2011年4月22日金曜日

どうしたの?

考えごとをしようと
きょうも波打ち際にきてみたが
海は何も教えてくれない

木製のデッキの階段にこしかけて
砂浜と海をみる
大きな雲が
ゆっくりながされている

私もながされているのだろう

コンビニで買った
ドリップコーヒーのカップは
もう空だ

私のこと
誰も見ていない

私だけ。



いなくなった人が
どこかにいるような気がしてくる

ドアを開けて
帰ってくるだろう

どうしたの?
と怪訝そうに訊ねて

2011年4月21日木曜日

空の渚に

ドカンがドカンと響いた
夜間に
きみというあなたがやって来た
きみというのはあなたの名前だ

あなたは
わたしの
穴の空いたタオルをみて
穴の空いていないタワシをわたしに渡した

わたしはタワシを
タオルの穴からすかしてみてみた
すると
タオルに空いた穴が
あながち悪いものではないことがわかり
代わりにまっさらなタオルを買うのは罪ぶかいことのように
思われてきた

きみはわたしにタワシの話しをし始めた

わたしは仕方なくその話を聞いていたが
その話は長くそのうち飽きてしまったので
いつの間にか眠ってしまった

またもやドカンがドカンと響いた
きみというあなたは帰っていった
タワシもどこかへ行ってしまったのか
みあたらない

ここには
もう誰もいないみたいだ
ただ
波が頭上で
波打っている

そのうち
凪もやってくるだろう
空の渚に

2011年4月20日水曜日

僕の服は潮の香りがする

僕の服は潮の香りがする

靴には砂粒が入っている
耳には波が砕ける音が残っている
防波堤で激しく砕ける波
物語の始まりのようで
終わりのような 砂浜の道

指にはカメラボデイの形が
背中にはあなたの視線を感じる気配が
コンビニで買ったコーヒーの苦さとその熱が
残っている

空には満月から1日たった月が
暗くなった海の手前に立つ
あなたの瞳のうえで光の点となっている

僕の服は潮の香りがする
あなたには
なにが残っているだろうか

2011年4月19日火曜日

ノープランながら応援に

さて、でかけよう
ノープランながら応援に

動きやすくて
ちょっと派手目な色をまとって
靴紐をキュッと結んで

雨にぬれてもヘッチャラっていう感じで
スタスタ歩いて

地下鉄を乗り換えて
人ごみの中を分け入って

むかし藪の中に宝物を探しに
行ったように

音楽を聞きながら
歩いて行こう

知り合いに出会えるかも
面白いことがあるかも

わくわくする気分を持って
お財布 落とさないように気をつけて

ノープランながら応援に
ノープランでもなんとかなるから
応援に行こう

そして
応援し終わったら
家に帰ろう

大きな都会の小さな部屋

終電があれば大丈夫
遅くなっても
あしたは
また ノープランでも

いいえ
明日は プランがあったわ
大事な約束が


(K・Mさんに)

2011年4月18日月曜日

マレーシアの風に吹かれて

マレーシアの風に吹かれて
新しい高層ビル群を見渡して

沈んで行くのは
夕日ではなく
私たちのほうだ

つぶやいいてみる

邪気を払うようだ、な

そう思ってみる

いつも自分が生きていると思っている街から
関係ないと思っていた街へ
マイルを使って
きてみると

そこにあったのは
自分の記憶していたものばかりだった

懐かしい、の、かな

そう思ってみる

高層ビルから
古い家が並ぶこの道まで
すべり台を設置して
来られないかな

楽しいだろうな
子供よりも
大人には

ボウリングの玉を
高層ビル群に向けて
なげるのもいいな

辺りから聴こえる歌を
応援代わりにして

東京よ
何か忘れていないかい

わたしは
マレーシアの風に吹かれて
ちょっと気分がいい

マレーシアの風、なんて
大雑把ないいかただが
これでいい、のだ

そう思ってみる

2011年4月17日日曜日

なんだかわからないけど書きたかったもの


普段は鈍感でもいい
チャンスは一度しか来ないから
その時に力が発揮できればいい
勇気を出して全身全霊で挑戦だ

チャンスを勝ちとったら
自信が湧いてくる
冷静にやるべきことをやっていけば
すべてはよくなっていくだろう


自分のことが嫌いなら
嫌いな自分のために頑張れるはずがない
好きなところを見つけて
そこだけを見つめてあげればいい

好きなことを続けてもなかなか芽が出ない
焦ることはない
世間にない自分に合う方法が見つかるまで
あきらめてはいけない


大きな失敗をしてもいい
もっと大きな失敗が来るかも知れない
人間なんてそんなモノだ
経験済みの先輩が参考になる

失敗したら取り繕わずに
真実の姿を見なければならない
しかしそれにとらわれずに
新しい自分を作っていくのだ


締切りが来たら提出しなければならない
このルールは案外役に立つ
中途半端な自分を許す言い訳にもなる
集中力を高め必死になるための指揮官にもなる

提出した後で提出したもののことを考えるのは
無意味なこともあるが役に立つこともある
しばらくしてから反省すれば客観的な評価ができる
新しいアイディアをそこに見つけることも珍しくはない


作者独白 

いままでずっと日記のように詩を書いてきて、とても勉強になりました。
飽きっぽい自分は、一つの書き方では飽きたらずに、いろいろな方法で書くことを開発できたからです。
また、過去のものを読み返すことで、自分の癖や自分らしさを確認することもできました。(自分らしさは、もちろん肯定できるものばかりではありませんでしたが。)
毎日書くということから新たに編み出された、詩を書くための「発想法」のようなものも、一つや二つではありません。詩を書くとこの効用も副産物として実感できました。
最近、震災によるいままでの社会体制への疑念の潮流から、詩人・アーティストなどの表現者が、日本の社会でなにができるか、自分も書きながら考えることとなりました。そのなかでは、詩の実用性や機能について、簡単にいえは「詩の力」について、どう強化していくかということが避けられないテーマでした。
以前から詩と詩のメディアについて自分なりの理想や野望を持ち、投稿メディアや場をつくってきた自分は、やはり、こうしなければという思いが、段々確かになってきました。
これは感想に過ぎませんが、そんな気持ちを少しでも具現化していければと思っています。

2011年4月16日土曜日

君のTwitterに返事したいのだが

みんなが集まってチャリティをやっている
楽しみながら
社会貢献をしようとする集い
その輪から
弾かれて
節電モードの駅に入り
電車を乗り継いで家に逃げ帰る

弾かれたのは何?

この間まで
作ってきた街のオプションが
停止している
いくらお金をつぎ込んだことか

そのお金はもちろん帰ってこない
こんなものつくらなければよかった

明るすぎる街の姿を思い出す
レクイエムのようにテレビの音が流れている

才能ある若者が
暗い通路の影で
一生懸命
誰かと話している

ジェスチャーしたりして
笑顔を浮かべたりして

その脇を通りすぎていくのは
どこかの詩人が書いた時代の文脈ってやつかな

ぼくは手のひらの小さな画面を覗き込み
指で触れる
こんなこと
一日何回繰り返しているのだろう

そう頭の中で思った
何回も思った

これも
何回目だろう

2011年4月15日金曜日

想定外の計画

瓦礫の山
という慣用表現
瓦礫が積み上がってできた山のこと

瓦礫が見渡すかぎり続いている
瓦礫の道
瓦礫の荒野

一面の
瓦礫の海
そのなかで
小高くなっている
瓦礫の丘
瓦礫の崖

瓦礫の荒野

人が生き埋めになっているかも知れないのは
瓦礫の家
死んでしまった
瓦礫の墓

瓦礫の山から
人を助けるのは
救出劇
これは慣用表現

自然災害は四字熟語

災害報道
報道特別番組
いまはもうない
緊急報道特別番組

普段の体制

瓦礫の下で
テレビを観ている人はいないのだろうか
電気も来ない
電波を信じる?

瓦礫を撤去
閉鎖された遺体安置所
風評被害
出荷制限
避難指示
計画避難

魚を値切る
魚を取らない
稲を作付しない
株主代表訴訟を恐れる
働く場所がない
家族を失った
知人を失った
見つけられない

はやりの言葉が
慣用表現になっていく

想定外
想定外の計画

2011年4月14日木曜日

あの男のように

46歳という年齢は
関係するのだろうか
なにかをするときに

なにかをするときに
本人は年齢を忘れているのだが

忘れたほうがいいことと
憶えておかなければいけないことは
同じ引き出しの中にはないのだが

同じ方向をみて歩いていたと思っていたあなたが
突如怪訝そうな目でわたしを見るのは

わたしが何か不思議な動きをして
憶えていたほうがいいことを忘れ

忘れていたほうがいいことを
思い出しているのが知れてしまうからなのか

しまった  と思ったときにはもう遅く
いつものように連れは遠ざかり

さかりのついた猫が勢いづいて
無謀な喧嘩を挑むのに憧れたまなざしで

深夜にあなたに無謀な計画を打ち明けたあのときの自分を
また呼び込もうとしている

お呼びでないのがセールスポイントの
あの男を慕うように

2011年4月13日水曜日

暗い花

青い空を背景にして
あなたをあおりぎみに撮る

視線を移す度に
波打つ胸

声を発するたびに
波紋が広がり

夕暮れが早まる
ピンチョスをつまむ指

石畳を過ぎる靴音
コットンの開かれたえりから

こぼれてくる香り
生白い稜線

独りで居るのが怖かった時代
不安の列が連なって

見られているふたり
背景にアザミ

アザを見るという名前の
暗い花