2013年6月20日木曜日

夕陽色のアイスティ


テーブル越しに新宿の雑踏を眺めながら
夕陽色のアイスティをかき回します
コップのなかに渦巻きが現れます

風か吹いて
静止していた空気が巻き込まれます
氷山がぶつかり合い砕けて弾け飛びます

なまぬるい者たちは居づらくなります

唇に挟んだストローから
冷たい液体を汲みあげます
口の中を潤して  喉を冷やして
古い記憶が呼び起こされます

透明なもの同士が仲良くします
猥雑なもの同士が混ざりあい
お互いを攻めあいます

私の周りの空気も渦を作って
私は台風の目のように
動けなくなります

どこかに連れ去られたテーブルには
援交のカップルが肘をついて
ギラギラする月を
見て見ないようにしています

じんせいは わからない (過去の詩から)


よいことをして
わるいこともして
よくもわるくもないことをして
どちらかわからないことをして
おとなになった
おとなになっても
よいことをして
よくないことをして
どちらかわからないことをして
ろうじんになった

じんせいは
むずかしい
じんせいは
おもしろくて
つまらない
あくびをしたら
しかられる

しかったひとも
あくびをしてる

2013年6月19日水曜日

願い


「人にやさしく」
という詩がすきだ

人にやさしくする
というのが
ぼくの願いだから

やさしくしたいと願う人は
世の中に
たくさんいる
だが数は問題ではない
身近な場所にいるかが問題だ

人にやさしく
とは
標語のようでもあり
座右の銘のようでもある

ぼくは人にやさしくしたい
自分のこころに関係なく
人に感動を与え
こころの緊張をほぐしてあげたい

人にやさしくして
責められることなく
空に消えて行きたい

2013年6月18日火曜日

M式節食法


たとえば
ものを食べるときに
甘いものの間に苦いものを挟むと
より甘いものがおいしくなる
さらにそれを繰り返していると
苦いものもおいしくなる
際限のない食の快楽

口の中は常においしさを感じ
飽きることがない
これが
私が発見した
人が「デブへの道」と向かう法則である

すなわち
甘いものの間に苦いもの(茶など)を挟まなければ
味覚はすぐに飽きて
食欲は失せる

そしてこの理論を応用したのが
飯とおかずを混ぜて食べるという
ダイエット方法である
これを私は「M式節食法」と名付けた

例えばカレーライスなどは
カレーとライスは言うに及ばず
薬味類もペースト状にしてすべてをミキサーに掛ける
ちょうど離乳食のような見た目となる
これをぬるい温度で水や茶を摂取せずに
飽きるまで食べる

そのようにすれば
ダイエットに苦しむことはない
食の歓びから解放され
快適に太らない生活を送れるだろう

私が言うのだから
間違いはない

2013年6月17日月曜日

あなたの瞳が深く鎮んでいるので



あなたの瞳が深く鎮んでいるので
私は雨粒に仕立てて
明るい窓に無数にばらまいた

瞼が痛くなるほど逆光で眩しい
滴は光を溜め反射し透過させて
無言に一番近いやり方で話しかけてくる

私は答えの意味を
どう伝えていいのかたじろぐ
あなたはもうため息を長く小さく吐いて
どこかへ歩き出そうとしている




6月の湿った小さなノイズが絶え間ないこの世界で
入射角が違う光線同士のように
交わることはないから

片手で耳を塞いで
聞き耳を立て
息の音 心臓の鼓動と
周囲からくる波長を重ねよう

そうすれば
滴たちの一つが共振して落下し
何かの始まりを告げてくれるかも知れない


2013年6月16日日曜日

お前とお参り


お前と
お参り
大回り

お前は
前に
自前の
絵馬を
もって
後ろで
世迷い言

お前の
前の
名前と
いまの
名前の
名字
大違い

後ろの
お前
前から
変だ
だから
迷わず
前を行く

お前と
お参り
大回り
大雨降って
前のめり

2013年6月15日土曜日


私がいなくなった
あなたが知ってるあの場所にはいない
もう私は別の場所にいる
誰も訪ねてくることができない場所
そこは細い隙間だから
間に挟まってしまっているから
偶然搔き出してもらうまで
私はあなたの前に現れない
ここは暗くて埃っぽい場所
私はあのとき写真に閉じ込められた魂

メールしたら


メールしたら
返事が来た
親切な
悪魔から

もう一度出してごらん
でも
きみの大切なあの人は
もうそこには
いないよ

2013年6月14日金曜日

つむじ風をつくって

つむじ風をつくって
あの人に伝えたよ
あの人が気づかない
私の思い

あの人の思いが
霰になって降って来たよ
私が知らなかった
あの人の思い

2013年6月13日木曜日

美しい世界

あの人の愛はなくなってしまった
もう私に向けられる愛はないのだ

猜疑心が周りじゅうの人の心に芽生えて
誰もが私を嫌い疎まし思うようになった

ずっと続けてきた仕事も私を嫌い
あっさりと私を手放した

集いの場にも呼ばれなくなり
あらゆる友人知人からの誘いもこない

おまけに皮膚がただれ
歯も抜け落ち
悪夢にうなされ
精神を病んだ

錆びた自転車はパンクして
歩く方がましになり
食品は消費期限がくるまえに
カビたし腐ったりもした

物陰から小蝿が湧き上がり
雨漏りもひどく
エアコンも壊れ
自分自身が不快指数の塊になった

思い出のなかに愛を探し歩いても
磁石のように弾かれて
見つけることができない

一人で座り心地の悪い椅子に座り
片目だけ開けてコーヒーを飲んでいる
生きていることの幸せに涙しながら
それでも美しくあり続けるする世界に驚嘆しながら