2012年9月9日日曜日

この道 いこうか 帰ろうか

この道 いこうか 帰ろうか
帰って 脇道探そうか

この道 いこうか 帰ろうか
だれかを追い越し 進もうか

この道 いこうか 帰ろうか
いくと帰るは どう違う

この道 いこうか 帰ろうか
荷物を取りに 戻ろうか

この道 いこうか 帰ろうか
迷うと ゆっくり足になる

この道 いこうか 帰ろうか
トンボにきいても 知らぬ顔

この道 いこうか 帰ろうか
夕日か背中をあたためて

この道 いこうか 帰ろうか
いつになったら どこにつく?

この道 いこうか 帰ろうか
父もこの道 いったのか

この道 いこうか 帰ろうか
誰が留守番役だろう

この道 いこうか 帰ろうか
くるひもくるひも同じよう

この道 いこうか 帰ろうか
狂っているのは誰かしら

この道 いこうか 帰ろうか
道案内はひとでなし

この道 いこうか 帰ろうか
気付いたときは歩いてた

この道 いこうか 帰ろうか
歩く速度を変えようか

この道 いこうか 帰ろうか
熊も一緒に歩きた出す

この道 いこうか 帰ろうか
それとも止まって 果てようか


2012年9月8日土曜日

真新しいノートの1ページに

いつも ノートを
最後まで使えずに
母に小言を言われ続けていた

そのせいか
靴下を
もう使えなくなるまで履きつぶして
いよいよ捨てるとなると
記念写真を撮ることになる

靴下だけではない
衣類のほとんど
消耗品のほとんどだ

そうして
私の周りには
最後まで使い終わったものたちの写真が
ひしめき合って大挙することになる

最近その中に加わったのは
醤油瓶
トイレットペーパーの芯
靴下だ

私は私を使い切りたい
写真を撮ってもらい
真新しいノートの1ページに
願わくば
貼り付けられたい

2012年9月7日金曜日

便利なもの

便利なものですが
壊れると厄介です
捨てるのがたいへんだから

燃やしたあと土中に埋めるか
海に撒いて沈めるか
よく考えなくてはなりません
誰に相談したらいいのでしょう

ずっとあの場所に
光る布に包まれて置かれている
あの人に尋ねたら
答えが見つかるでしょうか

告知■『詩の電車』vol.1


■『詩の電車』vol.1

谷川俊太郎(詩人)×有本ゆみこ(刺繍作家)「七等星」

  期間

2012929日(土)〜1028日(日)

  叡山電車の通常運行スケジュールでご乗車いただけます。929日のみ、1830分から、オープニングイベントのため貸切電車となります。

  「七等星」について 有本ゆみこ

「普段夜空に瞬く星は一番明るい、一等星から六等星まで、それ以上は光が弱くて目に見えません。でも、みえないけれど、そこに星はあるのだと思います。きっと、もっと。星だけじゃなくって、日々のあわただしい生活の中で感じる違和感とか、小さな本音、みえないけれどあるような、そんな《七等星》な想いがとても大切な、ほんとうのこと だったりします。谷川俊太郎さんはそんなささいな出来事から生まれた小さな魂をひとつひとつのうつくしい言葉の中に宿らせていると、刺繍をしながら感じました。」

 about

刺繍作家・有本ゆみこが、谷川俊太郎さんの書き下ろしの詩と、「七等星」をキーワードにセレクトした谷川俊太郎さんの詩を、一針一針刺繍し、叡山電車に飾り付けます。

  オープニングイベント

2012929日(土)1830分〜2030

「宇宙の入口、金星(鞍馬天狗に会いたい)ツアー」

ツアー料金:1500円(叡山電車の往復乗車賃込み) 乗車駅:出町柳駅

内容:銀河鉄道となった叡山電車。詩の力でワームホールより天狗に会いに行きます。

  有本ゆみこ率いる「アラスカン」刺繍ライブ

  「詩の電車」のために制作した「星の組曲」(朗読 谷川俊太郎+音楽 谷川賢作) の車内放送。

  谷川俊太郎の短編映像作品を上映


2012年9月6日木曜日

森は




もう森は消えようとしていて

待って!

私は声を掛けたけれど
森に吸い込まれて
木霊は返ってこなかった





もう森は消え去ってしまい

何処?

私は声を掛けたけれど
今度は自分がいなくなり
声だけが木霊して彷徨っていた





https://www.facebook.com/#!/madoka.ishibashi.50

2012年9月5日水曜日

哀しい心を持っているあなたと

哀しい心を持っているあなたと抱き合って
一晩中泣いていたい
涙で湿り過ぎないように
タオルやティッシュを沢山傍に置いて

哀しい心を持っているあなたと抱き合って
声を出さないで語り合いたい
お互いの悲しみが無用でないことを
別の場所で生まれた悲しみ同士でも
ハーモニーが奏でられるということを

哀しい心を持っているあなたを
大事にしていたい
湿り気を乾かすお日様に感謝するでもなく
恨むでも厭うでもなく
ただ微妙に受け入れて
その強い光の輪っかの一部を乱反射させて
明かりを取りながら

うなだれたまま
ベッドに倒れこんだまま
隣り合って
哀しみを見つめて手のひらで撫でたい
あなたの頭の形のような
哀しみの頭を
私の後悔のような掌で

2012年9月4日火曜日

私が生きていく理由

私が生きている理由がどこにありますか

私が生きていく理由がどこかにありますか

2012年9月3日月曜日

もうそのガムはここにはないけれど

ネコさんも「お手上げだ」って言ってる
逆さまになってふたり並んで
のびている

状況は芳しくなく
星空も瞬き心配そう
雨雲が横槍もいれてくる

ネオンの滑り台は
最近LEDになり
感電することもなくなったが
頭に来ても
切れられない

10万年に0.1秒という精度で
確かな時を告げるという
電波時計はきのうからもう2時間もずれている
いったいどれだけの時が経ぎたというのか

Windowsは相変わらず
やっとこさ立ち上がるときに看板を出して
無策を印象づけてくる
もう勘弁してよ

作っては壊し
心配して
捨てまくり
そのせいで
また作り
作るために
大切な物を壊す

そういえば
ガンジーさんは
なまえがすごくいい
スージーさんも
なまえがいい

ネコさんは
いなくなった
あくびをひとつおいて

そのうえに
溜息を漏らしてみる
ラベンダーの香りは
ガムの中に入っていた
もうそのガムは
ここにはないけれど

2012年9月2日日曜日

ファストフードのレストラン

私を知っている者は誰もいない
明るい日差しが差し込む
異国のファストフード・レストランの2階

買ったものを食べ終えて
周囲を見回している私
おいしいゴハンだったし
煩わしいことはとりあえず放置してきた
ここまで
追いかけられることはない
だから
心を軽くして
方ぼう好きに漂わせることができる

・・・なんて楽ちんなんだ・・・

荷物は椅子の上に投げ出し
スーツはとっくに日本の部屋の押入れに仕舞いこんだ
明日の予定はまだ決めていない
友だちはみんないい人ばかりだ
悪い人は友だちと呼ばないことにして
放ったらかしにするから

私は
安くて美味しい物を
おなかをすかせてから食べて
浄水器で濾した水でお茶を作る
それだけだ

やらなければならないことを
やりたい時にやり
できた後から
注文を受ける
そうすれば
思う存分
納得の行くものを作ることができる

だれも
作らなくてはならないと
私に言ってこないから
私は好きな場所まで歩いて行き
自分に言われるまで作り始めない

ファストフード・レストランの2階は
広々していて
世界をすっぽり納めてしまう
ひょっとしたら宇宙だってかなわないほど広い
その場所の端っこにに私は腰掛けて
ゆっくり息をしている
多分生きているから
多分生きて行けるから

2012年9月1日土曜日

私というあなた

言葉を教わると
たちまち言葉に閉じ込められる
瓶詰めのジャムみたいに
ラベルをはられて
内容量がきまってしまう

たとえば
いわし雲があったとしよう
いわし雲という言葉を覚えると
いわし雲は缶詰の中に入って(缶のほうがいいだろう?)
「いわし雲」というラベルが貼られる
すると人は「いわし雲」を
ほかの雲(入道雲やうろこ雲など)や
気象の状態や
ましてや魚(鯖やマグロ)と間違わずにすむ

だが
言葉に捕らえられると
捕らえられたものたちはたちまち自由を失い
場合によっては意味がいい加減な詩なんていうものとは
おさらばしなくてはならない
孤立無縁に閉じ込められ佇む姿はなんと憐れなのだろう

私は
去年
中国に留学して
英語で 中国語を習った
どちらもよく知らない言語だ

私の名前は
今まで私が知っていた名前と
似ても似つかぬものになった
ずっと
マツザキヨシユキ
と呼ばれてきたが
ソンチーイーシン
となった

私の自由は
果たして広がった!
それでも
名前の中に閉じ込められて
私は何をしようか

私というあなたは
何をしますか?
という質問さえ
言葉を頼りにするなんて