2011年12月3日土曜日

自分らしく生きること

自分らしく生きることを求めるということは
自分らしく生きてほしくないと
言っているのも同じことだと
気づかずに言っているひとは
自分らしく生きていると
思い込んでいる人から見ても
滑稽だが
真に自分らしく生きている人から見れば
見慣れたコマーシャルの一コマに似すぎない
自分らしく生きているひとは
自分らしく生きることを求められるたびに
もっと無名なありきたりの幸せを得て
生きていきたいと思うのだが
相手はそれを許してくれないのを
知っているから
おざなりな答えをするだけである
自分らしく生きたいと願うひとは
自分らしく生きたいと願うことが
自分らしく生きることの
邪魔をしていることに気づかないので
いつまでたっても悩みの中にいる
自分らしく生きたいと思わずに
むしろ自分を殺して生きていきたいと
願っているひとは
自ずと自由な自分らしい生き方をしているのだが
その自由さゆえに不満を持っている
だがその不満が
自分らしく生きることにつながっているのだと
意識することはむずかしい
それは興味がないからでもあるが
生まれながらにして
定まっていたことであるからだ

2011年12月2日金曜日

幽霊が応援している


あなたが悲しむと


そこだけ大地がへこんで


水が流れ込んでくるが


それが涙というものだ


 


水が流れ込んで来るのと一緒に


やってくるのが


あなたのことを大事に思う人の幽霊だ


幽霊だけど怖くはない


なぜなら


幽霊は人には見えないから


 


幽霊といったが


幽霊とは曖昧なものだ


(つまりあなたの「幽霊」と筆者の「幽霊」とは


別のものに違いない。


ちなみに筆者の幽霊は普通の人と見分けがつかない。


ひょっとしたら人間なのかもしれない・・・と思うほどだ)


 


その幽霊はあなたを応援してくれる


ただ便利な存在であるということではない


そこには愛があるから


あなたは


その幽霊に


何となくきづいてしまうことがあるかもしれない


 


幽霊にとって


それは嬉しいことだ


 


今晩


悲しいことがあったとしたら


あなたは涙を零すかもしれないが


幽霊はさっそく近くで


応援しているので


念のためにお伝えしておく


2011年12月1日木曜日

間違えられた天国

三週間まえと
四週間前では
どちらが幸せでしたか

いきなり質問を浴びせられた君は
とっさに四週間前だと答えた

では一か月前と一年前
どちらが幸せでしたか

どうもクイズ番組に出演しているらしいことに
君は気づいた

一年前!
君は自信を持って答えた

では三年前と十年前では?

 


たたみかけてくる


あの


椅子が回ることで有名なクイズ番組なのだろうか



十年前!
ほとんど間髪入れずに君は答えた

まだ質問は続く

では、二十年前と百年前では?

百年前!

と君はすぐに答えて
しまった!
と思った

引っ掛け問題に引っ掛ってしまったらしい
百年前はまだ生まれていなかったからだ

お得意の罰ゲームが待っているだろうか


だが


質問は続けられた


 


では、生まれる前と生まれた後では


 


生まれた後!


君は矛盾を楽じながら答えた



生まれてから、いったいどのくらい?



年の数と同じくらい!

 


ふざける余裕などないのに


なんだか腹が立ってきて


投げやりに答えた


 


では、生まれてすみません、といったのは誰だっけ


 


私の友だち!

 


君が満面の笑みで答えると

会場から笑いが起こり

掛かっていた音楽が盛り上がって鳴りやんだ

すかさず司会者らしき男が言った


 


やりました!


全問正解


地獄行きが待っています


おめでとうございます!


 


大きな拍手と歓声が鳴り響いた


君は天国の間違いではないかと言おうとしたが


雰囲気に飲まれて


笑顔で会釈しただけだった


2011年11月30日水曜日

忘れられた人は


忘れられた人は

缶詰を開ける音に反応して

こっそり

出てくる



あなたが

缶詰を開けたとき

忘れられた人は

あの人の前に立ち

手招きをする



もちろん

誰かが缶詰を開けるたび

別の誰かの前に

忘れられた人はこっそり

立っている



そんなことが

よくあるのだが

気がつく人は少ない



忘れられた人は

苦難をものともせず

隙をうかがっている



何かの拍子で思い出されたとき

忘れられた人は姿を消す



この

忘れられた人の寿命や

生活は様々だが

まだあまり研究されたことがない



私が去年から研究を始めたが

ほかにしている人を知らない

私は

いま忘れられた人のそばにいる

2011年11月29日火曜日

それが どうしたのですか?


毎日が過ぎていきますか


あなたの目の前を


あなたは気づかないようにしているのですか


去って行くものが


あなたに語りきれなかったことを


 


小川が流れていますね


もうすぐ氷が張るでしょう


氷の下を


水が流れるでしょう


氷の上に枯れ葉が積もり


そこを小さなネズミが


渡っていくでしょう


 


月は出ていますか


ほかの星より特別ですね


あなたは特別ですか


あなたにとって


誰かにとって


 


目覚まし時計は掛けて眠りますか


目覚まし時計のことを


忘れて眠れますか


2011年11月28日月曜日

飛んできたボール


飛んできたボール


捕ろうとしたけれど


捕りそこなって


顔面に当たった


 


鈍い音がして


頭の中が釣り鐘のように響いて


重たい痛みが沸きあがってくるのを


おさえられないことは知っている


 


心臓の鼓動に合わせて


痛みが波打ち


地面に倒れて


もだえているところだ


 


駆け寄ってくるのは「仲間」と


近くにいた人だ


間近まで来て様子をのぞき込んで


対処方法を考える


 


ゲームは暗黙のうちに


緊急停止している


 


銀杏の木のところで


いきなり鋭い木漏れ日に当てられた私は


その日のことを思い出した


 


あれからどうしたのだろう


冬の日の公園を歩きながら


私にはつながりが分からなかった


 


ただ


あれは今も私にぶつかってくるあれは


ボールではなく


詩ではないのか


 


それは


確からしいことだった