2012年4月6日金曜日

ささいな話

あなたを褒めたくて電話したのに

悪口を言ってしまった

会いたかったのに

電話だけでこと足りてしまった

いつも大好きだったのに

嫌いになってしまった

次に電話するとき

なにがどうなってしまうのだろう

そのことを別の人に相談したら

好きになってしまった

2012年4月5日木曜日

muddler

あなたの名前を知ってから
私はあなたを縛ることに夢中だ

誰かが誤って
持ち去らぬよう
呪(まじな)いをかけて
繋ぎとめる

鎖は結ばれていないが
あなたを見つけ出すその目印は
なんということか私を拒絶する

いつの日か
あなたの下肢に食い込みしがみついた
貞操帯の血筋か

気遣いなく
カチャカチャと音を立て
淀んだ心にマドラーを弄ぶ

2012年4月4日水曜日

それは帰り道だった

笑いながら夜道を歩いていたんだ
それは帰り道だった
いや 行き道だったかもしれないが

月がやけに明るく照らしていて
濃いブルーの影を作っていた
沼のほとりの柳の木の横を通った時
花の開く音がしたかと思ったら
少し遅れて香りがやってきた
鈴の音も聞こえてきた

前方からは
ハイヒールを履いた背の高い女性が
銀色のブラウスを光らせて
胸をゆさゆさ揺らしながら
足早に突進してきた

私の傍を通りすぎる時
女は泣いているのだと私は気づいた
すると私の眼からも
大粒の涙がポロポロとこぼれて道に落ちた

大事な宝物を
すべて捨ててしまったような気分に襲われたから
私は
笑いながら夜道を歩いていたんだ
それは帰り道だった
いや 行き道だったかもしれないが

2012年4月3日火曜日

(きょうの感じ)

逆さまから笑顔をみて
ノリウツルぞー
かえるの頭をこすり付けて
雨風を弾き飛ばすぞー
あしたはタワシの風が吹く
茎の上で九九を唱える
てんとう虫と暁見つめ
忍び寄るぞー

2012年4月2日月曜日

豊かな私のため/「私」性調査2012にご協力下さい

〈『私」について、いくつでも「そうだ」と思うことを丸で囲んで下さい〉

●回答欄

大事なことをみんな忘れてしまう
簡単な計算ができない
もたもたしていて切り替えが遅い
心の中で愚痴ばかり言っている
自分を慰めるのが好き

惰性で生きている
自分を棚にあげて偉そうなことをいう
優しいふりして衝突を恐れるだけ
大事な問題ほど解決しない
脛を齧っている

勇気がないのに吠える
うそつき
都合の悪いことを隠す
好きなことだけはやる
努力を惜しんでいる
現実から逃避する

人を傷つける
苦し紛れにとんでもないことを言う
何度も過ちを繰り返す
他力本願
無理なことを言う
懲りない
人の気持ちがわからない



・・・ありがとうございました。
これからの「豊かな私」づくりに活かさせていただきます。

2012年4月1日日曜日

ニートのアイディア

雨が降った
傘がなかったので
軒下で雨宿りした
遊び人

彼は名刺をもっていたが
そこには所属する会社名や職場の名は
記されていなかった
彼は仕事をしていなかったし
どこにも所属をしていなかった
名刺はいわば〈遊び用〉の名刺だったから
そこにはニックネームとメアド
気にいったイラスト
それに携帯ナンバーだけがあった

彼は雨が小降りになるのを待ちながら
思案した

そして突然  
そうだ!

思いついた
自分は
この建物の傘下に入ったのだと

見上げると
そこは立派な
我が国を代表する会社だったから

2012年3月31日土曜日

湿ったところ

くちびるがくっつきそう
相手が目を閉じた
私は目を閉じているのだろうか
くちびるにくちびる
湿った舌から押し出される息
擦れる産毛
ファンデの香りに
めまいがしそうになる
腕はどうなっているだろう
腰の周りの衣服は
肉体の躍動と呼吸と
どうせめぎ合って
感覚器官を刺激しているのだろう
舞台の上を回りながら
二人きりになって
遊んでいるのだろうか
責任は誰がとるのか
後戻りできない罪は
どこに紛れ込ませれば
忘れられるのだろう

2012年3月30日金曜日

不安な花束

その森の入り口には
出口と書いてある
中に踏み入れると
道案内はない

道に迷ったと気づく時に
ちょうど日が落ちることとなっている

不安な気持ちが
花束になって
二本の腕に抱えられている

2012年3月29日木曜日

誤魔化された今日

誤魔化すのが当たり前になってしまった人が
もう誤魔化していることも忘れてしまった
誤魔化された人はまだ誤魔化され続けていたから
何事も変わらなかった

誤魔化している人は
誤魔化していることによって誤魔化されている人から
誤魔化していると指摘されないので
誤魔化していることに気付けずに
そのうち誤魔化していることのほうが
耐え切れずに真実に変容していった

誤魔化している人は
誤魔化しながら
誰かに誤魔化されたいと
心の奥で望んでいたが
干からびた心の厚い壁に阻まれて
その思いはただ朽ちてしまった

誤魔化している人が増えると
なにが誤魔化しているといえるのか
やがてますます判りにくくなってゆき
誤魔化していないことが誤魔化しのようにさえ目に映り
私たちは自分たちを信用できなくなっていった

最初にごまかした人は
もう誤魔化しの輪っかから抜け出し
西方浄土と天国の間の地の果てで
酒を酌み交わしながら洋菓子を食べながら
周りの人々と高みの見物を決め込んでいた

という夢が
誤魔化し誤魔化されることに飽き果てた
私に見られていた

2012年3月28日水曜日

言葉をなくしたら

夕方の景色と出会って
言葉をなくした

言葉をなくしたら
べつの
言葉をなくした人 と繋がったような
気がした

さっきまで
言葉を持って
きょうも
外を出歩いて
言葉を投げ合っていた

運動会でやった
競争のように

言葉をなくしたら
心の底に
言葉の泉があることに気がついた

言葉をなくしたら
また
言葉が自分の中に溜まり始めて
溢れてくることが分かった

綺麗な言葉が
湧いてくるように
したい