2012年1月3日火曜日

世界に一つだけじゃない花

毎年咲いては散っていく
花を思うと
私はもう散ったことがあるはずだ
と思う

散ったときは
気づかなかった

また咲こうとしている
今度は
どんな花びらをつけるのだろう

これは悪いくせか
私は私のことで
頭がいっぱいだ

花たちは
みんなそうしている

世界に一つだけの花なんて
意味がない
私はあの花たちと同じように
やり直したいのだ

季節の到来に合わせて
空にこの手を広げたい
風に吹かれても
負けずに笑ってみたい

2012年1月2日月曜日

予感

何かの予感が
玄関のドアをノックした

はーい、
ちょっとまっててね
いま開けますから

何かの予感は
待っていた
ドアの前で
小雪に降られながら

私は
慌てて
ドアを開けた

そこにはあなたが
立っていた
白い息を吐いて

私は
あなたの雪を払いながら

どうしたの。

ときいて
部屋の中に誘い入れた。

あなたは部屋の真中に
崩れ込むと
しばらく私の家で
話をしながら
何かを探していた

夜になった

玄関の外に
何かの予感が立っていた

晴れた空に星が見え
予感は⭕⭕に変わろうとしていた

2012年1月1日日曜日

関心事

旅先で充電した電池をつないで
メールしてみる
それは
普段と同じかな
受け取った人は
なにか違うものを感じるかな

私の体の中にも
旅先の何かが
充電されているかな

中に溜まった力を使うとき
何か今までにない
素晴らしいことが起きないかな

2011年12月31日土曜日

一休みする場所について

くまさんと一緒に
歩いて行こう
うさぎさんはさようなら
遠くには火山が見える
あの煙の先の
雲の下あたりに
綺麗な街がある
そこまで行ったら
一休みしよう

うさぎさんが
いるかな

2011年12月30日金曜日

2011年12月29日木曜日

間違って愛してしまうあなたへ

クリスマスツリーは
お正月が過ぎたら飾りましょう
お漬物はセブンイレブンで買いましょう
洗濯物はつららの隣に干しましょう
ナッツ類はすぐに食べましょう
手紙は開けずに捨てましょう
サイドボードは真ん中に置きましょう
石にはホイップクリームを塗りましょう
よく来る客は風呂に入れましょう
ナナカマドの影には隠れましょう
引き受けたら大声を出しましょう
月が出たら酒を仕舞いましょう
苦しい時は正面をよく確かめましょう
ルビーを見つけたら手を叩きましょう
よく確かめたら捨てましょう
組曲はバラバラに並べ変えて聴きましょう
胸を見せたら交代しましょう
線に沿って剥がしたら床に置きましょう
揺れが収まったら潜りましょう

以上が私のアドバイスです

2011年12月28日水曜日

捨てたくない

日本から持ってきた古いパジャマのズボンは破れて色っぽいスカートみたいになった。
靴下の一つは片足に穴が空き、間もなく、もう片方にも穴が空いた。
これらはさよならするものたちだ。

捨てたほうがいいものが
他にもありそうだが
なかなか捨てられない。

とっておくというのが
私の性格だが
煮えきれない思いも同様に
とっておいてしまう。

断捨離というのが
うらやましい。
やる気がないのに
うらやましい。

でも
少しだけ真似してみたいのだ。
少しは気分が軽くなって
新しいものが見えてくるだろう。

だが、
効能がはっきりしても
性格が邪魔をして
思い切ったことはできないだろう。

人からはよく
思い切ったことをすると言われるが
本人は
自分なりに熟慮の末
おそるおそるやっているだけなのだから。

ところで、
ここ数日は試験勉強ばかりしているが
パジャマと靴下のことが気になっているのも確かだ。

捨てる前に写真を撮ろうと思っているが
そうしたら
彼らは永遠の生命を得ることに
なるのだろうか。

過去に捨てなければならなかったものたちが
永遠という駅で
私に手招きをしている。

絶望の谷には何も落ちていない

絶望の谷には何も落ちていない
孤独の影さえ見ることができない
日は暮れかかり
どんよりと冷たく湿った空気が忍び寄ってくる
カビのにおいが立ちこめて
逃れるすべがないことが知らさる

体の向きを変えれば
少しは景色が変わるが
もう前に見た景色は忘れている

いつからここにいたのか
迷い込んだのか追い立てられたのかも分からない

心臓の鼓動と息の音はしているが
その数を数えることはできない
星は出ているのだろうか
ここは屋外のようだが
なぜ空が見えないのだろう

立ち尽くしているより
歩いていた方がいいのだろうか
靴紐がほどけているようだ

耳を澄ますと
静けさに圧倒されそうになる
何という轟音だろう
体の中を甲高いエンジン音をうならせて
黒い輸送機が飛行していく
戦地から帰るのだろうか

目を閉じても
何も変わらないのは何故だ

小学校の授業を抜け出して
掛けていった裏庭の花壇のミツバチが
この世界を想像しているのだろうか

誰かが誰かを呼ぶ声が
上空を通過する
私の名前を呼ぶ人は居ないのか

何らかの変換装置が作動して
私には届かないだけなのか

2011年12月27日火曜日

暮れかけた商店街の道を

暮れかけた商店街の道を
下を向いて歩いていたら
そのこの横顔が
逆光の中で
いきなり光ったんだ

一瞬のことだったけど
シルエットは形のいい鼻の輪郭と
ふっくら盛り上がった唇を浮かび上がらせた
小さな光の欠片となった前歯は
夜空の星になろうとして飛んでいった

暮れかけた商店街は
落ち葉の雰囲気もして
足音にカサカサという音が混ざる
あの落ち葉は何日かまえに
わたしの肩をトンと叩いて落下した落ち葉だろう
商店街に人は多くも少なくもなく
冬のやや冷たい風が吹いている

そのこの額は
頭に優しい髪を湛え
体はそのこをいろんなところに連れ回してきたが
たぶん仲良くやっているのだろう
不穏さはなく
心地よさが湧き出ていた
笑顔はその一つの表現だろう

下を向いて歩くのはやめたいと
ずっと願ってきたが
いつのまにかすっかり慣れてしまい
目には動く灰色の道しか見えなかった
方向さえ決めれてやれば進んで行く道に
特別な思いもかけず
ただ単調になりかけていた

だかあのこの横顔が
逆光の中で
光ったとき
カラー写真が心に焼き付けられたんだ

薄暗い商店街の道は
私の心を映して
あかんべーをして
灰色の舌を晒しているが
その上を
慌ただしく人は通りすぎ
あのこは
いつまでも止まっている

動くことを私の心が許さないからだろう
だが間もなくその壁は破られ
動き出すだろう


これはまだ願いにすぎないのだが
薄暗い商店街のそのこの横顔が発した肉弾は
私の弱った心を間もなく打ち砕き
景色は動き
輝き出すにちがいない

それを見てみたい
岩陰から
こっそりと
できれば
だんだん堂々と

2011年12月26日月曜日

何度も経験している君に

何度も経験している君にしてみれば
それは形式的なことに過ぎず
見ているだけでも飽き飽きしているのだろうが
まだ経験していない私にとって
それはとても刺激的でときめくような出来事なのだ
だから口を出さず見守っていてくれないか
答えや本質を知っているからって
何度も経験しているからって
うまくできるからって
偉そうにできることではない
初めてやるときの気分を
君は思い出せるか
君はYesというかもしれないが
それなんだっていうのだ
私はいま
初めてそれを体験することで
こころが
満たされている
うれしいのか辛いのかさえ分からない
なにをどうやったらいいかは
他人からの受け売りだ
だけど
君のほうがオリジナリティがあるのだろうか
私はそうは思わない
私はうまくできないかもしれない
うまくできるかもしれない
またやりたいとおもうかもしれない
それが形式的なことでも
何度も繰り返しても
いつも飽きもしないで
次を待とうとするかもしれない
そんな私を
君は笑うだろう
でも
そんな君を
私は笑いはしない
私には
そんな暇はないのだ