いらないものを
すてにいく
みちみちわたしが
いなくなる
こないてがみを
まつよるに
だせないてがみを
かくします
すあしにサンダル
すなけって
ふるあめごとに
わすれてく
あきちのはなに
わらいかけ
まえをむいたら
ないたかお
ぼくが暗い目をしているのは
瞳にさざなみを立たせないため
木陰に身を伏せて
太陽の熱を避け
風も気付かずに頭上を行き過ぎる
ぼくがあなたに近づかないのは
あなたに知られることなく
あなたを見つめるため
いつまでも見つめているため
あなたの何もかもを
吸い込んでしまうため
あなたとの間に物語を作るため
その方法を見つけるため
その奇跡を逃(のが)さないため
まっていてください
待つ人がいない私を
と 小さな鳥に頼んで
外に出ると
懐かしい木の香りがした
もうすぐ夏なのだ
また
夏が来ることが
私はうれしい
あの輝いていた日々が
また私に訪れるだろうか
答えてくれるものはない
けれども
耳打ちしてくれるもの
チラチラと光って
合図してくれるものがあることに
私は
お礼を言いたくなった
ありがとう
ありがとう
彼は楊枝の先をとがらせる仕事しています
彼女はマッチ箱にマッチを詰める仕事をしています
二人はいつも一緒にランチを食べます
私の職場は二人とは遠いので
私はたまに仕事を休み
一緒にランチを食べに行きます
私の仕事は
針金を曲げてクリップを作る仕事です
ハザードをつけた車の人が後ろのバスに注意される男が「今日は碁盤の目の敵討ち」と言いながらスズメを次々に燃やす見ると片方の手のひらに蜂蜜があり火がついている
ーーきょうの夢 5月14日
だれもまだ本に書いたことがないことを
彼は書いていました
きのうの夕方のことですが
彼は
まだだれも
訪れたことがない島にいました
そこには何故か
木の椅子があって
天板がタイルで作られた机もありました
彼は
その場所にいました
(今はいませんが)
彼は
今までの人生ではなかったほど
スラスラと 万年筆で
革の表紙のノートに
書いていたのです
いま
彼がどこで何をしているかは
この文を書いている私にも分かりません
ただ
だれもまだ本に書いたことがないことを
彼が書いていたということを
知っているだけです
ミンナニテイル
ミンナオンナジ
スレチガウヒト
アルイテイル
キモチヲカカエテ
ニソクホコウ
アイハアルカ
スキナヒトハイルカ
キライナヒトハイルカ
アキラメテイルコトハ
ドンナコト?
スレチガウヒト
ニドトアワナイ
マタアッテモ
ワカラナイネキット
ミンナニテイル
ミンナオナジ
ジブンダケトクベツ
ココカラミテル
ミンナノコト
ワタシノキモチ
ワタシガミテル
ミテルワタシノキモチヲ
アナタ
オシエテヨ
アナタ
タスケテヨ
ことばでないものでかたるもの
公園の錆びたベンチの上で
行きずりの風と一緒
目に入ってくる
下弦の月
ツツジが薄暗がりで色鮮やかに
たむろしているのは
いまの私たちとおなじ
誰もいない場所で語ること
原宿駅のホームにせり出した
神宮の杜の緑
その幾千枚の葉
ことばでないものでかたるもの
涙をこぼさずに眠りについたもの
さっき
表参道で行き交っていた人の群れ
ぬるい空気をかすめて
上空を飛来する
尖った鳥の嘴
小さいころ
私が窓を開けて逃がしてしまった
妹の鳥が
森林の上空をさまよい飛んでいる
恨み言を言っているのかと思ったら
もうそんなことは言っていないよ
という
ほんとはずっと心配だった
きみのこと
だれにも言わなかったが
わすれることもなかった きみ
いま
太陽の下で
紙に書いて告白します
窓から逃げていったきみの生きる道は
どんなにか
変わってしまっただろう
私が窓から逃げ出したのは
きみのことがあったから
帰る窓は
なくなてしまったけれど
きみが恨んでないと知って
私もきょうから
恨み言を言わずに
生きてゆける
このまちの上空を
さまよい飛んで
いぬをハグするおんなのひとが
いぬにかおをなめられている
きれいにけしょうをしていたが
はげてしまっている
わたしは
みてみぬふりをする
わたしはあんなになかのいいひともいなければ
いぬもねこもいない
あのなかのよさは
どこかいたいたしいとかんじてしまうから
ひとしきり
なめられおわったおんなのひとが
わたしにちかづいてきて
あいさつをする
さめたあいさつだ
わたしは
けしょうがはげたはだを
いたいたしくおもうが
おんなのひとは
それをきにしているようすがないので
わたしはじぶんだけがきをつかっていることに
いらいらしてくる
しかしかおではわらっているので
わたしはきっといやらしいにんげんになってしまっているのだ
なんということだ
いぬをはぐして
かおをなめられるおんなのひとのおかげで
わたしは
こころがくもってしまった
どうしたらはれるのだろう
いっこくもはやくおんなのひとからはなれて
すきなジェラードでもぺろつくか
あ まてよ
ジェラードのきもちにわたしいっしゅん
なってしまった
ああ
こまったものだ