2011年1月3日月曜日

あなたは何も持っていないから

あなたは何も持っていないから
持っている人より
たくさんのものを
これから持つことができる

何をもつかは
あなたとあなたの運次第

あなたはいまは何も持っていないから
何も捨てることができない

あなたがこれから何を捨てるのか
わたしは見届けたい

2011年1月2日日曜日

凶の日よさようなら

湖に映るのは死に顔だよ
友だちに声を掛けられた

きょうは
縄跳び
缶蹴り
かくれんぼ
鬼ごっこを
してはいけないよ
死者が混じるから

日陰の影法師
もどってこない木霊
開かずの間の鍵

へその緒にぶら下がって
自殺した子

2011年1月1日土曜日

夜。モノレールの、上で。

モノレールが空をゆく
その下で
君の睫毛がバッサバッサと風を起こした
ただ瞬きをしていただけなのに

路上は太陽の光を吸収して
熱を発している
路上の君は思わずもだえている

無理からぬ事情は世間に溢れ
恩情と薄情が組んず解れつ寝乱れて
涙の塩まみれになっている

そうか
黄色い色ばかり目立つね きょうは
なんだろう なぜだったのだろう
過去と未来に挟まれた路地裏が
表返って
中間的な者たちが居場所を失い
さまよい出る場所をさがしている

冬の暑い日
夏の寒い日に見た金星が
君を目がけて矢を放ってくる

もういいかげん
目を醒ませよ
酒でも浴びて
目を醒ませよ
諸君

2010年12月31日金曜日

幸せ in 段ボール

お茶漬けです
塩を振りましょう
食パンには
ケチャップを塗りましょう
お茶を飲みましょう

水を飲みましょう
飴をなめましょう
雑誌と新聞と 本も読みましょう
着替えをしましょう
夏服と 冬の服も重ね着と洒落てみましょう

神社にお参りに行きましょう
贅沢気分で
お寺にも行ってみましょう

夜は星を見ましょう
いつもより輝きを増した夜空です
お正月は仕事を休んで
一年の計画を立てましょう

あの人もこの人も
余計な
仕事はせずに
ゆっくり自分を取り戻す

仕事している人ご苦労さん
新しい段ボールに
新しい希望を入れて
幸せを確かめましょう

どっこいしょ
いい具合

2010年12月30日木曜日

旅立って行きましょう

この場から旅立って行きましょう
知らない誰かさん
もうこの場にはいられないから

知らない誰かさん
本当は知っている誰かさん

布団をたたんで
後先は考えずに
思いついたものだけ
カバンに詰めて

未練は置き去りに
後悔はカバンに詰めて

手紙やプレゼント
写真のアルバム
パソコン
CDやDVDは置き去りにして

この場から旅立って行きましょう
風の強い朝に
窓のカーテンは開けっ放しにして

2010年12月29日水曜日

すきま風

よろしく
すきま風
よろしく
気になる奴
寒いじゃないか
でも よろしく
すきまを通るの
たいへん

入って 
もと通りになるの
人の形してるの
似てるの

淡雪と一緒だったのに
すきま風だけ
すきまから
入ってくる

淡雪とはお別れ

隙間と知り合って
お別れの心に
すきま風

ストーブつけたら
すきま風
温風になる

人は何になれるだろう

2010年12月28日火曜日

気分屋さんの気分

鎌倉に行きたいと美穂はいう
だが鎌倉への道は分からない
海辺をスイーッと行きたいと美穂はいう
だがスイーッといける筈がない

窓の外は冬の景色
美穂はあたたかい部屋の中に居て居心地が悪そうだ
プリウスにはナビが付いているから
すぐに飛び出して鎌倉に行こうという

なぜ鎌倉なのかは話してくれない
鎌倉に行って何をするというのか
寒空の下 ぶらぶら街を歩き回るのだろうか
立ち食いしたり買い物をしようというのか

まあそれもいいのかも知れないが
夜になったらホテルにでも泊まろうというのだろうか
気分転換のために
それともまた海辺の道をスイーッと戻ってくるつもりなのか

美穂はしかしもう飽きてしまったようにあくび顔だ
10秒で変わってしまう美穂の気持ち
なかなか変わらないわたしの気持ち
天秤にかけたら…

と 思っていたら
美穂が小さくあくびをして
大江戸行こうか と言った
大江戸温泉物語になぜ行かなくてはならないのだろう

2010年12月27日月曜日

古い友だちが訪ねてきそうな日

古い友だちが訪ねてきそうな日
二度と帰らない旅支度をしている
古いカバンに 持っていきたいものを出したり入れたりして

どんよりと曇った空の隙間から
濃い青色の空が覗いている
あの辺りから
虹がかかるだろうか

今日は特別な日らしい
何処かに置き忘れ
置き忘れたことさえ忘れていた日記帳が
突如あっけらかんと出現して
続きを書けと促してくる
続きなんて書ける筈ないのに

あしたになれば
この世界に私の痕跡はないだろう
その逆に
私の胸には深い傷が刻まれているだろう
小さい頃に見た柘榴の裂け目の鮮やかさに似た

そしてその傷の痛みのために
私のカラダは軽くなっていくだろう
友だちはそのことを察してやってくるのだろうか

古い友だち
どこからやってくるのだろう
今頃
近くの駅に着いただろうか

木の机の上で腕組みして
きょうは色々なことを考えている
不思議といつものような堂々巡りはせずに
一方通行で進んでいく思考

私には
色々なことが分からない
花火を見ている気分になってしまう
色々なことは何を意味しているのだろう

問いがいっぱいの頭の中に
もういいよ という声が通り過ぎる
そのせいで
私は深く考えるのをやめる

静かな町に
太陽が巡っていく
風は遠近法の中で通り過ぎ
思いは井戸水のように
汲み上げれば美しく輝き

私が外へと踏み出し歩き始めるとき
私は静止し
私以外のものが
動き始める
私が存在しなかったときと同じように

2010年12月26日日曜日

19分の詩

2318
自分を満足させるために
自分はどうしたら良いのだろう

2319
あたたかい部屋でテレビを観ている
ホームレスに同情できるか
心のホームレスに

2320
もうすぐ電車が出発する
夜行列車は何処を走っていくのだろう
地図で追わず
心の中で追ってみると
あの日の風景が流れていく
目的地はどこだろう

2321
カップラーメンをたべよう
お湯を沸かそう

2322
冬になると首筋がかゆい日がある
変わらずにいてくれるものが
ありがたいと思う時がある

2323
兄さん兄さん
姉さん姉さん

2324
兄さんに死

2325
お湯を注ぐ
食欲がなせる技
お湯を注ぐと
ラーメンができる
できたら食べることが
予想されている

2326
一分に一個書きながら
ラーメンを食べるのは
46年間生きてきて初めての体験だと気づいた

2327
23時37分になったら
アップする
いつものように推敲は後回し
僕の人生みたいに

2328
雪でバスが立ち往生している
立ち往生という懐かしい響きに
安心感を覚える
立ち枯れの木々
たったままの椅子
座ったままの一日

2329
電話代がたまったまま
定められた期日が来ると
人類社会から
切り離される
また1本

2330
カメラを向けると
カメラ用の顔になる人
ならない人
気まぐれな人
あなたの好きな人はどっち?

2331
ほっぺ先が
ピーンといっている

2332
首吊りブランコって知ってる?
誰かがが毎朝漕いでるやつ

2333
ゴミを捨てに行かなければならない
ゴミ捨て場に きょうも
分別して捨てなければならない
種類ごとに出す日が決まっている
そうか
そうすればいいのか

2334
捨て方が問題だ
尖った夢は

2335
きょうは君の香りがバスルームに溢れていた
みたことのない花の香り

2336
もうすぐきょうが終わる
この夜に暮らしているみんなのきょうが

明日が来ないことはないだろう
みんなが信じているから
きっと明日は来るのだろう
絶望的な明日でも
希望が持てる明日でも
とにかくやってくる

絶望と希望が同義語に思える人にも

2010年12月25日土曜日

ノック

ノックする場所が間違っているのではないですか

あなたは毎日
靴のかかとで
ノックしてきました

舗装された道や
家の近くの狭い道
校庭に敷き詰められた砂利の上
電車の床
石段やエスカレーターの鉄の階段

そのほかにもありとあらゆる場所をかかとでノックしてきましたが
間違っていたのではないですか?

そのノックの音に誰も返事をしなかったのですから
あなたはこの先もノックを続けますか?
いつまでも飽きることなく続けるのでしょうか

ノックする場所を変えてみたらいかがですか?

そういうわたしも
長年続けてきて思い通りいかないことがあります

自分ではなかなか冷静に対応策をかんがえられないものです
いつ反応があるかわからないものに対しては

おっと
誰かが来たようです
ノックの音がしました
では また