2011年4月15日金曜日

想定外の計画

瓦礫の山
という慣用表現
瓦礫が積み上がってできた山のこと

瓦礫が見渡すかぎり続いている
瓦礫の道
瓦礫の荒野

一面の
瓦礫の海
そのなかで
小高くなっている
瓦礫の丘
瓦礫の崖

瓦礫の荒野

人が生き埋めになっているかも知れないのは
瓦礫の家
死んでしまった
瓦礫の墓

瓦礫の山から
人を助けるのは
救出劇
これは慣用表現

自然災害は四字熟語

災害報道
報道特別番組
いまはもうない
緊急報道特別番組

普段の体制

瓦礫の下で
テレビを観ている人はいないのだろうか
電気も来ない
電波を信じる?

瓦礫を撤去
閉鎖された遺体安置所
風評被害
出荷制限
避難指示
計画避難

魚を値切る
魚を取らない
稲を作付しない
株主代表訴訟を恐れる
働く場所がない
家族を失った
知人を失った
見つけられない

はやりの言葉が
慣用表現になっていく

想定外
想定外の計画

2011年4月14日木曜日

あの男のように

46歳という年齢は
関係するのだろうか
なにかをするときに

なにかをするときに
本人は年齢を忘れているのだが

忘れたほうがいいことと
憶えておかなければいけないことは
同じ引き出しの中にはないのだが

同じ方向をみて歩いていたと思っていたあなたが
突如怪訝そうな目でわたしを見るのは

わたしが何か不思議な動きをして
憶えていたほうがいいことを忘れ

忘れていたほうがいいことを
思い出しているのが知れてしまうからなのか

しまった  と思ったときにはもう遅く
いつものように連れは遠ざかり

さかりのついた猫が勢いづいて
無謀な喧嘩を挑むのに憧れたまなざしで

深夜にあなたに無謀な計画を打ち明けたあのときの自分を
また呼び込もうとしている

お呼びでないのがセールスポイントの
あの男を慕うように

2011年4月13日水曜日

暗い花

青い空を背景にして
あなたをあおりぎみに撮る

視線を移す度に
波打つ胸

声を発するたびに
波紋が広がり

夕暮れが早まる
ピンチョスをつまむ指

石畳を過ぎる靴音
コットンの開かれたえりから

こぼれてくる香り
生白い稜線

独りで居るのが怖かった時代
不安の列が連なって

見られているふたり
背景にアザミ

アザを見るという名前の
暗い花

2011年4月12日火曜日

二人のあいだに

ティールームのテーブルの上に
あなたはアップルパイのような夢をのせて
銀のナイフとフォークで切り裂いた

わたしはそれを
対面から見ていて
自分のフォークでパイを突き刺し
むしゃむしゃと食べた

窓の外では
花びらが散り始めた桜の木が
立っている

あなたは
願いごとのような砂糖を
スプーンにのせてカップに落とし
グルグルかき混ぜた

わたしはそれを
伏し目がちに眺め
二度咳払いをした

テーブルクロスの荒野が
日差しを受けて眩しく輝き
二人のあいだにあった

2011年4月11日月曜日

ただ、走ってゆけ

今までが明るすぎたんだ
わけもなく騒ぎすぎたんだ
強迫観念に襲われて
ムラ社会の怖さとありがたさを背中に感じて
バブルの時代を通り過ぎ
いろんな「ショック」を乗り越えて
明るく騒ぎ立てただけだったんだ
日常をドラマ化し
人生をマニュアル化し
不安を追いやり
あまり考えず
思想家を追い出し
明るくおしゃれに可愛く生きる
そのことが粋でかっこいいとはやし立てて
根暗はださく
オタクはゆるせることにして
クールジャパンと商標を立て
何だってやり過ごしてきたんだ
わかりにくいものは切り捨て
マイナーはマスが保護するんだということにして
長いものにはこっそり巻かれて
キャッチコピーのような早い話が大好きということにして
みんなでやってきたんだ
その明るさが
どんな明るさだったのか
みんな知っていたことに
気づかないことが
約束だった
気づかないように
表現者を骨抜きにして扱い
ヤバイものには触れないようにしたんだ
ヤバイという言葉さえ骨抜きにして
怖いものを覆い隠してしまった
暗い街に灯る灯りのような笑顔が
町を歩いてゆく
未来を無造作に抱えた子どもたちは
親の手を解いて
ただ走りたくて走ってゆく

2011年4月10日日曜日

6次元にて

美味しいアイスコーヒーを
ありがとう
自然な笑顔が素敵です

本をかき分けて
カウンターの席で
アイスコーヒーを飲んだ

みんなが持ち込んだ
本を販売して
地震の被災者に全額を送る

色紙の看板は
谷川俊太郎さんの筆文字
売り上げを入れる募金箱は
谷川さんが持ってきた古い革のバッグ
ひょっとしたら谷川徹三さんのものかもしれないという

谷川夢佳さんは毎週のように
おじいちゃんの家から本を持ってきて
手伝っているそうだ
その様子が目に浮かぶと
自分も頑張らなければと思う

穂村弘さんは昨日きて
一箱置いて行った
その箱は出されたアイスコーヒーの隣に置かれていて
わたしに語りかけた
わたしはその中から本を買い
募金箱のバッグにいれた

混み合ってきたので
店をでることにした

外に出ると
中が恋しくなった
こんなことは
久しぶりだ

ありがとう
6次元

2011年4月9日土曜日

居場所

黄色い花が咲いた
去年と同じ
いつもの道端に

風が
揺すり
花は今にも折れそう

だが
そこは
花の居場所

その花が
咲くための

その花が
香り
命を継ぐための

わたしの
居場所は何処?

あなたは知っている?

2011年4月8日金曜日

わたしのきつね

寝ずの番
あの 
きつねが
どこかに
いってしまった

トンネルの中で
立ち往生した
電車を見に行ったのか

きつねさん
コン と鳴いて
戻ってきてよ
座布団を用意しておくから

耳をすましても
声は聞こえない

耳をブーメランのように
飛ばして探してみようか

コン

いまのはきつね?
いいえ
隣の家の誰かの咳の音

2011年4月7日木曜日

きえさる

わたしはいなくてもいいひと
いないほうがいいひと

ひつようとしてくれているひともいるが
きらっているひともいる

かみさまにいかされているが
また
かみさまにみすてられてもいる

いきているめんどうが
つみかさなる
とうひしたいおもいが
ながれこんできて
こきゅうができなくなる

きべんのきりくちから
ちがながれて
とまらない

みつめることはできるが
うごくことはできない

とおくのみかづきが
だぶってみえる
わたしのめでは
もうくっきりとみられない

おもいでがあふれて
こぼれだす

へやのゆかが
つかいものにならなくなる

いきていきたいひとが
しにたいひとをひはんする

ひはんにあたいする
とおもう

はるのくうきは
あたたかくて
にんげんのあたまをひやせない

まんかいのさくらとともに
ちるのだけは
さけたいものだ

せめて
つきのでていないよるに
できれば
まちのくらがりで
いっしゅんのひかりをはなち
きえさりたいもの

2011年4月6日水曜日

質問するよりも

どこの誰に
質問したらいいのか
さっきから考えている

校庭のテニスコートの金網のもっと向こうにある
鉄の柱が
気になる
一部を黄色く塗装された仮設の柱

しかし 
その鉄の柱は
答えてくれないだろう



いつのまにか風に流されてきた雲が
マントを着た旅人のように思える

 (青空を見るには少し眩しい
    露出を絞りこまなければ)

その旅人に訊くのは違うだろう
旅人は盗賊のように去っていく

質問する相手を思い描いては
否定する
そのことを繰り返している

校庭では
サッカー部が大きく陣取って
サッカーボールを回している

息を切らしている奴をみていたら
自分の呼吸も引っ張られて苦しくなる



通り雨
ぬるい雨

シャツが濡れて肌に張り付いたが
もう乾いてきた

文通相手に手紙を出して質問してみたらどうか
一瞬頭をよぎったが
そんな高度な手紙が書けるはずがない
それに迷惑だろう



いったい誰が
質問を受け止めてくれるだろう
ネットの占い師?

マクドで
iPhoneで
詩の日記を書く
プレミアムアイスコーヒーを飲む

週末の約束が
ケータイに届く

こんな人間でも
会ってくれる人がいる

 (街とは便利なものだ
  人を酔わせることができる)



自分は何を質問したいのだろう

それは
大事なことではないように
思えてくる



放射能物質が風に乗って
飛んでくる
旅人の頭上を追い越し
雨にまぎれて

柱の黄色のところで
ちょっとたじろいだけれど

プレミアムアイスコーヒーのところまでくると
ジャンプして飛び込み
カップの中で溶けた

質問を
確かに受け止めた