2013年4月21日日曜日

誰かと繋がっていることが

誰かと繋がっていることが
鮮明に分かる時がある

時に 身じろぎもしないで
深夜の寝台列車の揺れを
共有している

いや
共有しているのは
深夜の寝台列車の揺れではなく
地を這っていく感情だ

月に冷やされて
キキ キーと
金属質の摩擦音を発するその感情

射的場の的に向けて
息を合わせて
玉を打ち込むときの
苦い唾

2013年4月20日土曜日

蕎麦をすする音

ぬるい場所に冷たい雨が降って
キノコが夜に育ちます
人はもう発狂寸前ですが
むしろそれは正常だと言わねばならぬでしょう

雨はいろんなことを「なかったこと」にして
雨天のため中止という看板が雨に濡れています

かわいいあの子という人が
箱詰めにされサイズを測られ宅急便の荷物になって
濡れた道を運ばれてゆきます
河合その子とは関係ないでしょう
かわいいあの子は私が継続的に好きな人です

夜の帳というのがあると噂された町には
少し前の時代のナウい人びとが往き来して
ちょっとした喧噪です
闇市で売っていそうなラジオも鳴っています

妄想の畑でキノコ雲が夜に育ちます
私は深呼吸して湧き水を飲み干し
鳥の形をしていない鶏肉を炒めます
昆布の揺れる海鳴りに耳を澄まします

老詩人は昨日から日本海の島へわたり
自ら作った詩を朗読し
気分よく酩酊して布団に入り目を瞑りました

ある線路脇のビルの一室では
コンビニの蕎麦が食べられようとしています
その間
世界は
蕎麦をすする音に置き換えられてしまうことも
知らないで

2013年4月19日金曜日

あなたの悩み


あなたを苦しめる
冷たいあの人は
あなたのそばから
いなくなることはない

あなたを悩ませる
いやらしいあのひとは
あなたの心から
立ち去ることはない

あなたが大すきな
愛しいあのひとは
さよならを
いつ切り出そうか
迷ってる

2013年4月18日木曜日

青空へ


自転車をこぐ音は
きみがやってくる音

背中から近づいて
すぐ脇を追い越していく

空から小鳥が
眺めていたって

教室の窓から見える
通学路の並木道

なんど通ったのだろう
きみのこと追いかけるように

窓から小鳥が
歌っていたって

この町の空の上
風とともに
季節は巡り
きみはここを出て行く

空から小鳥が
眺めていたって

小さい私たちの
大きな未来

仰ぎ見れば
涙の向こう
滲んで見えている
青空

2013年4月17日水曜日

そこだけあたたかい


こうしたらうまくいく
ということが
どうしても
やりたくなくて

うまく生きていくことから
どんどん
遠ざかってしまう
いやな性格

よく分かっている

あなたはあきれて
ため息をついていた
いやみをぶつけて背を向けて

でも
こうしたらうまくいく
ということは
つまらないことばかりで
あなたは私を見て
よく笑ってた
時に指を指して

私も一緒になって
笑ったけど
涙が頬で乾いて
そこだけが寒くて
そのあと
あたたかい指が
私の上に寄り添った

2013年4月16日火曜日

今年の冬は何もなかった
今年の冬は何もなかった
春にはきっと何かある
今年の冬は何もなかった
春にはきっと何かある

2013年4月15日月曜日

首をかしげてあなたを見るのは


首をかしげて
あなたを見るのは
そうじゃなきゃいけない
理由があるの

まっすぐ見ないのは
恥ずかしいからじゃない

私 鳥だから
正面から見るなんて
できないの

神様が
そこがいいよ って
いってくれたから


言葉じゃなくて
ハミングするのは
それがいちばんいい
そうおもうの

おしゃべりしないのは
嫌いだからじゃない

私 鳥だから

手紙を書くのも
できないの


パパ ママが
文字はいらない って
話してくれたから

2013年4月14日日曜日

宇宙の小石

上手に生きないと
幸せになれないと
知らされた日

私は自分に誓った
縁ある仲間を守るために
汚れ役も買って出ようと

傷つけたあの人に
いつかお詫びするために
何ができるのかと

自分の声しか
教えてくれる者はない
自分に語らせるのもまた自分
その自分を生かしているのは
私の中の宇宙の小石

2013年4月13日土曜日

泣き声が聴こえる


さきほどから
誰かが泣いている気配がしているので
あたりを見回してみているのですが
人影は見えません

それどころか
人が隠れられるような物陰さえないのです

虫か
鳥の声でしょうか
すすり泣くような
しかしあまり悲壮な感じのしないその声は

耳をそばだてると消え
しばらくすると
また聴こえてくる

まさか
私が泣いているのでしょうか

そういえば
きのう私は
大事な人に裏切られたのでした

2013年4月12日金曜日

どうしても必要

自分の重さで自分を支え
輪っかを抱いて
ベタベタを取り出させる

コトアルゴトニ
程よく回る

一人きりの真っ暗な夜には
ひときわ
思い出を語りたくなるので
涙に濡れ
吐く息で曇らせないよう
注意していなければならない

私は何度となく選ばれた
何度となく
姿を消した

某氏がいう

あなたが必要だと
透明なベタベタを取り出すことは
どうしても必要なことだと