あなたを忘れるために
生まれて来たの
今日が去って行くために
太陽を沈めるの
ごしごし掃除して
なかったことにするの
なにも残らない
目を凝らしても
なにも聴こえない
耳を傾けても
明日も生きて行くために
私をベッドに放り投げるの
放り投げた私は
なかったことにして
目が覚めたら また
あなたを忘れるために
生きていくの
2012年2月27日月曜日
2012年2月26日日曜日
失われたもの
ひまわりが咲いていたから
あれは
夏だったのだろう
青空の向こうから
一人の若い女がやってきた
私の前で微笑むと
声も立てずに
走っていった
私は
追いかけるしか選択肢がなかった
それから
雲が流れる空を眺めながら
草むらに寝転んで
耳許に草の葉擦れの音を聞きながら
私たちは時間が経過するのも忘れて
永い間お喋りをした
疲れて眠る子どものように
そのシーンが回転しながら飛び立っていくのを
草むらを包み込む地上から眺めていた
青い空は夕焼を映し
ひまわりはうなだれて
自らの目的を失っていた
あれは
夏だったのだろう
青空の向こうから
一人の若い女がやってきた
私の前で微笑むと
声も立てずに
走っていった
私は
追いかけるしか選択肢がなかった
それから
雲が流れる空を眺めながら
草むらに寝転んで
耳許に草の葉擦れの音を聞きながら
私たちは時間が経過するのも忘れて
永い間お喋りをした
疲れて眠る子どものように
そのシーンが回転しながら飛び立っていくのを
草むらを包み込む地上から眺めていた
青い空は夕焼を映し
ひまわりはうなだれて
自らの目的を失っていた
2012年2月25日土曜日
絶望の谷で
首をくくろうか
と 君は言いかけて
その言葉をのみこんだ
振り向いた顔が
あまりにも寂しげで
もうこれ以上どうにもならないと
悟ったから
ビルの谷間には
絶望が溜まっていた
おまけに
冷たいビル風が
埃を舞い上げて吹き荒れていた
私たちは
後ずさりしないでいるのが
やっとだった
首をくくろうか
と 言いかけて
君が 発した言葉は
たかを
くくろうか
私たちは
か弱い
一歩を踏み出すだけだった
と 君は言いかけて
その言葉をのみこんだ
振り向いた顔が
あまりにも寂しげで
もうこれ以上どうにもならないと
悟ったから
ビルの谷間には
絶望が溜まっていた
おまけに
冷たいビル風が
埃を舞い上げて吹き荒れていた
私たちは
後ずさりしないでいるのが
やっとだった
首をくくろうか
と 言いかけて
君が 発した言葉は
たかを
くくろうか
私たちは
か弱い
一歩を踏み出すだけだった
2012年2月24日金曜日
去っていく者
君の家に行ったのは
夏の終わりごろ
そのころの僕は毎日
自分の夢の中の道を必死に
歩いていた
君は
お母さんの作ったカレーとデザートを
テーブルに並べながら
君の夢と未来と今の生活とを
混ぜこぜにして語ってくれた
僕は
カレーを食べながら
君の夢と僕の夢が
一緒の世界にある幸せを感じていた
あれから
もう随分と時間が経ち
あの頃の世界は
過去に流れ去り
夢さえも見えないところに行ってしまった
君はいま遠くの街で
何を考えているのか
僕は
一度この街をはなれて
また
戻ってきたんだ
季節は春になろうとしている
君の街はいまどんな天気なのだろう
僕は
また
君のうちに行くことが
できるかい?
カレーを食べながら
また夢を重ね
語らうことができるだろうか
冬が
春に追いたてられて
去ろうとしている
さよならを言うべきか
いや
春に挨拶するのに精一杯で
不器用な僕は
去っていく者のことを
気遣うことができない
夏の終わりごろ
そのころの僕は毎日
自分の夢の中の道を必死に
歩いていた
君は
お母さんの作ったカレーとデザートを
テーブルに並べながら
君の夢と未来と今の生活とを
混ぜこぜにして語ってくれた
僕は
カレーを食べながら
君の夢と僕の夢が
一緒の世界にある幸せを感じていた
あれから
もう随分と時間が経ち
あの頃の世界は
過去に流れ去り
夢さえも見えないところに行ってしまった
君はいま遠くの街で
何を考えているのか
僕は
一度この街をはなれて
また
戻ってきたんだ
季節は春になろうとしている
君の街はいまどんな天気なのだろう
僕は
また
君のうちに行くことが
できるかい?
カレーを食べながら
また夢を重ね
語らうことができるだろうか
冬が
春に追いたてられて
去ろうとしている
さよならを言うべきか
いや
春に挨拶するのに精一杯で
不器用な僕は
去っていく者のことを
気遣うことができない
2012年2月23日木曜日
滅多にいない
西に向かう電車に
多勢の人が乗っている
時間を戻せば
まちまちに東に向かっていた
大勢の人は
なにかを掴んで今電車に
乗っているのでしょうか
いいえ
そんな顔をしている人は
見当たりません
滅多にいないのでしょう
多勢の人が乗っている
時間を戻せば
まちまちに東に向かっていた
大勢の人は
なにかを掴んで今電車に
乗っているのでしょうか
いいえ
そんな顔をしている人は
見当たりません
滅多にいないのでしょう
2012年2月22日水曜日
衣服の下が
衣服の下がどうなっているのか
私は知りたい
少し露出していて
カタチは現れているけれど
そこはかとなさすぎて
全体像を結ばない
透視するように
触診するように
その衣服の下の様子を
間近で感じ
問いながら
確かめながら
知りたい
誰をも介在させず
時間にさえ邪魔されず
記憶力も味方に引き入れて
その色と質感
触感も総動員して
私の中心部に定着させたい
あなたは
私の問いに答えなければならない
答え続けなければならない
外界との通信を断ち
私の探求に身を任せなければならない
衣服の下がどうなっているのか
あなたは
最後までその衣服を
枯葉のようにハラリと床に落とすことはなかった
私は無力なのだ
衣服の下に
エネルギーがあり
そこに行きつかないまま
燃料切れしてしまった
ポンコツ自動車のよう
私は知りたい
少し露出していて
カタチは現れているけれど
そこはかとなさすぎて
全体像を結ばない
透視するように
触診するように
その衣服の下の様子を
間近で感じ
問いながら
確かめながら
知りたい
誰をも介在させず
時間にさえ邪魔されず
記憶力も味方に引き入れて
その色と質感
触感も総動員して
私の中心部に定着させたい
あなたは
私の問いに答えなければならない
答え続けなければならない
外界との通信を断ち
私の探求に身を任せなければならない
衣服の下がどうなっているのか
あなたは
最後までその衣服を
枯葉のようにハラリと床に落とすことはなかった
私は無力なのだ
衣服の下に
エネルギーがあり
そこに行きつかないまま
燃料切れしてしまった
ポンコツ自動車のよう
2012年2月21日火曜日
私はあなたを愛していると思った
愛していると思っていたら
いつの間にか冷めていた
だが
カフェのカウンターで
コーヒーを飲んでいたら
また
愛していた
朝
愛している感情に溺れて
白いシーツのベッドから
木の床に降りた
降りてから
部屋を歩き回っていると
余計に愛していると
思えてきたが
あなたからのメールを受け取り
きょう会えるかも知れないということになったら
愛は冷めてきた
風の吹く街を
仕事がうまく回らないと
ふてくされて歩いていたら
あなたが
自分の同志のように思えてきて
一緒に勇気を出すんだと
信じられることが分かった
あなたは
待っているという
さっきまで
こちらが待っていたのだ
あなたは
自分の好きな場所で待っている
好きな場所で待つとは
素晴らしいことだ
私はあなたを愛していると
思った
2012年2月20日月曜日
雨には濡れずに
敗北感という上着でも
外に出るときは
着ていたほうがましだろうか
胸ポケットに
ボールペン差して
なにかあったら
書いてやるぞという勢いで
せめて約束したことを
別れないように
メモする
もらったものは
鞄にしまい
食べられるものは
食べる
いらないものは
いらないことを確かめて
すててやる
自分をすてることは
できないし
迷惑だから
食べられるものは食べ
いらないものは捨てることで
バランスをとる
バランスも
いらなくなるだろうか
そのうちに
ベランダに置いておいた
物入れが
雨にぬれて
まだ何も入れていない
物入れの中の空気を守っている
私は
雨には濡れずに
何を守っているのか
外に出るときは
着ていたほうがましだろうか
胸ポケットに
ボールペン差して
なにかあったら
書いてやるぞという勢いで
せめて約束したことを
別れないように
メモする
もらったものは
鞄にしまい
食べられるものは
食べる
いらないものは
いらないことを確かめて
すててやる
自分をすてることは
できないし
迷惑だから
食べられるものは食べ
いらないものは捨てることで
バランスをとる
バランスも
いらなくなるだろうか
そのうちに
ベランダに置いておいた
物入れが
雨にぬれて
まだ何も入れていない
物入れの中の空気を守っている
私は
雨には濡れずに
何を守っているのか
元気?
元気?
美しい笑顔であなたは私に訊く
その「元気」とは
どれほどの
どのような「元気」を指しているのだろう
私はいつも黙りこみそうになるが
やっとの思いで
元気だよ
と こたえる
こたえて
嘘っぼくなかったか
いつも心配になる
私は元気なのだろうか
そう訊いてくる「あなた」は
きっと「元気」なのに違いない
私はあなたに
「あなたは元気?」
と聞き返す
会話が氷の上を滑っている
あなたはすかさず笑顔で答える
そして
ポイントを切り替えるのに一瞬の間を置くことになる
次に言葉を発するのは
あなたの方と決まっている
あなたが言葉を発する時
私は決まって準備ができていない
そして
あなたが発した言葉は
私の尻を浮かせる
私達が乗ったジェットコースターは
いきなりクライマックスの急降下なのだ
遠くでとびたった鳥の群れが
どこに行ったのか
その答えも見届けぬまま
私たちは加速度に振り回されるのを誤魔化して
階段を降りて
地下鉄に乗るのだ
美しい笑顔であなたは私に訊く
その「元気」とは
どれほどの
どのような「元気」を指しているのだろう
私はいつも黙りこみそうになるが
やっとの思いで
元気だよ
と こたえる
こたえて
嘘っぼくなかったか
いつも心配になる
私は元気なのだろうか
そう訊いてくる「あなた」は
きっと「元気」なのに違いない
私はあなたに
「あなたは元気?」
と聞き返す
会話が氷の上を滑っている
あなたはすかさず笑顔で答える
そして
ポイントを切り替えるのに一瞬の間を置くことになる
次に言葉を発するのは
あなたの方と決まっている
あなたが言葉を発する時
私は決まって準備ができていない
そして
あなたが発した言葉は
私の尻を浮かせる
私達が乗ったジェットコースターは
いきなりクライマックスの急降下なのだ
遠くでとびたった鳥の群れが
どこに行ったのか
その答えも見届けぬまま
私たちは加速度に振り回されるのを誤魔化して
階段を降りて
地下鉄に乗るのだ
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