2010年11月26日金曜日

あやまらない

あやまると自分が消えてしまいそうになるので
彼女はあやまらない
あやまる必要がある時ほど
唇を真一文字に結んで
身をすぼめて待っている
あやまりたい気持ちが消えるまでいつまでも
固唾を飲んで
じっとしている

彼女の不用意な発言が
友だちを傷つけてしまっても
大事な約束を破ってしまっても
彼女はあやまらなかった

いつも
彼女の中に後悔とあやまりたい気持ちが押し寄せたけれど
彼女はあやまらなかった

あやまりたい気持ちが
彼女の中にあるとき
彼女は言い知れぬ自信が訪れていることに
気づくことがある
いつかあやまることができるようになるのを
待ち望んでいる自分に
自信をもつのだ

だから彼女は
あやまりたい気持ちから
逃げない
逃げないでじっとしている
彼女の中をなにかが行き過ぎる

いつか-
それも捕まえてみたいと
彼女は思っているのだ

2010年11月25日木曜日

直行

熟れた実を摘み
お口に入れる
直行

わけずに一回で
すぐ食べる
直行

寄り道せず
浮気もしない
直行

出張しても
遊ばす
観光も接待も無縁
お宿に直行

鈍行列車より
超特急が好み
時を惜しんで
直行

曲がったことが嫌い
直行

名前だって
ナオユキ
直行

詩を読んでも
行間は飛ばし
詩情も省いて
最後まで
直行

このひと
直行ばかりして
早死にしませんように

2010年11月24日水曜日

ブタさんは語る

ピンクの光るブタさんが
笑顔で横たわっているよ
こっちをみてる
サンタの帽子をかぶってるから
もうすぐクリスマスなんだろう

テーブルクロスはケーキとイチゴ柄
楽しげなジャズが流れている

ピンクの光るブタさんと
目が合っても
恥ずかしがらなくてもいいんじゃない?

ホタルみたいに体を光らせて
合図しなくても
分かってるさ
携帯くん

誰かから仲直りの電話でしょ
光の色で分かる
なんてウソだけど

女子部は先に帰ります
用意があるから

いいわ
気分がいいから
いいことにする
渡り廊下のベンチで待ってます

2010年11月23日火曜日

ジュン

コロッケを分けるように
愛情を分けて
惜しみもせずに
ジュン

一生懸命生きることより
幸せを求めて生きる方がいい と
幸せから知らず知らず逃げて
気づかないものだと
そんな歌を聞かせて

誰もが自分の人生の主役をはっている
それを受け入れないと追い出しを食らう と
みんなに教えて
ジュン

2010年11月22日月曜日

運命的な出会い ー婚活ではなくー

丘の斜面で夕焼けに照らされた彼女は
今描いているドローイングの話の途切れめで急にを目を瞑り
キスを求めてきた
彼女の顔をよく見るのは初めてだ

もうキスして戸惑いながらも
抱き合っていたけれど
僕が腕に力を込めて背中を引き寄せると
彼女はますます密着してこたえてきた

美大生の彼女は良家の子女で躾がきびしく
反発する気持ちを抱え
複雑な事情があり今はこの町に住み
三時間かけて学校に通っているという

抱きつくと互いの顔が見えなくなり
初対面の僕たちは安心な気持ちもしたけれど
少しすると淋しくなってきて
また顔を見てみることにした

その顔は
やはり初めて見る顔だった
お見合いのように気取ってほほえんでいる
変な状況だ
だがそれを二人ともが容認しているのはなぜだろう

ここは小さい頃に
鬼ごっこや缶蹴りをした小さな広場のすぐ隣だ
眼下に家々が見え
振り返ればこんもりとした森がある

僕たちはゆっくりと時間をすごすことにした
鼻の頭が冷たくなるまで
手を握り合って遊んでいた

帰り道
僕たちは明日のことを約束する必要はなかった
もう結ばれたも同然だから
会いたければいつでも自然に会えるのだ
そんな強い絆を感じていた

坂道は平地よりむしろ歩きやすかった
振り返りながらゆっくり歩く僕たちには

彼女の愛しい顔をみると
幸せそうな表情だ

一番星!
と彼女が指さした
えっ もう?
と指の先の空に目をやった時
後ろでコンと
鳴く声がした

きつね?

またきてコン
さよならコン

2010年11月21日日曜日

人生くん

あたりまえのこと
ありきたりのこと
当たり障りのないこと

多い順に並べよ

つまらないこと
突き詰めたこと
つらいこと

多い順に並べよ

想像したこと
創造したもの
騒々しいもの

多い順に並べよ

並べたうえで

好きな順に
並べ直し
感想を述べよ
感情を述べよ

ところで
人生は
完走せよ

2010年11月20日土曜日

美しい絵

その壁にいまは絵は掛かっていない
彼女が誇らしげに掛けておいた絵は
僕が踏みつぶしズタズタにしてしまったから

その壁はいまはもうない
別の場所に引っ越して行ったから
未来を夢見て出て行ったから

その彼女はいまはもういない
誰かにさらわれて行ったから
戻って来るのを待っているだけだから

2010年11月19日金曜日

出会えない

見えないけれど
星は出ている

空に出て
こちらを見つめている

くらい空に
目を凝らしている

見られている
見ている

どちらでもいい
ぼくたちは
永遠に
交わらない

視線がぶつかっても
気づかないでいる

吐息がかかっても
風と区別がつかないでいる

2010年11月18日木曜日

11.18

風が吹くたびに木の葉が落ちてくる
表参道を歩きながら
これは裏街道ではないとつぶやき
歩行のリズムに合わせて
思い出を回転させ
シャツフルしていると
前方から救急車がやってきて
目の前の路地をはいっていったので
その行く先に目をやると
高校生たちが制服を着て歩いていて
寒そうに身に巻きつけた布にしがみついていたので
あの布は今風に言うとなんて言うんだろうという考えに
脳みそを占領され
なんてちっぽけな脳みそなんだろうとおもい
その割に大きな頭を
凝り固まっていたい首でどうにか支えながら
きょうは誕生日だからなにかすこしでも自分の為に特別なことをしようと
きれいなショーウインドウを見ながら歩いてみることにすると
昔彼女とわかれてその後会うこともなかった喫茶店がリニューアルして
前の面影もなくなっていて
自分の面影も似たものだと思いながら
道が上り坂になり
風が吹いて落ちてきた木の葉が一枚どういうわけか
手のひらに入ってきてそれを握ってしまい
賄賂ではないだろう
木の葉の手紙か狐のお金か
どちらにしても昔は木の葉を集めて焚き火して
焼き芋を作ったものだと懐かしさがこみ上げ
信号待ちをしていると
信号が変わる前に美しい街の光景を写真に収めたいと思い
この場所この日がデジタルに記録され
これを見返すのは自分だけなのか
それともいまは婚活中のひとが
私と結ばれて一緒に観るのかなどど妄想し
そこにまた救急車が通り過ぎ
救急車は9×9×48なのかなどど考え


もうやめた

2010年11月17日水曜日

それを

あわてずに
いそがずに
しんちょうに
だいたんに
たのしく
いっしょうけんめい
たいみんぐよく
ためらいをすて
しんこきゅうしてから
ひとめをきにせず
しんけんに
なるべくしぜんたいで

それを
すると
いい

かみさまが
みている

きみじしんも
みている