2011年11月21日月曜日

私は何を

寒い風が吹いてきた
水溜りは凍って
何もかもをあきらめている
 
寒い風が吹いてきた
私は黙って
月明かりの下 歩いていく
 
寒い風が吹いてきた
風を追いかけて
連れ立って落ち葉が行く
 
寒い風が吹いてきた
私は追いかける
耳元で誘惑する声はないけれど

 

2011年11月19日土曜日

バスが来るまで

バスが来るまで
話をしよう
バスがきたら
お別れ

走り出すバスを見送るのは
つらいことだ
もう二度と
約束して会うことはないから

つめたい蛍光灯の光に照らされた顔は
お化けのように青白い

いつか見た
ムンクの絵のようだ

そういえば
今日の月は欠けていて
青白い光を降らしている

涙を搔き出すにも
頼りない

何も話さないうちに
バスはやってきた

気がつくと
バスはもう何処かの駅に到着している

2011年11月18日金曜日

くすぐったいから


ありがとう

へんなことばだ

 

有難き幸せ

などと

お侍さんは言ったのだろう

 

ありが

十匹

いるのを想像した人は

実はほとんどいないだろうが

ありがとう

と言うとき

背中にありが這い回って

ちょっとくすぐったい

 

ほんとはとても

くすぐったい

 

これは

本当の話

 

ありがとうは

くすぐったいから

ありがたい

 

ありがたいのは

二人の間の
 
独特の間
 
 

2011年11月17日木曜日

覚悟


わたしに入門するには


覚悟が必要だ


そもそも


その覚悟を


何処かに置いてきてしまっているらしい


母親のおなかの中か


それとも


泣きながら通い始めた


幼稚園の道具入れの中か


家のそばの原っぱか


もう


烏に運ばれて


何処かに捨てられてしまったかも知れない


 


私は


わたしに入門するための


心の準備をする前に


梯子をはずされたままなのだ


 


何かがたりない


それは


ただの言い訳だろうか


 


わたしへの道は険しい


わたしの門はまだ見えてこない


夜も白々と明けてきた


窓を開ければ


霧のにおいが漂っている


 

私は


門を叩かなければならない


門を見つけて


覚悟を決めて


きょうこそ臨まなければならない


 


だか


まだそこにいたる道筋さえ


はっきりしていないのだ


2011年11月16日水曜日

わたし入門


わたしは


わたしに


入門したい


 


わたしとは


何なのか


わたしは


何のためにあるのか


いい わたしをみつけるには


どうしたらいいのか


わたしには


どのくらいのお金と時間がかかるのか


わたしを


上手く使いこなすにはどうしたらいいのか


 


人の役に立つ


わたしを作るには


どんな方法があるか


わたしを所持するために


届出や手続きをどこでやったらいいか


 


わたしは


早く


わたしに入門し


初級をクリアしなければならない


そして


はやく仕事に結び付けなければならない


もうすぐ誕生日が来る


 


それまでには


わたしは私の初級を取得し


中級の勉強を始めたい


もう何年も愚図愚図している


 


だれか


手伝ってくれる人はいないか


いい参考書を


教えてくれないか


 


夕闇の部屋で


わたしは考えながら鏡に向かっている


全身を映すことはできない


向きかえって


パソコンの電源を入れる


在り来たりな模様と文字が


浮かびあがる


 


私はわたしを検索してみよう


いくつかの情報が示されるはずだ


さあ


いまから勉強を始めよう


 


明日には


明日がやってくる日が


ある限り


いや


なにはなくとも


この私が望む限り


2011年11月15日火曜日

あなたは会ってくれますか

この森の葉っぱの数を全部数えたら
あなたは会ってくれますか
この海の水を全部飲み干したら
あなたは会ってくれますか
この宇宙にあるすべての星の灯りを消したら
あなたは会ってくれますか
それとも
私が消え去ったら
会ってくれますか

2011年11月14日月曜日

あなたのことを書くことができない

詩に
あなたのことを
書くことができない 

窓から月の光が入ってくるので
明かりを消して
あなたのことを
書こうとするけど

きらきら光る
街のあちこちちを眺めても
あなたをそこに置くことはできない

街灯の明かりから電線をたどって
あなたの部屋に尋ねていっても
あなたはひとり
アイロンかけをしているから
声をかけることもできない

衣服は過去の思い出を
浸み込ませているかもしれないが
そこに私の香りは混ざっていない

私は
言葉の通じない地で
学生と混じって生活している
あなたがつい最近まで
やっていたことを
私は経験を踏み倒して
後戻りして
やっている

あなたの後ろから
歩いていこうと決めたのは
夏の日
あなたの詩を書き続けて
書くことができないと思ったのは
きょう

十一月十四日の夜

2011年11月13日日曜日

つながる

パソコンの画面から
あなたが出たり入ったりしているのが分かる
つながっている人は
表示されるのだ

あなたと私が いまも
つながっていると思っている人はたぶんいないが
私のパソコンは
今でもつながったり
離れたりを繰り返していることを
告げてくる

私があなたを思うとき
あなたの姿はなく
あなたが
誰かとつながるとき
私もまた
あなたとつながる

ランケーブルは
もちろん
綱引きではないが
なにかを
手繰り寄せてしまう

2011年11月12日土曜日

まおのピーコ


まおのピーコが


にゃおのミケを


咥えて


かけていったよ


 


夕日の彼方


芝生の上を


 


まおのピーコは


にゃおのミケが


好きなんだ


それで


咥えて


かけていったんだ


2011年11月11日金曜日

行ってらっしゃーい

肩を トン と
叩かれた

振り返ると
一本の木が
月を背おって立っていた

僕を止めないで
寒い季節がくる前に
誰も行ったことのない場所へと
旅立つんだ

道先案内人は
よく知っている
ニャオに頼んだ

行ったてらっしゃーい
と声をあげたら
道の並木が木霊を返した