2011年9月16日金曜日

希望の姿

古い建物の窓から乗り出して
あなたは電話しているけれど
その建物が完成したときのことを
あなたは知らない
あなたのママは
まだあなたを産んでいなかったし
あなたのパパは
まだ知らない外国の人と付き合っていた

あなたが生まれた時
その建物は
もう生まれて20年が過ぎていた

建物は
完成したときのことをよく覚えている
オーナーのオジさんが初めて建てた建物だったから
友人知人関係者たちが集まって
お酒を飲んで
それはそれは大騒ぎしたものだと
オーナーのオジさんは
希望に胸を膨らませ
翌日
なんと結婚を申し込んだのだ

多くの人たちが
ピカピカの建物をたたえた
オジさんは
新しいお嫁さんを思いながら
くる日もくる日も
建物を大事にメンテナンスした

だから
建物は大活躍して
入居者を喜ばせ
オジさんに富をもたらした

そのオジさんも
いまは
もうここに
来ることはなくなってしまった

あなたは
窓から
雲が敷き詰めれた空や街の景色を
見るともなく見て
色んな表情を作りながら
電話している
くすんだ外壁から
あなたの鮮やかな色と優しい曲線が輝き
私は目を奪われている

建物は
オジさんのことを思っているが
窓から乗り出しているあなたのことも
きっと好きだ

私は
この建物に新しい風景を見出している
どこかに芽生える私の希望を
この建物に
重ねられるから

何もかも失った私には
希望の姿が眩しいほどに
よく見えるのだ

2011年9月15日木曜日

十年前の九月十五日に書いたもの

あしたのあしたはあさって
あさってのあさってはやのあさって

あさってのきのうはあした
あしたのおとといはきのう

きのうのしあさってはあさって
あさってのおとといはきょう

あしたになったら
どうなるだろう

じゅうねんごになっても
あしたはあしたかしら

2011年9月14日水曜日

愛を続ける

庭からは見えないんだ
橋からも見えない
木々の隙間からも見えない
テニスコートの向こうにも
風が渦巻いている場所にも
見えない

想像して
耳を澄ましても
聞こえないんだ
遠くの雑踏の中にも
子供たちのはしゃぎ声や
誰かを呼ぶ声の後ろからも
聞こえてこないんだ

触れないんだ
手を伸ばしても
近づいても
向かい合わせになっても
触れられないんだ
そこにいても
目を合わせても
触れられないんだ

2011年9月13日火曜日

夜の街

きつく締めて
硬く結ぶ

サッと抱いて
少し揺らす

月の舌で
肌を濡らす

夜の街で
影と暮らす

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2011年9月12日月曜日

片思いの月

月を見上げながら歩いていたら
道に迷ってしまった
こんなときに
旅先から
愛するあなたに電話するのは
やめよう

きっとあなたも
道に迷っているに
違いないから

月からみれば
2人は一緒も同然
いつも会うカフェの
飾り物の風見鶏が
青く光って見えている

また
あそこで
一緒にすごすんだ

そのとき
私は片思いの月
悲しくて身を細らせている

2011年9月11日日曜日

いやなプレゼント

目覚まし時計の中に
蝉を隠して
あなたに贈ろう

気まぐれに
ジリジリ鳴るよ
気まぐれなあなたに
目を覚ませ の合図

2011年9月10日土曜日

これも性格

ぼくのほっぺは
ふくらんでいる気がする

こんなにふくらんでいなくても
いいのに

おまけに拳はまるい気がする
熊に近い形に見える

体もずんぐりムックリしている気がする
下手するとムッツリナントカだ

だから
自分と似ていない形にあこがれるとすると
すらっとした細身で
ほっぺはスッキリしている形
ということになる

また
オタクで小心者
見栄っ張りでワガママ
自分が大事で
イベント好き
詩人を気取りたがり
特別感をもとめる
人を驚かすのが好きで
驚かされるのは嫌いな
気がする

とすると
同じように
社交的で勇気があり
素直で親切
特別なものを求めず
見栄を張らず自然体
人を驚かせない
性格に惹かれる
ということになる

そんなことを考えていたら
自分の形や
性格をなおしたほうがいいと
思えてきた

そして
いつものように
考えるのをやめてしまう

これも性格

2011年9月9日金曜日

詩人のスーパーカー

これは
ぼくが作った電気自動車なんだ
とその詩人は言った

*これは、最終行にもってきてもいいかな

巨きな会場の床一面に
テストコースが設置されている
きょうは昼の生番組で
スーパーカーを披露することになった

サングラスを掛けた司会者が
ゲストを呼び込む
私も一足遅れて一緒にでる
サポート役だからだ

さっきまで
会場内のレストランで打合せをしていたときには
客はまだ少なく
白けたらどうしよう という感じだったのに
いつの間にか二階の上のほうまで客はが入り
心配は別の心配に変わった
盛大な拍手と歓声に
圧倒され
失敗が怖くなったのだ

スーパーカーは
ゴーカートのようなおおきさで
床は紙でできている
ボディは夏休みの宿題と同じ
牛乳パックで作ってあるが
仕上げに凝ってある
ドライバーと
後部座席にもう1人乗れるが
きょうは
車の不具合を調整する使命で
私が同乗する

コマーシャルが終わり
サングラスの司会者がスタートを盛り上げた
ついに
走り始めた
だかあろうことかすぐに
ボディがしなって
よじれて失速した

2人でよじれを直しながら
平静を装い
走り続けようと
必死になった

実況のアナウンスが盛り上げようとしているが
無理だ!

いったいどこが
スーパーカーなのだ
といった様相だ

そのとき
ドライバーが振り向いて
後ろに設置された
ちいさなワイヤレスカメラに向かって
カメラ目線で言った

これは
ぼくが作った電気自動車なんだ

2011年9月8日木曜日

雨が降り
あたり一面が濡れた

あなたの頬に
マイナスの記号をつけたら
いままで生きてきた人生が
幸せになるか
不幸になるか

もし不幸になるなら
マイナスの記号は
不幸が訪れるときまで
とっておこう

雨があがり
地上に湿った風が吹き
見渡す限りの
光る街が現れ
海と地続きになる

風に置き去りにされた私は
どんな符号を待っているのか