2011年3月2日水曜日

七つの戯言

1

人を愛することより自分を守ることを優先するようになってしまった人
本当は守るものなどないのに

部屋に飾ってある金色に光るオブジェにしがみついて
自分が影になっていることに気付こうとしない

いまや
漬物石のほうが世の役に立っている
※注1

※注1 この人の皮肉には誰も共感しない。ユーモアのセンスも感じられない。慰めてもらいたくてもそれは無理な相談だ。


2

雨にぬれて光る道を歩きながら
何事も考えることができない


3

月のようだと思った瞬間に
その人は月の話をし始めた

陰りのない月に照らされて
わたしは
自分が何者か分からなくなる
※注2

※注2 かっこつけているようで気持ちがわるい。


4

オーロラって何に見える?


5

小さな宇宙同士が出会うと
まず爆発を起こして眩しい光が放たれる
秩序と混沌、生と死、善と悪、原因と結果など
陳腐なものも含め、対立する概念が
激しく争いあう
その激しさの度合いや規模が
相性や愛の分量、スピード感を決める
※注3

※注3 宇宙を擬人化してどうするつもりなのか。

6

ひとは振り返りながら生きるべきだ

ひとは振り返らずに生きるべきた
ということの
TPOを間違うと
うまくいかない
※注4

弱い人ほど振り返れずに
失敗する

※注4 当然のことを詩の行を割いて言ってくれるな。


7


詩人は詩的でない詩を書くべきだ
無害なロマンチシズムをおっかけてどうなる
詩なんか書かなくていい
頼まれたものを適当にちょちよっとやって
魂は別のものに捧げるべきだ
逃げ足が早くても
追いかけてくれる人はいない

2011年3月1日火曜日

今日、しよう

とっ手がついていて
とっても持ちやすいのよ

リサが言っている言葉が
理解できない

さわらないで
いれて見せてみて
脚は遊ばせあそばせ
飯は召し上がらずに

わざと災いがくるように
市内で竹刀でしないで

ふざけているのか

携帯がおならしたの
そう聞こえたわ 着信が

着ているものをだんだんに脱ぎながら
話すのをやめない

病める会話は止めない?
いいことについてだけ話そ

明日はあたし
はしたないことはしたくない

きょうしよう

2011年2月28日月曜日

悩みの解決

まず、箱に入れる。
透明な箱の中に。

入れたらた
「困ったこと、悩み、負の感情」。

箱を振って
混ぜてみる。

混ざらない。
もちろん消えない。

箱を開けて
マッチで火をつけてみる。

燃えた。
煙。
燃えかす。

燃えカスを指でくだいて
ゴミ箱へ。

手を洗う。
消毒。

ついでに
シャワー。
シャンプー。
トリートメント。
洗顔。
体もゴシゴシ。

鼻歌。
呻(うめ)くような。

タオルタイム(わたし流呼び名)
パウダーパタパタ。
ローション。
保湿液。
歯磨き。
うがい。

パジャマ着る。

灯りを消す前に
透明な箱。
じゃまにならないところに置く。
布をかける。

寝る。

自分にも
布を掛けて。

2011年2月27日日曜日

シャワータイム

シャワーを浴びている

シャワーを浴び終わって
扉を開けると
君がいる世界に
きっと
繋がっているだろう
と 思えてくる

シャワーを浴びていると
いつシャワーを浴び始めたのか
季節はいつか
何年何月か
混沌としてくる

シャワーを浴び終わり
タオルで水滴を拭う時
現れたてきた世界を
生きていくしかないのだろう

それでいい
それしかない

君はシャワーを浴びず
湯船で
体を泡だらけにして
半身浴をしている

微笑みかける君は
僕の手のひらに触れる

シャワーを浴びない君は
別の世界の人なのか

シャワーを浴びながら考えてみたけれど
それがいつのことだったのか
だれのことだったのか
混沌とする

シャワーよ
勢い良く
水滴を放出し
体を刺激せよ
何も考えずに
無数のアタックをさせてくれ

2011年2月26日土曜日

未来 -ある朝に-

いつ始まったのかわからなかったが
周りに朝が来ていた

あなたが抱える銀色の小さなケースの中には
あなたの過去が詰まっているの?

箱にあなたと僕が映っている

耳を近付けて箱を揺すると
小さな鉄琴が
小さな音を響かせ静まった空気を揺らした

過去は美しい秘密

未来は開いた手のひらの
指の間を掠めて
床に散らばった

拾う必要はない

拾わなければ未来は
無限に降り注いでくる

2011年2月25日金曜日

香り

窓の外に咲いた花の香りが
時間を忘れて漂っている

あなたは
この部屋で
わたしを見上げながらシャンプーしていた

焦げ茶色のボトル

空っぽになった

まだ香っている

2011年2月24日木曜日

あなたが見たもの

あなたの眼が見てきたものを
わたしも見たいのに
わたしに見えるのは
荒れた日照りの道を歩いてゆく
あなたの眼
あなたの姿
そして
あなたの唇を塞ぐ
砂混じりの風

あなたが旅立った訳を
あなたは知らない
知ることは縛られることと分かっていたから
あなたは自らに問いかけることなく
旅立っていった
すべてをそのままにして

あなたがわたしの前に現れたとき
わたしはあなたに夢中になった
あなたはあなたを
わたしに惜しげもなく差し出した
次々とボタンを外して
すべての服を脱ぎ捨てて

あなたのからだは
夜の中で陶器のように輝いた
触れ合った部分が熱を帯びて
しっとりと引き合った
あなたの長い脚はわたしに絡みつき
わたしの手はあなたの膨らみをおおった

あなたが見てきたものの中に
わたしも含まれるのだろうか

わたしはあなたの眼になって
見えるものを見て見たいけれど
あなたを見るわたしの眼は
何を望んでいるのだろう

眼をつぶりあなたを見る
眼をあけると
あなたはわたしを見ていないから

2011年2月23日水曜日

あなた

久しぶりにあなたの夢をみて
あなたの香りが私を満たした

寝過ごして目覚めるとカーテンの間から陽が差し込んで
部屋の中に眩しい陽だまりを作っている
一瞬 季節が分からなくなったのは
あの夏の日のつづきと錯覚したから

幸せなことだ
あなたはいないのに
いるような気がする

ブランコから飛び降りて
駆け出した
少年時代の息の乱れ

喉の奥で予感した未来の中
突然抱きしめ合うことになったあなたは
消える運命だったのか

白い2つの山が
息をするたびに小さく波打ち
愛という異人の接近を押し返していた

2011年2月22日火曜日

こえ

たすけてください というこえも
もう ききとれない
ほしのひかりが じめんにあたるときの わずかな おとよりも
ちいさくなってしまったから

あとは まぶたを いっしょうけんめいに あけて
ゆびさきを さしだして 
あのひとに つたえるしかない

まだ おとなになったばかりなのに
からだがしびれ いきがくるしい

くびすじには
ははの ての やさしいかんしょくが
まだ のこっている

かがみのまえにたつと
わたしは つよいめをして みらいをゆめみていた
はしりだせば
だれもおいつけなかった

くつひもをむすび
かばんをもって
まいあさ でかけた

でんしゃの わっかに つかまって
いやほんからきこえる おんがくにききほてれていた

それが いま
わたしは
じめんに はうように よりそって
じぶんの しんぞうのこどうも いたみとしてしか かんじられない

なにかが わたしを とりのぞこうとしている
まけたくない 
という ふとでた ことばが わたしに まけをおもいしらせた

たすけてください 
と いってみた
じぶんにもきこえないよ と
つっこみをいれた

2011年2月21日月曜日

お月さん バンコンワ

心にフィルターがかかり
いつもの街の上を動き回る人々が
よく見える
自分の様子もよくわかる
夜になりライトアップされたオブジェの赤い色が
くっきりと見える

足を交互に投げ出して
歩くことができる
友だちと話すこともできる
うまく喋っているつもりでも
どこかがおっかなびっくりなところがあるが
相手のいたわりが感じられ
気を遣う

最近忙しすぎた上に
過大なストレスを抱えてしまったのだろうか
普段の流れから弾かれ
改札口で歩くことができなくなり
友だちからかかってきた電話にすがりついた

間もなくやってきた友だちは
明るい笑顔とハキハキした態度で
肩を抱えて
歩いた

カフェにはいると
きょうは何か食べたか尋ねられ
食べていないと答えた

運ばれてきたパスタを食べてみた
美味しいのかどうか、いつまで食べたらいいのか
考えた

友だちは心配していた
私も心配していた
何がどうなってしまったのだろう

やるべきことをするため
休むことにした
周りの人が助けてくれるだろう
かえっていいかもしれない
それまでよりもっとうまくいくかもしれない

家に帰り
友だちにコーヒーをいれてもらった
こんなありがたいことは初めてだ

窓の外の空に
月がこうこうと輝いていた
死んだおばあちゃんにおぶられて見た月だ

お月さん バンコンワ
コンバンワではない
おばあちゃんは何度も繰り返していた

お月さん
バンコンワ