世間の風を受けながら闊歩していたけれど
百人の人と
幾千の事象に臨んできたけれど

花は迷いもなく立ち止まる
振り返ることもせず
昨日までの計算高さも忘れて

花は立ち止まって
黙り
凛と立って
無言で視線を私に向けてくる

花を前にした私は
花の来し方行く末を想った
だかそれは
ほんの一瞬のことだった

私は
私の人生を受け入れて生きることに
集中しなければならなかったから
季節の風に身を任せて
花や樹や草や生き物や宇宙の自然を
受け入れて
ただ
なすべきことをしなければならなかったから

2012年12月11日火曜日

細い腕

細い腕が畑に埋まっている
畑から畑が腕伝いに上がってくる
畑と地上はやがて混ざり合い
入れ替わる
私を植えようと企んでいるのは
私の腕だ
だが腕は既に脳みそを混ぜながら
夕飯の用意をしているので
大根は自ら細く切られなければならない
まな板が水と混ざり合い
包丁は既に鍋の中で
味噌と入れ替わっているので
私はあなたのワンピースの袖を掴んで
竈にくべて
火を起こさなければならない
料理がそれを待っている
風呂が先か夕飯が先か
あるいは有る岩がさきか
後片付けが先か
細い腕は一本
大事な些事が掛けられているので
油断できない
油揚げを揚げるために
火を起こさなければならない
細い腕は腕まくりして
お尻とは区別が必要だ
トイレにいくときに
廊下が便器と入れ替わらないためにも

2012年12月10日月曜日

淀んだ風

あのとき殴られた左の頬
長い年月が経ち
いま
殴って欲しい右の頬

あのひとがなぜ殴ったのかは
いまよりも
あのときの自分の方が
きちんとよく知っていた

長いものに巻かれ
夢を忘れることさえ正当化することを覚えた私に
あのときの
あのひとのことはわからない

いま
子どもたちは
殴ってさえもらえない
大人になってから頬に
淀んだ風が中るだけだろう