2013年5月15日水曜日

和やかな息


禿げた頭に産毛のように白い毛が生えているが
そこに陽の光たちが集まって
昔ながらの遊びをしている

禿げた頭は
誰のものか?
それは問題ではなく むしろ
あとどのくらいそれが続くのか
頭の主はそのことに気づいているのか
そのことの方が問題だ

なぜって
そこには
永遠 や 幸せ や
よく歌や占いの中にでてくるものたちがが
あふれているから

ははあ
それには
とうの本人は
気づいていないらしい

知らせてあげようかな

禿げた頭のそのひとは
でも いったい何をしているんだろう
犬を散歩させるみたいに
他者をよろこばせることばかりに熱心なようにみえる

それがわかって
私もいま
和やかな息をしているようだ



未来創作をごらんの方へ


いつも、ありがとうございます。
私は去年の6月ごろから、原子力災害で苦しむ福島県に何度も出向き、私が詩を書くことで、なにかできることがないか、役に立てないか、いつも考えていました。そんな中、福島の写真家の花の写真に毎日詩を付け始め、その活動は被災した方を招いてのコンサートへと発展しました。作曲・ピアニストの谷川賢作さんに出演をお願いして、1月に、花と詩と音楽のコンサートを開催しました。そんなご縁から、賢作さんと、花をモチーフとした歌を作ることになり、何度もやり取りをして、ここにようやく「ここは花の島」が完成しました。皆様にご報告するとともに、多くの方に歌っていただけますよう、ご紹介させていただきます。楽譜もご必要な方にお渡ししています。

マツザキヨシユキ


ここは花の島  作曲・谷川賢作  作詞・マツザキヨシユキ

一枚の花びらを
日差しに透かして見てる
それはいつかあなたと見た
朝焼けの海

一枚の花びらを
指先に置いて見てる
それはいま生まれたあの子の
こわれそうなてのひら

大切なもの守りたいと
願ってここにいる
ここは 美しい島 
花の島

季節は巡り
春も夏も
歌ってる 美しい島


一枚の花びらを
唇に当ててみてる
それはきょう初めて知った
あこがれの恋

一枚の花びらを
風にあそばせてみてる
それはなぜ やさしく誘うの
透き通った涙よ

大切なひと守りたいと
願ってここにいる
ここは 美しい島
花の島

季節は巡り
秋も冬も
呼びかける 美しい島

ここは花の島
美しい島
Lu・・・

2013年5月14日火曜日

だいじなひとをめぐる詩


だいじなひとが
死んでしまったらどうしよう

朝 小鳥のさえずりが
遠くから聴こえていた

ベッドから半身 起き上がると
喉のあたり
涙が溜まっていて
いまにもあふれようとしていた

明るい外の景色から
カーテン越しに
日の光が入ってきていた

だいじなひとが
死んでしまったらどうしよう

取り返しのつかないことをして
おとなに叱られた記憶が
回り始める

起きて
だいじなひとのことを考えなければ と
急いで机の前に座った

あの日から
もうずいぶん歳月が流れ
だいじなひとは
もう いなくなっていた

2013年5月13日月曜日

やっぱり 草加


仮想 かどうか 
うかうか するな
やっぱり そうか
仮装 火 土か
やっぱり 草加
家相 華道家
火葬 過度 羽化
鵜 飼うか 擦る 菜
やっぱ 理想家
や! パリ 僧か

2013年5月12日日曜日

爽やかな仕事

仕事が私を探していた
そんな風にして出会った仕事だ

だから私はこの仕事を
ただ一生懸命やる
ただそれだけのことだ

爽やかな気分でいられるのは
困難がないからではない
嫌な人間に会わなくてすむからでもない

爽やかでいよ! と
仕事が私をそうさせているからだ

2013年5月11日土曜日

イカしたたこ焼き

たこ焼きに絡み合うソースは自慢の逸品
マヨネーズとかつお節に合わせて
イカした踊りは
阿波踊りを彷彿とさせるいやらしさ
蛸はますます出ていきにくくなり
肉にタッチ交代の要請メール
そこに明石からイカした蛸さま登場
あわや淡路の泡となるのか
元いた蛸の運命やいかに

2013年5月10日金曜日

永遠に解決しない


夏の日の陽炎の彼方に
立っている人がいる

黒い人影だ
一人
いや二人

いや一人や二人ではない
何十人 何百人
いや
いつのまにかそれはひとつの群れをなして
何千人
数えきれない群衆
こちらに歩いて来る

見つけなければよかった

錯覚だろうか
錯覚であってほしい
暑さのせいで 私は
オカシクなってしまったのだ

群衆はどよめいて左右に揺れながら
乾いた土を大きく舞い上げている
土?
そんなものあっただろうか
舗装された道の脇にはビルや家が建ち並んでいる

顔が見えない
姿を見ることができない
群衆の中からたまに
人影が立ち上がるだけだ

唸り声とも叫び声とも
経を読む声ともつかぬ音が
車輪や足音に混じって聴こえて来る

女の子が壊れかけた人形の片腕を
無造作に握り
ぶらぶら振りながら群衆の影の中に沈んだ

あれは私が知っている少女だろうか

まだ太陽は高いのに
背後から夕日が射して
長い影が揺れ始めた

何のために
向かってくるのか
問いかけることはできない
心の中で叫び訊いてみるが
おかまいなしだ

時間は普通に流れているのだろうか
道ばたの草花が
風に抗って揺れているのが分かる

群衆は近づいてきているはずなのに
いつまでたっても影のままだ

もう長い時間が経ったようでもあるが
まだ一瞬が過ぎただけのようにも思える

私の日常生活はたしかに私の周りに存在している

鳩が背後で戯(おど)けたように鳴く
私は鳩は嫌いだ

私はこの出来事を誰かに話すのだろうか
それとも
すぐに忘れてしまうのだろうか
意味が分からない出来事

過ぎ去る訳でも
遠ざかる訳でも
襲ってくる訳でもないこのできごと

その渦中にいて
友人たちは
何かに熱中しているのだろうか
私の一大事は
何事もない一コマのように
永遠に解決しないでいるというのに



2013年5月9日木曜日

戦争に行った

首がもげたぬいぐるみの胴体が
野原に転がっていました
だれも触ろうとする者はいません
ただ
雨 虫 植物 空気 霧 土埃 光の粒子だけが
触れました

そこに一緒に留まろうとするもの
去ろうとするもの
みな 
触れた経験を持って
思っていました

持ち主は
戦争に行ったのだと

2013年5月8日水曜日

その人の居る場所


アパートの一室
箪笥の横
畳の上
錦糸の布に包まれ
白い器の中で眠る人

ああ もう「人」ではないのでしたね
でも
その人の名前は
よく憶えているし
その人によく似た人が
たまに ここを訪れ
布の中身を見たいとごねている

アパートの一室
箪笥の前に布団を敷いて
その人のそばで眠るまた別のその人
その包みを
土に埋めたいという

私は
穏やかなその話を
何度となくきいた
そして包みは
土に埋められることもなく
今も箪笥の横においてある

そして

遊び飽きた
オモチャの木馬みたいに
夕方の日差しのシャワーを浴びている

2013年5月7日火曜日

ブランコがひとりでに


ブランコがひとりでに揺れて
夕日が長い影を作ると
どこかに閉じ込められていたあの子が
やって来る

歳のはなれた姉の手を引いて

姉は悪い男に犯されてから
誰とも恋をすることができなくなった
恋の真似事をして
恋の気分を味わおうと何度も試みたけれど
それはいつもただの激しいセックスに溺れ
傷つくだけだった

だから
歳のはなれたミルクの匂いのする妹とは
気兼ねなくつきあえたのだろう

ブランコがキーキーと
音を立てる
諦めかけた悲鳴のように
か細いまま 叫び続けている

風も吹いていないのに
木の葉がしきりに
裏表になるのを繰り返している
何かの警告だろうか

ブランコがひとりでに止まり
夜が来て
もうここには誰の悲鳴も聞こえない