海の向こうから
潮風の香りの手紙がとどく
はりがねの形の平仮名が
洒落た置き物のような漢字をつないで
ほどけぬように
カタカナでとめてある
あなたの見慣れたイニシャルは
渡り鳥が羽を休める場所
私もなんどか
あなたにとまって
羽を休めた
そんなこともあった
地球の違う場所では
朝と昼と夕方と夜とが
それぞれの場所を覆っていて
みな
違う言葉で挨拶をしたりするが
黙っている場合もある
そういう私も
いま黙って
手紙が来るのを待っている
手紙というたとえをまとった
なつかしい
春の風が
2013年12月30日月曜日
2013年12月29日日曜日
てにしたしゅんかんに
てにしたしゅんかんに
あわくきえてしまうものがある
てにしなければよかったと
くいてももうおそい
ずっとてにしたかったものなのに
ずっとおいもとめてきたものなのに
どうしてそれは
きえてしまうのか
てにしては
いけないものだったのか
ほんとうはわたしは
きづいている
わたしがそれを
ほしいとねがうちからが
わたしには
いちばんだいじなものだったと
それがこころにあったとき
わたしのこころは
つよかった
みたされることをまちこがれる
つよいおもいで
わたしはいつもみたされていた
わたしとともにいた
だいじなじかん
あわくきえてしまうものがある
てにしなければよかったと
くいてももうおそい
ずっとおいもとめてきたものなのに
きえてしまうのか
てにしては
いけないものだったのか
きづいている
わたしがそれを
ほしいとねがうちからが
わたしには
いちばんだいじなものだったと
わたしのこころは
つよかった
つよいおもいで
わたしはいつもみたされていた
わたしとともにいた
だいじなじかん
2013年12月28日土曜日
初めて知るだろう
あなたの前ではずんでいた白い鞠
私がポケットに隠し持っていた光るパイプ
あなたの髪が匂い立つ真昼のスコール
私の胸で渦巻く怪鳥の羽ばたき
あなたのものと
私のものを
一緒くたにして
たき付けに
くべてしまえ
その穴に
その竃の火に
やがて湯がたぎるだろう
湯に その辺の生命をそのまま投げ入れて
私たちは夜の間中
魔除けのダンス
やがて明け方の太陽が
夕焼け空を背景にしていると
初めて知るだろう
初めて知っただろう
私がポケットに隠し持っていた光るパイプ
私の胸で渦巻く怪鳥の羽ばたき
私のものを
一緒くたにして
たき付けに
くべてしまえ
その穴に
その竃の火に
湯に その辺の生命をそのまま投げ入れて
私たちは夜の間中
魔除けのダンス
夕焼け空を背景にしていると
初めて知るだろう
初めて知っただろう
2013年12月27日金曜日
日々の扉
もう気づくことはない
そんなふうに 思うことはなくても
毎日が新しいことの連続だった日々は
いつのまにか別世界を描いた絵のようだ
もう誤ることはない
そんなふうに 考えはしなくても
いつも間違った道に迷い込んでいたあの頃は
かさぶたとなってすでに消えた傷口のようだ
もう「いいひと」にはならない
そんなふうに 決意しなくても
すぐに人を信じてしまう性格は
皮膚に刻まれた曲がった笑い皺のようだ
もう私は私から抜け出したい
そんなふうに 望みはしなくても
そう願った日々の重い扉は
とっくに開け放たれていて出入りは自由だ
そんなふうに 思うことはなくても
毎日が新しいことの連続だった日々は
いつのまにか別世界を描いた絵のようだ
そんなふうに 考えはしなくても
いつも間違った道に迷い込んでいたあの頃は
かさぶたとなってすでに消えた傷口のようだ
そんなふうに 決意しなくても
すぐに人を信じてしまう性格は
皮膚に刻まれた曲がった笑い皺のようだ
そんなふうに 望みはしなくても
そう願った日々の重い扉は
とっくに開け放たれていて出入りは自由だ
2013年12月26日木曜日
なみは
なみはさらう
りくちのものを
そのてにしたものを
うむをいわさず
ひきつれて
なみはつつむ
うつくしいもの
そうでないもの
おんどやいろさえ
同化して
なみは話す
太古と未知のはなし
いみのない繰りごと
その声がこきゅうと
まざりあったあとも
なみはしる
せつなのかがやき
むごんのよげん
なみだがかくまった
ちいさなこえも
なみはあそぶ
ほしとゆきをうずまいて
あさとよるを
ひとつにして
ふところに深海をかかえて
なみはありつづける
わたしがせかいから
しょうめつしても
りくちのものを
そのてにしたものを
うむをいわさず
ひきつれて
なみはつつむ
うつくしいもの
そうでないもの
おんどやいろさえ
同化して
なみは話す
太古と未知のはなし
いみのない繰りごと
その声がこきゅうと
まざりあったあとも
なみはしる
せつなのかがやき
むごんのよげん
なみだがかくまった
ちいさなこえも
なみはあそぶ
ほしとゆきをうずまいて
あさとよるを
ひとつにして
ふところに深海をかかえて
なみはありつづける
わたしがせかいから
しょうめつしても
2013年12月25日水曜日
見知らぬだれかが
心がつかれたら
重荷をいったん脇に置いて
ひと息つきましょう
ぎすぎすした衣を脱いで
日向ぼっこでも
してみましょう
好きな人と過ごした
きらめく日々を
思い出してみましょう
無垢な魂の
わがまま勝手な力を
体の芯に感じてみましょう
そして
あなたのように
心がつかれたひとのことを
見知らぬだれかが
どこかで
心配して祈りを捧げているのだと
信じてみましょう
それは全く
本当のことなのだから
重荷をいったん脇に置いて
ひと息つきましょう
ぎすぎすした衣を脱いで
日向ぼっこでも
してみましょう
好きな人と過ごした
きらめく日々を
思い出してみましょう
無垢な魂の
わがまま勝手な力を
体の芯に感じてみましょう
そして
あなたのように
心がつかれたひとのことを
見知らぬだれかが
どこかで
心配して祈りを捧げているのだと
信じてみましょう
それは全く
本当のことなのだから
2013年12月24日火曜日
気取らない幸せ
幸せをそっちのけにしておいて
それに気づかない人が多い
そしてそれに気づいたときには
もうその幸せはそこにない
メーテルリンクさんが教えてくれたのは
まだ学校に行く前のこと
ルビー色の気取ったカクテルが いま
気取らない幸せを教えてくれた
もう学校も出て街をふらついている私に
君の居場所はそこではない と
それに気づかない人が多い
そしてそれに気づいたときには
もうその幸せはそこにない
メーテルリンクさんが教えてくれたのは
まだ学校に行く前のこと
ルビー色の気取ったカクテルが いま
気取らない幸せを教えてくれた
もう学校も出て街をふらついている私に
君の居場所はそこではない と
2013年12月23日月曜日
ケーキの入った箱を
ケーキの入った箱を
落としてしまいました
やっと手に入れた
大事なケーキ
ケーキは箱の中で
大けがしてしまったでしょう
私の顔からは
笑みがきえました
そのかわりに
涙がとまりません
あなたを守れなくて
ごめんね
強くなりたいと
願った夜
落としてしまいました
やっと手に入れた
大事なケーキ
大けがしてしまったでしょう
笑みがきえました
そのかわりに
涙がとまりません
ごめんね
願った夜
2013年12月22日日曜日
私の中に
泥水の中に落ちた
大事なもの
私の手を引いてくれたから
私
我に返った
太陽の光を跳ね返して
眩しかった
私の
大事なもの
泥水の中で
輝いていた
泥水の中から
私は
拾い上げた
泥でよごれてしまったけれど
それは
もっと大事なことを
話してくれた
私の中に
残った
その 輝き
大事なもの
私の手を引いてくれたから
私
我に返った
眩しかった
大事なもの
泥水の中で
輝いていた
私は
拾い上げた
泥でよごれてしまったけれど
それは
もっと大事なことを
話してくれた
私の中に
残った
その 輝き
2013年12月21日土曜日
記憶
あなたの顔は
なつかしい村
私はそこで
暮らしてた
泉の水で喉を潤し
水鏡でいい顔を作った
防風林をかき分け
砂浜に転がり遊んだ
小高い山に登り
しっとりした驟雨を浴びた
洞窟を覗き込み
コウモリのねぐらを見つけた
あなたの声は
到来(アリバダ)の知らせ
波打ち際に
一万の亀たちが上陸した
月は姿を隠し
影は命を満たした
私はあなたを縛り
あなたは一切の夜の記憶をほどいた
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