2013年1月28日月曜日

この町で

小さなおばあちゃん
あめ玉くれた
お礼だっ て照れながら
ポケットをまさぐって
あめ玉を
二つ 僕にくれた

ありがとう
おばあちゃん
いつかまた会えるかな
懐かしいこの町で

2013年1月27日日曜日

一枚の花びらを

一枚の花びらを
日差しに透かしてみる
それはいつかあなたと見た
朝焼けの色

一枚の花びらを
指先に置いてみる
それは生まれたばかりのあの子の
こわれそうな指先

一枚の花びらを
唇に当ててみる
それは小さかった私の
あこがれの香り

一枚の花びらを
あの人にさしだしてみる
それは言えなかったことば
伝えたかった言葉

2013年1月26日土曜日

辞めたいのなら辞めていいのだよ

辞めたいのなら辞めていいのだよ
カウンターでトロピカルドリンクを出すこの会社は
たまにあたたかさがなくなる
カウンターは会社の奥にあって昔そこはカフェだった
竹口商店といったのだ

今君と面接をしているこの場所は交番だったんだよ

引き止められると思っていた君が
不意をつかれている間に
社長はもう出て行ってしまった

会社では勝手気ままなプロジェクトがたくさん動いている
誰が何をやっているのか把握している者はいないんじゃないかな

社長が路上で伊豆に行くという社員たちを見送っている時
小さな車に乗った
谷川俊太郎が手で顔を隠しながらやってきて
その様子を見ている
誰かに用があるのだろう

社長が7つある潰れた段ボールの中から
詩人に渡すべきものはないかと
探しているが見つかる気配はない

夜空を流れる雲の下で
人々は玉の上に乗っていることを忘れて
器用な技を競ううとしている

既に落ちてあきらめかけた人たちは
どこかに寄り集まって愚痴を交わしている

いつ死んでも誰かが棺桶を用意してくれるだろう





*この詩は作者がみずから、生前、音声認識アプリによって語り下ろし、記録したものです。

2013年1月25日金曜日

空に沈む日の

黄色い鳥が飛んでこないかな
青い鳥がいつも思っていたら
いつのまにか緑色の鳥になってしまいました



こんな醜い僕は
生きていく価値があるのだろうか
鏡なんか見なくても分かっている
たまに楽しい気持ちに覆われることもあるけれど
心は沼の底にくくられていて
いつも日の目をみない

ひねくれた性格が
自分でも思わぬことをして
言い訳がたたない

ただ
好きなものはある
好きなものの前で私は
かちこちに凍ってしまう

夕闇の向こうから
暗い星が手招きして
すべてをうやむやにせよと
働きかけてくる

2013年1月24日木曜日

ジェラなのね

ジェラなのね
ジェラなのよ
あなたが別の女に抱かれて
ジェラードなのよ
ジェラードなのね
お口でピチュピチュして
ジュース飲むのね
ジュース飲むのよ
目を瞑っているのは
ジュラ紀からのならわしなのよ
ジュラ紀からのならわしなのね
一日は短いね
ジャニーズ観て居間にいるのね
ジャニーズ観て居間にいるのよ
おやすみなさい
ジャーニーなのよ
ジャーニーなのね
BGMはジャニスイアンなのね
いいえ
ジャクソンなのよ
マイケルジャクソンなのよ

2013年1月23日水曜日

福島の花

つかれてねむる
なにか夢みてる
たのしいゆめ
しあわせがあふれる

山が見下ろす
小川のささやき
雪がかくまって
夜道を明るくする

冷たい風が
生ぬるいことを
正して
けがれたものをきれいに
しようとしている

気苦労のないつくしが
しなって
おでこをはじく
だめだよと

すくいはさしのべられたの
疲れたこころに

目覚めると
咲いていた花
まぶたをノックしたのは
あなたですか?

2013年1月22日火曜日

雪の終わり

雪が降っている
絶え間なく降っている
だか真実は
雪は降らされている
黙り込んだ人の心の中で生まれた
硬い雲が弾けて
世界を冷やし痛みをやわらげようとして
降らされているのだ

雪を降らす者の姿を見た者はいないが
寂しい人々によって語られてはいるが

雪は降らされ
積もらされている
その終わりは未だに計り知れない
その始まりは過去のことだが
その終わりの姿を過去に探す者もいるから

2013年1月21日月曜日

匿名希望のその訳は
特命刑事に追われてる

朝飯前の屁の河童
君の瞳は人見知り

2013年1月20日日曜日

僕が詩を書くと

僕が詩を書くと誰かがコメントをつけて
詩を完成させてくれる
そういう詩は決まって僕が一人書いたものよりいい

そのうち
僕が詩を書かなくても詩がが完成するかもしれないね
と思う

僕は真面目に詩を書いて
誰かがコメントをつける
すると詩は完成し
それを読んでまた
僕は詩を書いて
誰かがコメントをつける

果てしのない行為のように感じられるが
いつか僕は詩が書けなくなる
その時どんなコメントが書かれるだろうか
そして誰が詩を書き始めるだろうか

2013年1月19日土曜日

9階のコピー機

9階にお化けがやってくる
9階のコピーは壊れている
1階でコピー機の会社の営業マンとサービスマンが
寛いで喋っている
そこは昼休みの食堂だ
だが上の階の夜の会社にお化けがやってくる
ヘアピンカーブをいくつも越えて登って降りてやってくる
お化けに悪魔が宿る
胸のドキドキが止まらない
体中の関節が悲鳴をあげている
体の中に筒が入っている
タケノコの皮のように体がむける
残業中の社長は暗がりで怯えて
発狂寸前だ
救いがどこにあるのか探す気にもならない
過ぎ去るのを祈るのみ