辞めたいのなら辞めていいのだよ
カウンターでトロピカルドリンクを出すこの会社は
たまにあたたかさがなくなる
カウンターは会社の奥にあって昔そこはカフェだった
竹口商店といったのだ
今君と面接をしているこの場所は交番だったんだよ
引き止められると思っていた君が
不意をつかれている間に
社長はもう出て行ってしまった
会社では勝手気ままなプロジェクトがたくさん動いている
誰が何をやっているのか把握している者はいないんじゃないかな
社長が路上で伊豆に行くという社員たちを見送っている時
小さな車に乗った
谷川俊太郎が手で顔を隠しながらやってきて
その様子を見ている
誰かに用があるのだろう
社長が7つある潰れた段ボールの中から
詩人に渡すべきものはないかと
探しているが見つかる気配はない
夜空を流れる雲の下で
人々は玉の上に乗っていることを忘れて
器用な技を競ううとしている
既に落ちてあきらめかけた人たちは
どこかに寄り集まって愚痴を交わしている
いつ死んでも誰かが棺桶を用意してくれるだろう
*この詩は作者がみずから、生前、音声認識アプリによって語り下ろし、記録したものです。