2012年10月25日木曜日

わたしをいじめてたきみへ

なぜ きみは となりの席に
すわって いたの?
なぜ いまになって 手紙を書いたの?
それも 出さない 届かない 手紙を なぜ
書いたの?

          *

きみが 私に お金をせびって
公園の柵をこえて もち去ったとき
私は きみと きみの友だちの
後ろ姿を みていたよ

きみは もう いじめないと約束したのに
つぎの日から まえにも増して
私を いじめたね
おぼえているでしょ

よく考えると
ああなることは うすうす分かっていたんだ
でも 少しは 希望はあった

きみは ずっと私をいじめたけど
不幸になってほしいとは考えなかった
あのときは 憎かったけど
いま考えると もっと 憎いやつがたくさんいたんだ
きみは ずっと 生ぬるい人間だったんだと
私は思う

私は
子どもを3人産んで
結婚は 2回したけど
まあまあおちついて 生活している
白髪の多い ババアになったけど
茶パツにして おしゃれもすこしはしている
少女だったころより うす化粧だけどね

         *

暗い少女時代は何だったのかと
いまだに回想することはある
たしかに 今の私の中に あのときの 自分もいる
でも 暗かった過去が
幸せの涙で洗い流され
新しい自分になったと感じたこともあったんだ
本当に愛せる人と出会ったおかげて

私はずっと愛を求めて 
愛を与えて生きていくんだと思う
きみにこんなことを言うのは変だけど
きみの中には愛情はあったんじゃないかな
もう誰にもたしかめようもないことだけど
たしかめても しかたない ことだけど

私も きみに
この 出さない 手紙で
私の こころの わだかまりを
流しさってしまおうと思う

なぜ きみが 出さない手紙を書いたのか
出してくれても よかったんじゃないか

うん
もうそんなギモンも終わりにして
さっさと 寝ることにする
明日 朝 早いから


                       
                               BYE!

2012年10月24日水曜日

いるもの と いらないもの

いらないものを身の回りに集めて
自分を守っているから
彼女の部屋はいつでも散らかり放題

たまにゴミ捨てや整理整頓をして
掃除機をかけるが
外からいろいろ持ち帰ってくるので
すぐにもとの状態を取り戻す

いらないみのといるものの区別が
たまにつかなくなるから
彼女はいつもいらついている

たまに根本的に考えなおして
いらないものを減らし
すっきりした部屋にしようと思うが
なんだか違う気がしてしまう

いらないものと同化して
身を潜めていると
いるものが隣からささやきかけてくる

2012年10月23日火曜日

「ああ、恥の多いぼくの人生」

「ああ、恥の多いぼくの人生」
という詞があったとしよう
十五歳の子と四十五歳のオヤジが言うのでは
随分違う

どう違うのか
諸君にぜひ考えてみてもらいたい

2012年10月22日月曜日

十月の とある日の わたくし

立派な表札の掛かった門があって
その前を貧相なわたくしが通り過ぎる

並木のあいだの道は人と犬が通い
木の上の枝はカラスが使っている

昼間は太陽と青空が使っていた
この辺りの世間は
夜になると月と星が控えめに控えて
見下ろしている

喫茶店は二人の姉妹とその友人がやっている
客はこの姉妹たちと無関係の人がほとんどだ

あきらめてやっていくことと
あきらめずにやっていくことは
ほぼ同じこと

わけもなく駅が混雑する日
そんな日が度々あっても
駅員にはなにも変化がない

オレンジスカッシュを頼んだのは
その色が見たかったからだけではない
三日月型のオレンジがグラスの淵にへばりついて
わたくしを励ましてくれるだろうから

ありがとうオレンジスカッシュ
わたくしは表札をいつかかけたいよ
どんな表札がいいかは
わたくしが決めよう

2012年10月21日日曜日

髪の毛を濡らして

髪の毛を濡らして
やってくる彼女は
朝 彼の家でシャワー
彼にはそれが自慢さ

シャンプーの香りを振りまいて
きのうと同じ服を着て
走ってくる彼女
彼にはそれが自慢さ

しかし
自慢の彼女は
彼とは別の誰かの腕の中
お腹の上
それは彼には
自慢できない
ご自慢の彼女の
悪い癖
いつまで続くの
自慢できない
悪い癖

2012年10月20日土曜日

・・・・・・伝えたい

「ありがとう」ばかりではなく
「さよなら」と伝えてたい

霜の降る月の夜に
狐がすすきの間から
顔を出し
きょとんとしている
その時

「さよなら」ばかりではなく
「もう会えません」と伝えたい

円型の大地に
波打ちながら風が渡っていく
吹き違い
混じりあいつつ
地にはりついて

「もうあえません」ばかりではなく
「幸せを祈っています」と伝えたい

やがて雪が振り
この辺りは一面真っ白になる
その上を
足跡が縫っていく

「幸せを祈っています」ばかりではなく
「・・・・・・・・」と伝えたい

黒板に書いた文字を消したら
教室を出て行きましょう
また明日もやってきます
その時に気持ちがいいから

2012年10月19日金曜日

ひとりでに

ひとりでに
影が窓から入ってきて
パンを食べている

やりきれぬ
思いを食べているのか
しくしくと泣いている

ひとりでに
ドアが開いて
今度は主人が帰ってきた

見たところ
不漁だったらしく
ゴキゲンが斜め

やりきれぬ
悩み事は持ち越さない主義なので
ストーブに薪をくべて
焼いてしまう

こんがりと
焼けたパンを
木の皿にのせて
テーブルの上に置く

見たところ
焦げ目を隠して
積み重ねて
置いてある

ひとりでに
涙が出てきて
頬に線ができる

そういえば
去年も
おととしも
こんなことがあった

こんがりと
焼けたパンは
影が全部食べてしまい
もう残っていない

ひとりでに
眠ってしまった主人は
いつまた起きるのか
わからない

見たところ
日が暮れて
薄暗い窓の外に
白い月が出ている

やりきれぬ
やり場のない思いは
そういえば
見たところ
ひとりでに
どこかにいってしまって
帰ってこない

2012年10月18日木曜日

廃人のように暮らしているよ
僕は元気です

それも 関係ありません

秋の夜が 更けて
囁きかけて きます
遠くから 近くにやってきます
気が 遠くなるほどの
距離を 走って

あの夏に 叶えられなかった
願いごとの 理由が
今になって
はっきりと 分かって きます

日照り続きの 道に
雨が しみ込み

さまざまな 疑問が
答えを得られないまま
報われて いきます

割り箸の うえに
カマキリが 卵を産みます

公園の 向こうで
友達の 小さな 家が
火事になって 燃えています

季節は 寒くても 暑くても
関係 ありません
すぐに 過ぎていって しまうから

ここに 残っている ものは
過ぎゆく ことが できなくて
腐って 滅びることも できなくて
ただ 立ったり 座ったり 横になったりを
繰り返しています

新月から 2日目の 月が
雲の影から
覗こうとしていますが
それも 関係ありません

犬が 吠えていますが
あの犬は
きのう 友達の家に
おしっこを 引っ掛けていた 犬です

2012年10月17日水曜日

ちゃんと苦労する詩

工藤ちゃんが
苦労してる
工藤ナオちゃんが
尚 ちゃんと 苦労してる
工藤ナオちゃんの姉が
尚 ちゃんと 苦労してる やーねー
工藤ナオちゃんの姉が
屋根が漏って ちゃんと 苦労してる
やーねー もってのほか だね!
屋根が  たわんで  漏って 苦労してる
工藤ナオちゃんの姉が
屋根が たわんで 漏って 尚 ちゃんと苦労している 
やーねー やな 屋根やね  あかんで!
工藤ナオちゃんの 姉さん
尚 ちゃんと 苦労する 姉やね  もってのほか だね! 
屋根が 漏って やーねー やーねー
もってのほか だね! 
工藤ナオ ちゃん
直さんと ちゃんと 屋根 直さんと  あかんで!