2010年9月26日日曜日

新聞連載詩 未来 3

「心の当たりくじ」 マツザキヨシユキ

指で土を掘って 種を一粒落とす
間隔をあけて もうひとつ またひとつ
そしてすぐに 土をかぶせてしまう
種をまくときの気分はなぜか楽しい

これで きっと 芽が出て 花が咲く
どんな花が咲くのだろう
花が咲くころ 自分は何をやっているのだろう

花が咲いたら 写真を撮って うんと凝って撮って
あのこにメールで送ってみよう
あのこはなんて言うのかな

花が咲くころ いま石ころを投げつけたい
にっくきアイツは もう自分の前にはいないだろう
今 手元にある 宝くじは 100円玉2つになり
わたしは せっせと 働いているだろう


メッセージ☆
種というのは「未来カプセル」のようだと、どこかで誰かが言っていたような気がします。
人にとって、自分の「未来カプセル」って何なのでしょうか。
宝くじ、でしょうか?
いいえ、もちろんぼくは違うと思います。ではねなんでしょう。それは人さまざまだと思うのです。
僕にとっての「未来カプセル」は、毎日詩を書くこと、です。いつか花咲くといいなと思いながら書き続けています。

2010年9月25日土曜日

まっすぐ進む

いつかの夏の終り、道が終わってしまう光景を見た

眠っている小峰

小峰が眠っている
眠っている小峰は
どこか別の世界に 何かをしに行ってしまったようだ
ここにいない 小峰の 眠っている姿は
いつまでも見ていたいほど いい
小峰は寝息一つ立てずに静寂を保っていて
それは 最後の一葉をおとさないように という比喩がしっくりくるように思える
小峰を守るものは何もないが
世界中の善良な魂が みんなで小峰を守っているということが
なぜだか はっきりと判る
小峰は 薄く やわらかい色の 衣服をまとっているが
衣服の隙間から 肌を見せている
その肌は かすかに産毛が光っていて
赤ん坊の時と きっと ほとんど変わりがないのだ
小峰の閉じられた瞳は 美しく 小鹿のようなので
だから時折 小鹿がのぞきに来る
小峰は 2本の腕を持ち
手のひらは 5つに分かれている
その手のひらが いつだったか もみじを持って 写真におさまっていた
その光景は 紅葉と手のひらの境界を危うくするような事件だった

小峰は いつ 目覚めるのだろう
唇が 季節の風に 少し乾き
そのわずかな不快に 目を覚ますのだろうか
それとも どこからか飛んできた 綿毛の気配を感じて だろうか

こわれそうで やわらかい 小峰
父母から生まれ でも 誰のものでもない小峰は
いつか 自分を誰かに差し出すのだろうか
リボンを巻いた プレゼントと一緒に
瞳に笑みさえ 浮かべて

2010年9月24日金曜日

錆びたポスト

おいてけぼりにした錆びたポスト
あの家と一緒に
ドングリの木の傍らの
引き抜かれた門柱の奥
草花の咲く庭の向こう側
電信柱の間のへいの向こう側
小さな公園の隣
家路につく足跡が聴こえ
風に流されてきた線路の音が籠る場所
花火大会が屋根越しに見える
カレーの香りが漂い
剣道に出かける少年が飛び出す
落ち葉の中で焼き芋が作られる
その家

外壁に張り付いたポスト
古くて錆びたポスト

いまはもう どこにもないポスト

2010年9月23日木曜日

ふくらむ小峰

小峰はまだまだふくらんでいく
小峰はずんずん伸びていく
小峰はるらるら歌っている
小峰はとんとん冷えている
小峰はきしきし立っている
小峰はりらりら溶けていく
小峰はすりすり熱していく
小峰はねたねたまったりとする
小峰は小峰のことが分からない

2010年9月22日水曜日

観察

小峰は
山より小さい
大地の
ふくらみ

雨にぬれ
水を吸い
くぼみに
ちいさな水たまりをつくり

人を登らせる
生き物を
這わせる

小峰は
来るものを拒めないのだ


くぼみは
水分を
静かに
蒸発させる

そうすることで
小峰は
平静を
たもてるから
月に照らされた
小峰を
横から見ると

いつもと違う
感じがした

2010年9月21日火曜日

合唱祭

みんなに交じって小峰が歌っている
ふくらみはじめた夢

小峰の声が
聴こえる

小峰がからだを揺らして
歌っている

小峰の周りも歌っているが
それと競うように小峰は歌う

声を出すことが気持ち良さそうに
よろこびを湛えている

合唱が盛り上がる
小峰も盛り上がる

小峰と一緒に
僕も盛り上がる

いつか小峰の名前を呼びたい
小峰はそのときは歌わない
歌は胸の中にしまいこみ
僕の名を呼ぶだけ

2010年9月20日月曜日

夏の瞳

お店の中を覗き込んだら
きれいなお姉さんと目があった
かるい笑みをうかべていた彼女は
目があうとはじかれたように
瞳をそらし
すぐに また一瞬僕の方を見た
今度は僕が瞳をそらした
彼女もまたそらした

僕は扉を開けて彼女に告白し付き合いすぐに結婚し
三人の子をもうけた

僕はその店の前に何となくたちどまった
彼女は椅子に座って何かをしていたようだった
彼女がその店の客なのか店員なのか
僕は分からず迷った
目があった瞬間
僕は恋をした

近くで大音量のスピーカーが
J-popを流していた

斜め向かいの店でカツカレーを食べる
そのあいだじゅう
僕は彼女の瞳を思っていた

夏の最後の日差しが
店前に光を当て
人が行きかっている

川の流れの音が時折聞こえてくる
きれいなお姉さんはあの店で
何を感じているのだろう

さようなら
またここに来た時
時間が止まっていたように
あの瞳は僕の瞳に焦点をあわせるだろうか

そらさずに
あわせつづけることに
どれだけたえられるか

2010年9月19日日曜日

おりこうさん

おりこうさんのありんこさんは
りこんしてから
ありがとう

ありげーだーのけいたいでんわ
げーむしながら
けいさんできる

さんだるはいてるさんたくろーす
たくはいぎょうむに
くろうさんたん

2010年9月18日土曜日

終わりへ

たき火のにおいがした
雲と煙は友だちなのだろうか
あるいは霊はどうなのだろう

盆地に夕焼けが落ちていく
灯りの数が増えていく
互いにシーソーをしているのだろうか

高地から低地へ
都市から田舎へ移動する
海は今も凪いでいないだろうか

沈黙をすることが
美しい人を引きつけることがあるだろうか
傷つけるよりも多く

電車が線路をならして走っている
その重さに何が含まれているのだろう
まさか過去の駅で乗せた重い荷物も?

この詩も終わりに近づいて
僕のブログへ旅立とうとしている
終わりは旅立ちの合図なのか