2013年8月13日火曜日

私は知らなかったのだが



月影の浜に
波が這い上がって
あなたをさらおうと
手をのばした

あなたは
とっさにその湿った手で
なまめかしくにぎり返し
鼓動で合図を送った

波はあなたの中に
入ろうとして
裾を巻き上げ
引力に逆らっていたが
やがて
蒸発を試みた

あなたは
あなたの中に入った波を
自分と区別できずに
潮を吹いて押し出してみようとした

月影の浜に
不良少年がたむろして
仕掛け花火を楽しむように
私を見ていた

私は見られることが恥ずかしくて
逃れようとしたが
なおさら恥ずかしいポーズととってしまうだけだった

あなたは
波の中に私を誘い入れ
波の背中を汗で光らせて
朝を遠ざけた

2013年8月12日月曜日

少女は二つのマリを抱えて

少女は二つのマリを抱えて
立っている
もうほかに何も持つことができないから
期待と疑問のタトゥーシールを
うでとお尻の上部に貼り付けてある

少女は何のために
そこに立っているのか
すでに忘れてしまっているから
声をかけて肩に触れてくる男に
片っ端から訊いてみるが
男たちは不意打ちを食らって
みな逃げだしてゆくので
少女は
時計回りに針が動く
時計とともに
いつまでも立っている
時の経つのも忘れて

2013年8月11日日曜日

へっちゃら


おへそのお池に
たまるよ涙
あふれるまでは
へっちゃらさ

2013年8月10日土曜日


死んだ人や
死なずに苦しんでいる人や
死ねずに絶望している人
痛みや恐怖も振り切れ
うつろにさまよう人
なくなった手足や髪の毛
溶けて固まり
誰かと一体となったように感じられる体
焼けこげた匂い
炎と煙があがっている自分
うめき声と叫び声でできた地響き

その間にできている細い道

死んだ人や
死なずに苦しんでいる人や
死ねずに絶望している人
痛みや恐怖も振り切れ
うつろにさまよう人
なくなった手足や髪の毛
溶けて固まり
誰かと一体となったように感じられる体
焼けこげた匂い
炎と煙があがっている自分
うめき声と叫び声でできた地響き

その道を倒れ込むのをこらえて歩き
神社の階段をにじり上り
回廊に倒れ込む人びとに身を寄せて
力つきた

さっきまでの自分が
私にダブって
私とは何者なのかを
くり返し教えてきた

ありがとう

いまだから
言える

いまだに私は何ものなのか
問いかけ
教えてくれる
自分

2013年8月9日金曜日

最初の原子爆弾


原子爆弾 は
まだ 爆発を 終えていない

最初の 一つが
広島の上空で 爆発を 始めてから
68年が 経とうとしているが
まだ 原子爆弾の その 爆発の
奇妙な形の 傘の下で
広島も 長崎も そして
世界中の あらゆる都市が
破壊され 哀れまれ 復興されていくけれど
本当は まだ 一つ目の 爆発さえ
終わっていない

終わっていないのだから
私たちは
新たな文明を始めたり
産業を栄えさせ
人びとの 幸福を考え
祈ることが 出来ない

爆発が 始まった 合図の鐘が
鳴っている
その響きが 木霊して
死者を つなぎ止めている
死者と一緒に
私たちもまた つなぎ止められている

キノコ雲は 夏の日差しに そびえ
広がってゆく

広がりませんように
もとに もどりますように

誰が叫んでいるのかは 分からない
私たちは 冷静に その声を聞いている
余裕はないから

岡崎武志さんが書評(サンデー毎日・2013・8)で取り上げてくださいました


2013年8月8日木曜日

ちきゅう に すきゅーばだいびんぐ


おくつが きゅっ きゅっ と なったのは
だれかに きづいて ほしいから
きゅうかんちょう が にげだした
きんきゅう しゅつどう きゅうきゅうしゃ

おくつが きゅっ きゅっ と なったのは 
だれかと あそびたいのかな
きゅうじつ しゅっきん まま いない
どーむ きゅうじょう きゅうれんぱい

おくつが きゅっ きゅっ と なったのは
ぼくと はなしが したいから
きゅうに なみだ が でてきたよ
ちきゅう に すきゅーばだいびんぐ

88888

いつの間にか
88888
を超えていました

誰が88888
をゲットしたのでしょう。
気になります・・・・

このブログ
特に詳しい分析システムを入れていないので
どんなふうに見られているか
たまに「知り対けど分からない」ということになります

だれか
いろいろ教えてください

「わたしはこんなふうに
ここを訪れ
こんなふうに読んで
こんな感想です」
みたいなこと

こんごとも
日記のような独りよがりのブログですが
どうぞよろしくおねがいします



2013年8月7日水曜日

達者で


こんにちは
ぼくは
この体を借りて
この世を行きていく
世俗的な人間です

この体が
ストレスなく
世渡りをしていけるよう
できるだけ協力しています

体はこわれることもあるから
修理して
点検も怠りません
毎日の栄養補給も
もちろん心の栄養補給も
大事な仕事です

別の体とぶつかったり
事故を起こしたり
時には戦争に出て行かされたりと
リスクはまわりにたくさんあります

だから油断することは
許されません
政府はセイフティネットを用意して
それぞれの体の存続を
サポートしてくれますが
それだけでは
十分ではありません

ですから
それぞれが
自分の体に合った
メンテナンスや気配りを
しなくてはいけません
そして
中にいるぼくたちが
充足感を得なければ
この仕組みは自ずと
消滅してしまうでしょう

生まれて
一つの体を宛てがわれて
50年から100年ほどが立つと
我々は体を見捨てて
新しい体に乗り換えなければなりませんが
愛着ある体を離れることは
不安や寂しさが伴い
場合によってはかなり辛い思いをすると
いうことです

また
そのことは体には知らされていないから
体は慣性の法則で
生き続けようとする
ぼくたちは体に告知することなく
この体を後にすることが
使命として遺伝子に組み込まれているらしいのです

そのせいで
乗り換えは
体たちの間では
悲しい儀式となっています

あっ
と ここまで書いてしまいましたが
ぼくの体は
このことに気づいているようです

だから
これを書くのを
見逃してくれたのでしょう

体よ
ありがとう
あとしばらく
もうしばらく
達者で暮らしてくれ