2011年6月9日木曜日

いま

みにくいアヒルの子は
白鳥になれて よかったね

私はみにくいまま
おとなになってしまった

とりえのない人間
飛ぶこともできず
仲間からも疎まれ
一人で部屋にいる

空の彼方に群れて消えていく美しい鳥を見上げては
きょうも大きく溜息を吐く
お寺の鐘が人生を弔おうとしている

自分の下にあるものだけが
自分の友だち

地面の草とか
影とか
零した涙
瓶の蓋
タバコの包装紙

でも
こんな私にだって
愛をくれた人がいた

優しいことばをかけ
握手してくれた人がいた

愛の代償を返す力はないかもしれないが
どうにかしてなにかを返そうと思う

働きの悪い脳みそを励まし
チャンスをうかがいながら
計画を考える


いま
生きている

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2010年8月31日から2011年6月9までの集計です。読んでくださった方、ありがとうございます。

2011年6月8日水曜日

すこし

少し泣いた

少し悲しくて
少し泣いた


少し笑った

少しおかしくて
少し笑った


少し怒った

少しいらいらして
少し怒った


少し蹴っ飛ばした

少し好きになったので
あなたを蹴っ飛ばした

2011年6月7日火曜日

よろめく

私はまたまたよろめくよ
あなたが私を狙ったから

優しい言葉だけじゃなくって
鋭い目で見つめてきたから

手を握ると思ったタイミングで
別の人の話を始めたから

まだまだいきなり倒れこむよ
あなたを目がけて

笑顔同士のにらめっこ
自然な感じで出来たから

もう考えるのはよそうと思っていたことを
あなたがしゃべり始めたから

空では雲が流れていた
眩しそうにあなたは見上げ
私はあなたの形の良い鼻と
眉毛のラインとをじっくりと見ていた

スキなところを憶えておくよ
別れたあとで理由がつかめるように

嫌いになれるように

2011年6月6日月曜日

騙していたんだ

あなたは私を騙していたんだね
でも
私もあなたを騙してたんだ

一緒にいたくて
騙されてないふりを
していたんだ

2011年6月5日日曜日

秘密じゃない

あなたの秘密を
教えてくれるんだね

それ
もう秘密じゃなくなったね

私を縛る鎖になったのかな

2011年6月4日土曜日

あなたは私を見つめて

どんな目にあっても
体は汚れない
洗えばきれいになっていく

いつか映画で見た
美しい水車小屋の
朽ちかかった板と柱の
ホコリを払い
あなたの心は住んでいる

風が木々を揺する音
水が岸にぶつかり渦巻く音
鳥がさえずりに来る
永遠の会話を
遠くの耳で聴いている

すべてを
緑色のものが覆ってしまいそう
雲は時々やってきて
それを心配そうに見守る

嵐の日も
月が眩しすぎる夜も
季節替わりが訪れる時も
緑は着々と
この星のこの地を覆おうとしていた

あなたは
いま
動こうとしない

そんなことが何回あっただろう

あなたは
音叉をトンとたたいて
過去と
これからくるだろう未来の
チューニングをしようと試みる
その
試み自体が
私には
美しい絵のように見えている

誰も言葉を発するものが
いないかのようだ

わたしが
何かの拍子で振り向いた時も
あなたはただ私を見つめて
立っていただけだった

2011年6月3日金曜日

白い肌

トンチンカンなことばかり
当の本人大真面目
いつもあたふたしてるけど
ある蓋どれも開けたまま
恋もするけど嫌われて
いることさえも気がつかず

トボトボ帰る狭い道
シャワーの匂い色っぽい
傘のある日は雨降らず
貸したものみな返らない
陰口悪口おだてられ
いい気になって落ち込む日

お金を払い店を出て
割り勘のはず切り出せず
綿のある場所スカスカで
上でベッドの軋む音
煙がいつも寄ってくる
閉めても閉めても開けられて

ある蓋どれも閉まらない
温め足らず食べられず
賞味期限は五年前
仏の顔も霞む目で
見るもの君の白い肌

2011年6月2日木曜日

私は夢見て…

私は古い家

建物なので
あなたのところへゆくことはかなわい
ただ思いをこめて念じるだけだ
私の隣には古い寺があり
今時はツツジの香りが立ち込めている
掃き清められた庭は
どこから見ても美しい
ツツジの香りの良さを
あなたに届けたい
そう願って私は念じる
あなたがやってくるように
ところで
私には
一人の男が住んでいる
私を手入れし磨き上げているうちに
若い一人の娘が
やってくるようになり
すぐに男と結ばれた
娘は海からやって来たのだ
娘は私に触れてうっとりとさまよい
冷たい木の表面で熱を冷ましながら
眠った
私の木肌はツヤを増し月光と愛を交わした
寒い朝には
男と娘は
寝床の中でいつまでも夢見ていた
私も夢を見た

私も
私を包む者たちも
静かに聞き耳を立てていた
男と娘は
無口になって
思いを巡らせた
その行く手に
私は佇み手招きをした
男と娘は
私の中にいた
娘が海へ
帰っているとき以外は
私の中にいた

2011年6月1日水曜日

躊躇いびとの終幕

そろそろ色んなことが終わる
梅雨雲と一緒に彼方に消えてゆく

あとには 見る限り
何も残っていないようだ

木に咲いた小さな花が
枝を揺すっているだけだ

着せ替え人形のような
あなたの姿は
しばらく漂っていたけれど
いつの間にか手頃な人を見つけて
手を取って歩いて行ってしまった

ここにいるはずの私は
語るのをやめると
ボロボロと崩れ
見る影もない

語り手がいなくなると
物語はなかったことのように
気配さえ見当たらず
オロオロと躊躇いびとが
茶を濁すだけ